株式会社VERVE

株式会社VERVEは、『モバイル』をキーワードに事業展開を行なうベンチャー企業だ。渋谷にある同社のオフィスを訪れると、その洗練されたデザインと設備に驚く。同社は、2007年12月設立、社員数50名のコンパクトな新しい組織でありながら、企画力・コンサルティング力・デザイン力・開発力・運用力と、モバイルサイトの展開に欠かせない全プロセスを高いレベルで遂行するメンバーがそろっており、受託開発・運用において確実な収益・実績をあげている。その利益を基盤として、自社オリジナルのコンテンツメディア事業に進出し始めており、今後が大いに期待される企業なのである。

基幹事業であるモバイルサイトの受託開発では、あらゆる企業の大規模サイトを手がけており、サーバ数も数百台に及ぶ。「基本的に、案件はすべて運用まで一貫して受託し、成果報酬（サイトの売上シェア）を得ています」と語る代表の久保田氏の言葉に、同社の強さがにじみ出ている。つまり、クライアントの最大の目的である「サイトの売上」を確実に上げさせるための仕事を、同社は責任を持って行なうということである。そのための企画力、コンサルティング力は非常に高く、たとえばクライアントの企画が「当たらない」と思えばそれが「行ける」と確信できるまで改善提案を行なう。そして、ひとたびサービスインしたら、半永久的に「完了」することのないチューニングを続け、パフォーマンスを上げていく。そのために開発段階から、拡張性や汎用性を見越した設計を行なう。

「クライアントから言われたとおりの開発をしているだけでは、何も生み出せないですから」と、久保田氏は続ける。クライアントの期待を超える仕事をして初めて、同社は収益と共に実績とノウハウを、クライアントは想定以上の高い収益を得られる。このようなWin-win関係こそが、同社が長く繁栄していくためのポイントとなることは間違いないだろう。

2009年の12月から開始した自社コンテンツメディア事業については、シミュレーションゲーム、スポーツ系情報サイト、電子コミックなどの公式コンテンツを手がけており、既に大きな収益をあげている。現在は、今後市場が拡大すると考えられているスマートフォン分野、ソーシャルアプリ分野などにも進出中だ。「公式サイトは、当面は確実に収益の上がる分野だが、徐々にスマートフォンなどにパイを奪われていく可能性がある。当社としても、スマートフォンやSNS等の新しい分野にはどんどん挑戦していく予定だ。とはいえ、現在はまだ、これらの市場は混沌としている。マーケティングとテスト開発を行ないながら、われわれが道筋をつけていくという気概で取り組んでいる」と、コンテンツメディア事業部　部長の堀江氏は語る。

同社の特徴は、何といってもその仕事スタイルだ。久保田氏は、同社の開発グループに対して、企画から開発、インフラ、運用までを一貫して担当し、全プロセスを理解して責任を持つことを求めている。なぜなら、一般的な企業のように組織をタテ割にしてしまうと、自分の担当する範囲内のことにしか関心がいかなくなり、全体として効率が落ちるからである。ものすごい勢いで進化が進み、多数のライバルがせめぎ合うモバイル業界においては、一瞬の判断の遅れが命取りになりかねない。また、技術のバックボーンのある人間がすべてに責任を持つことで、創意工夫やコスト意識などが生まれる。

このため同社では、全エンジニアがアプリからインフラまで、トータルなスキルを身につけている。そして、プロジェクトは「上から降ってくるもの」ではなく、それを「やりたい」と希望するエンジニアが手を挙げることで参加できるものとなっている。結果的に、高いモチベーションで仕事と向き合うことができ、自然とクオリティーも高まることになるのだ。

また、大手ではできない、このような仕事スタイルだからこそ、開発言語、ジャンルなど、あらゆる面において、誰かが「次はこれをやれ」という指示を出さなくても、自然発生的に社内にチームができ上がり、プロジェクトが立ち上がっていく。そんな環境を心地よく感じるメンバーだけが入社しているからこそ、離職者もほとんどない。

久保田氏は、30歳代前半の若い経営者だ。もともとはエンジニアとしてキャリアを積んでおり、前職ではモバイル進出前のGMOメディア社に参画して、一からモバイル事業を立ち上げた実績がある。同氏のもとには、コンシューマー向けモバイルサービスの開発に経験豊富なベテランエンジニアのほか、元フリーランスエンジニア、ゲーム業界出身者、業務系SIer出身者など多くの優秀なエンジニアが集まっている。彼らが同社に集まってきたモチベーションとして一番大きなものは、自分が本当にやってみたいと思える仕事に裁量を持って取り組める、「モバイルの領域だからこそ可能な」仕事の環境であり、スタイルなのである。

「5年後に何をしていたいのか」。
同社の社内では、このような質問が頻繁になされているそうだ。仕事における目的意識を問われて、あなただったら、答えをすぐに返せるだろうか。その目的はもちろん流動的で、今日思っていることが半年後には変わっている可能性もあるだろう。しかし、常に目標を明確にし、そこから逆算の発想で今やるべきことを決めていくことは、キャリアの構築において重要なことである。

「何より、目標に向かってはたらくと、楽しいじゃないですか。楽しくなければ意味がないと思うんです」と久保田氏は笑う。だからこそ、同社ではこの問いが真剣に繰り返されるのだ。エンジニアが最大限の力を発揮して楽しくはたらけるか。そして、その結果としてクライアントに成果をもたらし、会社全体が成長を続けられるか。VERVEは、そのような企業としての好循環ができ上がっていることを感じさせる会社だ。