3つの事業を展開
ブロードバンドに特化したウェブメディア「RBB TODAY」を買収したことから始まった株式会社イード。同社を一言で表せば、「ウェブマーケティングのプロフェッショナルに進化した、ウェブメディア企業」である。
同社では、「RBB TODAY」等のウェブメディアと、そこから派生したビジネスを合わせて、以下の3つの事業を展開している。
ひとつは、主要事業である「メディア・コンテンツ事業」。
20ジャンル48サイト5雑誌1新聞(2016年6月現在)のメディア・サービスを運営し、利用者は月間でのべ約3,400万人以上におよぶ。同社では、単なるニュースメディアではなく、後述するようなストック型の新しいビジネスモデルを多数展開している。
これらのメディアは各編集部が主体となり「iid-CMP構想」の基に、共通のネットワーク・サーバシステム、イード自社開発の「IID CMSシステム」、また全メディア共通のマーケティング、セールス部門により運営されている。
もうひとつ自社運営のメディアと連動した「リサーチ事業」。消費者の動向や価値観を調査・予測したり、商品開発のヒントとなるさまざまな情報をベースに、クライアント企業の商品・サービス開発をサポートする。オンラインの定量調査に加え、マーケティングリサーチ、デザインマネジメント、ユーザビリティ評価を中核としたアナログの調査が可能であり、その適用範囲も自動車からIT関連、情報サービス、エンタテインメント、一般消費財までと幅広いのが、同社のリサーチ事業の特色である。
3つめが、EC事業者向けに、ショップ運営ASPシステムを提供している「メディア・コマース事業」。高機能ECシステム「marbleASP(マーブル)」はASPでは珍しく お客様の要望を都度カスタマイズして機能実装していくユニークな仕組みにより、日々機能が増えていく“日々進化するECサービス”として、使いやすさや安定性を強みに、国内のさまざまなECサイトに導入されている。
デザインの自由度、外部システムとの連携、最先端のデバイス対応、など常にお客様のニーズに対応し、お客様と共に進化していくサービスだ。
同社のコンセプトは、「メディア、IT、マーケティングを融合したハイブリッドビジネス」。ウェブニュースメディアを戦略的に活用し、様々な新しいサービスを構築する。そのために、編集者とIT技術者、リサーチャーがタッグを組み、まだ世の中にないビジネスモデルを生み出していく。同社では、そんなエキサイティングでクリエイティブな試みが、日々行われているのだ。
ウェブメディアを利用した様々なビジネスモデル
「従来の出版をウェブに焼き直すのではなく、メディアを利用して様々なことをやってみようというのが、当社のスタンス」と話すのは社長の宮川氏だ。ウェブの世界では、大きなメディアを抱えることがすなわち、多くのコンシューマデータを抱えることにつながる。
例えば、車の総合情報メディア「Response(レスポンス)」。ニューモデル、自動車業界ニュース速報、カーライフ、F1/スポーツ、カーマルチメディアなどの情報コンテンツを提供し、広告出稿やニュース記事提供、リスティングなどで収益を上げている。これだけなら普通のウェブメディアと変わりないが、同社では、さらに新しいモデルを生み出す。
その一つが、「e燃費」。このサービスを利用する60万人のユーザは、無料でサイトにアクセスし、愛車の走行距離とガソリンの量を入力、リッターあたりの走行距離、つまり燃費をはじき出すことができる。さらに、メーカーや車種といった切り口から、他のユーザがどれくらいの燃費を出しているのかを知ることができたり、自動計算される「燃費の偏差値」を見たりして楽しむことが出来る。このサービスでは、毎月数万件の燃費の申告があるという。同社はここで 集まったデータを自動車メーカーの燃費研究部門や、国の研究機関などに販売する。
このような新しいビジネスモデルがたくさんある同社。
「RBB TODAY」からは、「speed」というサービスを開発。これは国内最大級の通信速度測定サイトで、インターネット回線の通信速度を手軽に計測できるというものだ。自宅の回線がどの程度のパフォーマンスが出しているのかを調べたいというユーザや、時には、回線業者が開通時のテストなどに利用しているという。集まった計測データは、ISPに提供したり、大手検索ポータルサイトなどへ機能のOEM提供を行ったりという形でビジネスにする。
この他、メディア事業で蓄積したノウハウや情報を、Webビジネス事業でサイト構築戦略サービスとして展開したり、プラットフォーム・システム事業でSEMやインターネットプロモーションを行ったりというように多方面で活用している。
広告、ニュース配信、サーバ提供など、多様なビジネスモデルを展開する同社では、継続して安定した収入が見込めるストック型モデルを手にしている。今後もこれを継続的に成長させ、外部要因の影響で簡単に揺るぐことがない強固な収益基盤の確立に取組んでいく。事業規模も拡大し続けており、創立以来増収増益を続けている。
今後もビジネスのベースとなるメディアを増やし、新しいモデルを構築していくという同社。また、成功しているモデルを海外市場においても展開して行きたいと考えている。その際には、同社の米国、欧州、アジアにおける拠点が有効に機能するだろう。
フラットで活発なコミュニケーションの元に
同社では毎月、部門単位で営業利益まで算出して全社で共有している。これには、一人一人がどれくらいの売上に貢献し、どれだけのコストを使ったかを明確にすることで、経営の透明性を高めるとともに、緊張感をもって仕事にあたることができるという効果があるという。一見、厳しいようだが、会社が小さかった時から経営状態を隠しだてすることなく明らかにし、これからどうしていくのかという戦略を皆で立てていたのが、今でも残っているのだという。このおかげで、全社員が「数字に強くなる」とも言う。
また、「技術者を核に、インターネット技術を利用して何かを生み出してきたい。強い編集力とマーケティング力、技術力が出会うとき、今までに見たことのない面白いサービスが生まれる。」と宮川氏が言うとおり、3つの力がタッグを組んで新しいサービスを 生み出していくため、各々が活発にコミュニケーションをしている。
これらの例からも分かるとおり、同社の社風は極めて風通しがよい。言うべきことは言い、皆で会社を盛り上げる。役員陣との距離も非常に近いようだ。また、困っている人のことを放っておけない、面倒見の良い人ばかりで、自分よりも若い人や新しく入ってきた人、部下などには自然と教えていく風土だという。しかし基本的には、社員の自主性を重んじる社風だ。
「仕事はハードだが、独立した者同士が協力し合い、新しい価値を生んでいく楽しさを味わっている。皆がしゃべらなくなったらその時が最後。ぶつかり合って、そこで種が見つかり、花が咲くこともある。」と語る人事担当者。そんな人と人との“化学反応”を起こしながら、新しい挑戦をしてみたい人にチャンスが与えられる会社だ。