株式会社パレットリンク

株式会社パレットリンクは、愛知県名古屋市を中心に事業を展開するシステム開発会社だ。2013年10月、代表取締役・渡辺真人氏がエンジニア2名を伴い創業。小規模ながらも着実な成長を遂げ、13期目を迎えた現在（2025年10月）は、社員数約70名に外部パートナー約50名を加えた規模感で事業を展開している。

同社のクライアントは主に、名古屋市に事業所を構える企業だ。商流は様々で、エンドユーザーとダイレクトに繋がるプライム案件もあれば、SIer等のプロジェクトに参画するケースもある。JavaやC#を中心に幅広い言語に対応しながら、製造業やサービス業、飲食業、エネルギー産業、自治体等、多彩な業種業界に向けた開発を行っている。
最近では、モダンな技術での開発やAWS・Azure等クラウド環境での開発にも力を入れている。

同社の強みは人材育成力だ。設立3年目に本格的な採用活動を始めた時から、新卒採用とエンジニア教育に力を入れてきた。

人間性を重視し、コミュニケーション力を備えた人材を採用した上で、入社後はまず、3カ月間の研修期間を設け、外部研修機関でプログラミングの基礎やビジネスマナー等を学ばせた上でアサインする。4カ月目からは先輩社員と共に開発現場にアサインされ、OJT形式で実践を重ねながら業務を覚えていく。

営業部部長が語る。
「文系の新卒社員でも、全く何も分からないという状態でプロジェクトに入る社員はいません。プロジェクトに入ってからも、社内勉強会やナレッジを共有したり、現場で困っていることを全員で解決したりして、会社全体の底上げを図っています。お客様からは、個人ではなく、チームで対応しているという安心感を持っていただいています」

またエンジニアの定着率の高さも、顧客の信頼を得る大きな要因だ。同社は社員が定着しやすい仕組みづくりにも注力してきた。各自のキャリアビジョンに沿ったアサイン先を選定した上で、営業担当者がクライアント、エンジニアの双方と細かい調整をしながらミスマッチングを防ぐ。また毎月、帰社日を設けて現場の情報を共有し、問題がありそうならクライアントと連携して解決を図る。

ユニークなのは2021年に導入した「ブラザーシスター制度」だ。新卒社員と若手社員がペアとなり、仕事だけではなく、個人的な相談も気軽にできる関係性を築くことでメンタル面のケアに努める。希望する中途社員にもこの制度を取り入れている。

同社の新卒社員の3年間の定着率は100%。過去8年間で採用した新卒者約40名のうち退職者は3名にとどまる。しっかり教育を受けた社員が定着することで、ナレッジが蓄積し、安定したサービスを実現している。

「当社がエンジニアに望むことは顧客第一主義に徹することです。現場に立つエンジニアはあくまでもお客様に向き合うように指導しています。会社は従業員第一主義で、エンジニアがお客様に心置きなく向き合えるよう環境整備に努める。そのような考え方を徹底しています」。

同社は、“従業員が安心して長く働ける会社をつくりたい”という、渡辺氏の思いから設立された会社だ。大学卒業後、金融業界に就職した渡辺氏が、システム開発業界に転身したのは2000年代半ば。労働派遣法の規制緩和により、技術者派遣やシステムエンジニアリングサービスの市場が一気に拡大した時期だ。急激な市場拡大に伴い、エンジニアの労働環境の不安定化、契約形態を巡るトラブル等、様々な問題が噴出していた。

そのような時代背景の下、渡辺氏は、名古屋市の小規模なシステム開発会社に営業マンとして入社。約7年間の在籍中に、エンジニア20名から百数十名規模への拡大を牽引しながらも、エンジニアを都合の良い商品としてしかみなさない業界の風潮に疑問を持った。元々自らが扱う商品が物ではなく、人間であることを意識し、エンジニアの意向や将来を意識しながら営業活動を行っていた渡辺氏だが、リーマン・ショックで大量のエンジニアが職を追われる様子を見たことがきっかけとなり独立を果たした。

会社を、個人の色（可能性）を引き出して、伸ばし、混ぜ合わせて新たな色をつくり出す「パレット」と定義した上で、顧客や社会、社員との繋がりを大切にしながら、それぞれの未来をつくっていく。『パレットリンク』という社名には、そんな思いが込められた。

