2BC株式会社

2BC株式会社は、BtoBマーケティングの専業エージェンシーである。2014年8月に立ち上がったばかりの新しい会社だが、代表取締役を務める尾花淳氏は、この領域で長いキャリアを持つ人物だ。

半導体商社で典型的なアカウント営業を経験した後、マーケティングと営業のアウトソーシングを専門に手がける会社に移り、知見とノウハウを蓄積して独立。その後改めて、マーケティングオートメーションシステムにフォーカスしたサービスを展開するために、仲間と共に2BCを立ち上げた。

創業メンバーはいずれも、尾花氏がマーケティングのプロフェッショナルとして仕事をし、情報を発信する中で出会い、意気投合してきた人物ばかり。皆、マーケティングの豊富な経験を持つ。

なぜBtoBに注目したのか。尾花氏は購買行動の変化を理由に挙げる。「昔は営業が情報を持ってきましたが、今は自分でインターネットで調べるのが普通です。となるとプッシュする営業よりも、見込み客に来てもらう手法が必要になります」。訴求ポイントも発信すべき情報も、クライアントの製品やサービスによって異なる。「誰もが知っているサービスなら、他社との違いを訴えればいい、世の中に出て間もない製品やサービスなら、なぜそれが必要かという理解から購買のプロセスが始まります」と尾花氏。

そのような特性を見極めた上で、インバンドとアウトバウンド、Web、セミナーや展示会など多様な手段を組み合わせてデザインする必要がある。複雑化し、昔ながらの営業手法が通用しなくなった今、これらをトータルでデザインし、クライアントと共に実践する会社が、2BCだ。

マーケティング会社は世の中にいくらでもありそうだが、まるっきりバッティングするような競合はあまりないという。「テレマーケティング会社やEメールマーケティング会社、Webならリスティング広告会社にSEO対策会社、あるいはWeb制作会社など、特定部位のマーケティングを支援する会社はたくさんありますが、全コミュニケーションチャネルを統合し、トータルで管理しながら、売上を増やすための施策を考えて実行する会社はあまりないと思います。広告代理店はそれをやっていますが、彼らはBtoCが中心です」と、尾花氏は言う。

では具体的に、2BCは何をやっているのか。キーワードは2つある。マーケティングオートメーションと定着支援だ。

マーケティングオートメーションシステムは、見込み客の獲得から商談機会醸成、その後のフォローまでのプロセスを一元的に管理し実行を支援するツールだ。Webサイト、Web広告、Eメール、ソーシャルメディア、展示会などコミュニケーション手段が多様化する中で、従来はバラバラに管理していた情報を統合し、活用する。米国を中心に市場が急速に拡大しており、日本でもいよいよ本格的に普及していくステージにある。

尾花氏はこの領域の先駆者として、各種のITメディアを通じて積極的に情報を発信してきた。2BCは『Salesforse』、『Oracle』、『HubSpot』、『Marketo』といった海外のソフトウェアに加え、日本のシャノン『Marketing Platform』、シナジーマーケティング『Synergy!LEAD』、カイロスマーケティング『Kairos3』など、多くのマーケティングオートメーションシステムに精通し、クライアントと共に最適な活用方法を見つけ出す。「単にソフトを売る会社はありますが、それをどう使うかを指南して、さらに一緒にやるという会社は当社の他にはありません」と尾花氏は言う。

実践＝手取り足取り指南することが2BCのもう1つのコンセプト、定着支援でもある。同社のWebサイトにはこんな例えが載っている。

導入プランニング期＝旅支度
実行体験期＝助手席乗車
支援下自走期＝運転手交代
定期レビュー期＝定期ピットイン
安全自走期＝安定走行と継続的改善

つまりこうだ。最初は行先を決め地図を作成するところから始まり、動き始めるとまずは2BCが運転して手本を見せ、クライアントは助手席に。次は運転を交代し、2BCは自動車教習所の教官のように横から適宜サポートする。定期レビュー期以降は、基本はクライアントが一人で運転しつつ、ビットでの整備や燃料補給のように、2BCが定期的にフォローする。そして最終的にはクライアントが一人立ちし、2BCと共に確立した手法を実行していくこととなる。

「我々がやっているのは、細かいメソッドを教えるのではなく、継続的にPDCAが回り自律的に改善していく状態を作り上げることです。そういう観点では、コンサルティングファームが競合となるかもしれませんが、彼らは手取り足取りの指南はしません。一緒に手足を動かすということが当社の最大の特長でしょう」（尾花氏）。

クライアント企業は30人規模から数千人規模まで様々だ。2BC自体がスタートしたばかりなので、結果を出すのはこれからだが、手応えも自信も十分にあるという。ちなみにクライアントの開拓は、問い合わせがベースだ。それこそ「見つけてもらうこと（＝インバウンド）」は同社のサービスそのものなので、お手のものだろう。

「BtoB専業のエージェンシー」とは新しいサービスだが、ニーズは今後一層高まってくると尾花氏は確信する。マーケティングオートメーションシステムの市場も黎明期であり、これから伸びていくだろう。そもそも、新規クライアントを開拓するのに、端から電話をかけていくような手法はあまりに生産性が低い。20世紀から連綿と続いているような営業のやり方を変えないと、伸びていかないのは自明だ。

「海外に打って出ようというときに、いきなり海外でリストを作ってテレアポしますか？」と、尾花氏は苦笑を交える。そもそも最初から日本も海外もなくビジネスを進める企業も多い。時代に合ったマーケティング手法と指南を求めるクライアントは、今後ますます増えるに違いない。

誰もやっていないサービスゆえに、2BC社内は喧々諤々と議論をしながら進める毎日だ。そんな自ら切り拓く手応えこそがやりがいであり、そこにワクワクできる人が、同社には向いているだろう。「いつもみんなでワクワクしながら、もっと良くするにはどうしたらいいかと、全員が主体性をもって前向きに業務に取り組む会社」。これは尾花氏が描く理想の組織像だ。実際、社内はそんな活気にあふれている。

クライアントの営業成績が上がることが、自分たちの成果でもある。このように結果が目に見えることも、同社の仕事の大きなやりがいとなるだろう。同社では「コンサルタント」という肩書は使わない。評論するだけのようなイメージがあるからだ。みんなの名刺には、「クライアントサクセスマネージャー」とある。クライアントの成功が自分たちの成功そのものであり、成功体験を積み重ねることで同社の知見が増え、サービスの品質もますます向上する。そんな好循環をこれから確立していく。

会社は正真正銘のスタートアップ期なので、もちろん、充実した福利厚生やら教育制度やらがあるわけではない。「ほしかったら、ぜひ自分で作ってください」と尾花氏。決まった枠の中で自分の役割をこなすような会社ではない。サービスもまだ形が決まっておらず、会社もまだ色はない。「いろんな意見があった方がより豊かな意見交換・サービスにつながるため、年齢、性別、国籍問わず人のバラエティーに富んだ会社にしていきたい」（尾花氏）。みんなでサービスを作り、良き会社を作る。一緒に頭も手足も動かしながらやっていける人を求めている。