株式会社河内屋

1947年に東京の八王子で創業した河内屋は、食料品・雑貨等の販売業を経て、飲食店専門に酒類・飲料を販売する事業を営むようになった。現在では、本社を日本橋に構え、社員はグループ計で約400名と、業界内で売上規模第2位の企業へと成長している。業務用の酒類・飲料の卸に特化する同社の顧客構成は、首都圏全域で個人経営の飲食店が8割、チェーン店が2割。常に時代のニーズを的確に読み取り、変化と進化を繰り返してきたことが、同社の成長の背景にある。その代表ともいえるのが、90年代に確立した独自の物流網である。

代表取締役の西仲徳次氏は、これまでを振り返り、「環境の変化に対応できたからこそ生き残れた」と言う。商業環境の様々な変化が一気に訪れた90年代。これからは、「スピード」と「質」が問われると考えた同社はまず、物流網の整備に着手した。同社の顧客である飲食店も、「お客さまが欲しいものを欲しい時に提供する」ことに重点を置くようになり、同社の物流網が大きな支持を集めるようになった。

その後も、経営理念に掲げる「お客様に感謝し大事にする」という言葉のとおり、顧客第一主義を徹底し、オリジナル商品を含めて、豊富なアイテムを常に揃え、24時間の受注体制を整え、365日配送を可能にした。また、個人商店の経営をサポートするオリジナルメニューの開発や、店舗内装、新装開店の準備からアフターフォローなども行なっている。

このように、同社の沿革を見てみると、常に時代のニーズをキャッチして変化を遂げていることが分かる。「進化する企業でありたい」という仲西氏の言葉どおり、社員が一体となって、顧客の声に耳を傾けてきたこと、そして、激しい変化に適応する能力を磨いてきたこと、これが同社の大きな力だといえる。

同社の強みは、顧客第一主義から生まれた徹底した質の高いサービスにある。

その代表となる前述の物流サービスでは、首都圏を網羅した独自の物流網を支えるグループ企業を持つ。各地におかれた商品センターは、酒類業界最大規模であり、業界最新の自動ピッキングシステムを採用し、誤送・品切れを大幅に減少させることに成功。近年では、他社の配送の請負、共同配送事業なども展開を始めている。

もう一つが、12,000アイテムという豊富な品ぞろえだ。大手メーカーをはじめ、国産・輸入を問わず広く業務用に厳選された商品を幅広く揃え、様々な顧客のニーズに応えている。その他、オリジナル商品としても、梅酒や焼酎などを開発し、同社でしか手に入らない価値を提供している。

さらに特筆すべきは、顧客の販促活動に積極的に参加している点だ。同社には、「お客様とともに伸びる」という精神があり、顧客の開店準備から、アフターフォローまで徹底したサポートを提供している。店舗内装、メニュー開発、POP提供など、きめ細やかに対応。店舗の売上アップに不可欠な「旬の情報」や「アイデア」を提供できるプロとして、社員もまた、やりがいのある仕事をしていると語っている。

「従業員をだいじにする会社」と言えば、そんなセリフは珍しくないかもしれない。しかし、「従業員を辞めさせたことのない会社」と言えば、どうだろう。効率経営、成果主義の美名の下に、リストラをしない会社は珍しいと言われるような世の中で、従業員の長所をとことんまで伸ばし、思う存分個性を発揮できる会社だと、人事リクルート担当の山浦氏は言う。

そんな同社自慢の教育システムでは、定期的に行われる新入社員研修、中堅社員研修、幹部社員研修はもちろんのこと、商品知識の研修では、毎年大勢の従業員がフランス、イタリア、アメリカ、韓国などへ出かけていく。日本だけではなく、世界を視野に入れ、幅広い知識で、顧客によりよい提案をできるように、教育研修を惜しむことなく提供しているのだ。

また、経営理念のひとつでもある「仲間を思いやり協力しあう」という精神のもと、アットホームで定着率の高い風土が形成されてきたことが、笑顔の溢れるオフィスからも感じられる。「顔の見える相手にはメール禁止！顔と顔を突き合せて直接会話をしよう！」というルールが社員の中から自然に出来上がったというエピソードも同社らしい。仕事柄、お酒が好きな社員が多く、上司・先輩・後輩さまざまなメンバーでの、お酒を交えたコミュニケーションも活発だという。

きめ細やかな教育制度のもと、成長を遂げた若い社員達が、責任ある立場でどんどん活躍する同社。ここには、「お酒のある風景に彩りを提供していきたい」と思っている人にとって、大きな飛躍の舞台が用意されている。