新卒採用を軸にしながら、従業員教育と社員が定着しやすい仕組みづくりに注力してきたのは、これらの思いを実現するためだ。

「社員の名前と顔が一致するような繋がりの中で、それぞれが普通より少し良い生活を長く続けられる。そんな会社を目指してきました。採用においては、ネームバリューのある大手と競争するよりも、新卒で当社に合う人材を採用し、当社のイズムを育てていく方針を採りました」（渡辺氏）。

立ち上げメンバーのうち一人が途中で離脱する等、思い通りにならないこともあったが、より直接的なコミュニケーションでお互いの認識のずれを少なくする等、修正を重ねて現在の体制を整えてきた。一方では、スピーディーな対応力と提案力を武器に、フットワーク軽く、スピーディーにクライアントの要望に応えながら安定した成長を遂げてきたのである。

そんな同社が13期目を迎えるに当たり掲げたのは、15期に従業員数100名、売上10億円という目標だ。その目標を達成するために、10年以上の業界経験を持つ営業部長を迎え、社内体制の強化に取り組み始めた。

「感染症の拡大や外国との摩擦等、不慮の事態が起きたとしても、人さえいればなんとか乗り切れます。ただし、誰でも良いから増やしていこうというつもりもありません。当社のイズムを維持しながら、何があっても守り抜ける体制を実現するには、100名ぐらいが適切ではないかと考えています」。

この目標に向け、毎年二桁台の新卒採用を行う予定の同社。課題となるのは、増え続ける若手社員を牽引する中堅社員の確保だ。受託案件の拡大も計画しているため、SE、PM、PLといったキャリア採用にも注力している。

同社が掲げる経営理念の下、安心して長く勤められる会社を現実化するため、“常に夢を持ち続けること”、“常に技術力を高めること”、“常に情熱を注ぐこと”という三つの行動指針を掲げている。従業員教育やブラザーシスター制度等の取り組みは、そういった行動指針を形骸化させないためのものでもある。

これまで紹介した取り組み以外にも、客先に常駐しているエンジニアが多いことからビジネスチャットツールを導入し、社員同士が日常的に、自由に連絡が取り合える環境を用意したり、委員会やサークルを設けて、現場が異なる社員同志が交流する機会を設けたりしている。例えば委員会には、社員旅行やイベントの企画・運営まで行うレクリエーション委員会、毎月、社内報を制作するブランディング委員会等がある。社内報は、社員全員に配布する他、社員の家族も見られるよう自宅にも送付する等、社員の帰属意識を保つ役割を果たしている。またサークルには、餃子サークル、謎解きサークル、筋トレサークル、キャンプサークル等、多種多様な取り組みが行われている。教育面では、スキルアップのための支援制度を多数用意する他、階層別・目的別に充実した研修制度を設ける。

こういった取り組みの結果、同社では定着率が高まるだけではなく、社員同士が積極的に交わりながら、一人ひとりが主体的に物事を考えて行動する文化が定着してきたのである。

「社外のブログメディアへの投稿等、身に付けたことをアウトプットする機会も用意しています。技術力を高めたい方には最適な環境を提供できるはずです。また、当社は繋がりを大切にしている会社です。人と関わることが好きな人や社内イベントも積極的に参加したい人にもおすすめです」。

客先常駐が多いとはいえ、テレワーク率75%、月平均残業時間6時間と、ワークライフバランスの取れた働き方ができる点も魅力だ。コロナ禍を機に、最近は常駐型のプロジェクトでもリモートワークが一般化している。また、常駐先とコミュニケーションを取り、応えられる要求と応えられない要求を明確にすることで、無用な残業が発生することを防いでいる。

今後、日本の人口減少が止まることは期待できない。いずれ人材ビジネスだけでは成長し続けることは難しくなる。同社はその未来を見据えて、キャリアコンサルタントのマッチングサイト『きゃりぽ』や、アウトドア・レジャー事業等の新規事業に乗り出している。それによって従業員の個性を生かし、可能性を広げる機会を増やす算段だ。

営業部長が、経験を積んだエンジニアに期待を込めてメッセージを送る。
「15期100名、10億円という目標はありますが、さらにその先を見据え、中心メンバーとして活躍していただきたいと考えています。ぜひ当社にジョインして、個性を発揮してください」