株式会社クオカプランニング

クオカプランニングの前身となるのは、創業1872年という古い歴史を持つ業務用製菓材料の卸問屋である斎徳株式会社の小売部門。アサヒビールを退職後、徳島に帰郷し家業を継いだ斎藤賢治氏が新しく始めた事業だったが、2000年に部門を独立させ、株式会社クオカプランニングを設立した。

現在展開中の事業は、製菓材料や調理器具を販売する「クオカショップ」と、インターネットショップ「cuoca.com」の運営。「クオカショップ」はカフェやキッチン、チョコレートセラーを併設した新しいスタイルのショップで、自由が丘、新宿、福岡、高松に4店舗を展開している。「cuoca.com」はネット限定の商品も取り扱い、その品数は3,000点を超える。月間の訪問者数は70万人、PV数は　1,300万、注文件数は　35,000件に上る。両チャネルを合わせて、年間延べ63万人が商品を購入している。
会社としての売上も順調に推移しており、2006年に17億円、2007年に20億円、2008年には23億8,000万円と、拡大を続けている。

今後の中期目標としてはショップ数の拡大を掲げており、5年後に12店舗、10年後の30店舗を目指している。また、長期的には「手作りをもっとおいしく、もっと楽しく」というミッションを軸に、カフェやスクールの経営、出版事業などの幅広い事業を検討中だ。

徳島の卸問屋から、一般向け製菓・製パン材料の販売へと広がった事業。その背景にはどのような物語があったのだろうか。

斎藤氏は1997年頃を振り返り、斎徳の倉庫にあったプロ用の砂糖や小麦粉。スーパーとは比べ物にならない種類の多さと、その品質の高さに驚いたと語る。
問屋の店先にも一般の人が材料を求めに訪れる。プロ用の小麦粉をなぜわざわざ買いに来てくれるのかを尋ねると、その答えはいたってシンプル。「この方がおいしく焼けるから」。本屋に行けばプロの書いたレシピ本が数多く並んでいる。しかし、自宅でどんなに頑張ったとしても素材が違うので本当においしいものはできない。「良い材料を使えば、もっとお菓子をおいしく作れる」ということに気付き、一般向けにプロ用の製菓材料を販売しようと思ったことが斎藤氏の転機となった。

高松営業所の一角で販売をスタート。インターネット通販も始めた。ホームページの制作は社長自ら行い、夜中に夫人と材料を小分けにして配送していたという。「お客様からのメールが支えでした。当時、ネットで製菓材料が買える店は他にありませんでしたが、たくさんの方が求めているのだということを実感しました。お客様から教えられることも多く、アドバイスを頂きながら商品を増やしていきました」と、斎藤氏は当時を振返る。

高松の街道沿いの小さな店が、現在のクオカショップの形になったのは2001年のこと。ガラス張りでセンスの良い店内にはキッチンやカフェが併設され“お菓子づくりのテーマパーク”のようだ。このショップには、斎藤氏のある思いが込められている。「お菓子作りって、すごく楽しいエンターテインメントだと思うんです。ところが材料を買うところはちっとも楽しくない。アメリカなどのキッチンウェアショップに行くと本当に楽しくて、料理をしない僕でもワクワクドキドキする。そんなショップを日本にも作ったらきっと喜ぶ人がいると思ったんです」（斎藤氏）
最初のクオカショップである高松店は、オープン以来8年にわたって売上を伸ばし続けているという。その背景には、多くの利用者がプロ用の材料を実際に使用してみておいしいという実感を持てたこと、そして、もっと喜んでもらうために、新しい提案をし続けた同社の努力がある。

「利益を上げたいだけならネット通販だけで充分。安さだけを追求することもできます。だけど、我々がやりたいのはそんなことじゃないんです。当社の材料を使って、作って、食べて、おいしいねって言ってもらえるまでが仕事だと思っています。儲けること以上に大切なものがあると考えてきましたし、それが評価されたんだと思います」（斎藤氏）

「cuoca」とはイタリア語で「料理の上手なお母さん」という意味。この言葉には同社の強い思いが込められている。同社のミッションは、「手作りをもっとおいしく、もっと楽しく」すること。特に「『お母さんの手作りが一番おいしい』という子供を一人でも多く増やす」ことが目標だ。

「今はおいしいものが簡単に手に入る時代。冷凍食品が売れているのも、お母さんが作ることが面倒になったからではないかと思うんです。買った方が安くておいしくて簡単だから。しかも最近は安全まで保証されるようになった。手作りでない方が良いという理由がたくさんあるんですね。でも僕らは、『おいしい』ってそういうことではないと考えているんです。お母さんが料理をする姿とか、ものを切っている音とか、出来上がりの匂いとか、誰かと一緒に食べること。そういうことがすべて合わさって『おいしい』なんだと」（斎藤氏）

同社の顧客の約80％がリピート購入をするという事実。その背景には、良い材料を使って手作りしたことでより安心・安全なものをつくれたこと、そしてそれをおいしいと言ってもらえたこと。そのことに喜びを感じた人が存在しているのだ。

設立から9年が経ち、社員数もパート社員も含めると約80名に成長した。100年後もお菓子作りを手伝う会社でありたいと語る斎藤氏。そのためにも、会社としての組織作りを行うことが必要な段階になったと考えている。今はまさに、制度を整え、組織を作り、そしてクオカという企業の風土を創り上げているところだ。製菓材料の販売という分野の中で、同社ほどの規模を誇る会社は他になく、業界的にもイノベーターと呼んでよいポジションにある同社。今この会社で働くということは、会社を創ることであると同時に、業界を創ることでもあるのだ。

正社員が50名になった2008年に発足したのが「ユナイテッドクオカプロジェクト」。社員が一丸となって進むために、自分達を見つめ直そうというのがその目的だ。具体的な施策としては社員旅行の企画やクオカカレンダーの制定などを行っている。これによって、普段は別々の拠点で仕事をしている社員の交流を深め、一人ひとりの参画意識を高めているのだ。斎藤氏が冗談で一つだけ作ったという社章が、社員からの要望がきっかけで、今では全員の胸に光っているというのも、同社の団結力を示しているエピソードといえるだろう。

最後に斎藤氏に応募者へのメッセージをいただいた。
「僕はこの仕事に出会えたことに、とても幸せを感じています。人を幸せにする仕事でありながら、自分も幸せになれる仕事。一生の仕事にしていこうと思っています。ただ、人を幸せにするために僕らは血が滲むほどの努力をしなければならない。そうでなければ、人を喜ばせたり幸せにしたりすることはできないと思います。でも、じゃあなんでみんな頑張れるのか。それは、お客様からありがとうと言ってもらえることが嬉しいから。だからこそ、頑張れるんです。ぜひ、一緒に頑張りましょう」

会社も事業も業界も、まだまだこれからというところ。そんな同社で働くことは、決して楽ではないだろう。しかし、努力の分だけ喜びを感じられる仕事であることも間違いない。中途入社者には、これまで培った経験やノウハウをぜひクオカのために役立ててほしいと語る斎藤氏。中途入社だからというハンデなどは一切存在しない。精神的なタフさと積極性を持って様々なことに関わっていける人を、同社では求めている。同社の理念に賛同し、何よりも「人のために何かしたい」「人が喜んでくれることが自分のエネルギーになる」というホスピタリティあふれる人に、ぜひチャレンジしてほしい会社だ。