女性経営者としての苦労や視点はありますか?それは採用や経営に活かされていますか。
現在は女性の起業家も増えてきましたが、まだまだ少ないと思っています。 起業当時に子供が幼かったので、色々な方にサポートをお願いし、大変苦労しました。 女性経営者が少ない、ビジネスシーンに男性が多い。 そういった意味では、企業のタイミングについて、理解者は少なく孤独ではありました。今より応援してくれる方も少なく、男性投資家も多いので「なぜそんなことを言われるのだろう」と思ったことも少なくはありませんでしたね。 ただ今思えば、その経験があったからこそよかった点もあります。 一つは、チームビルディング。弊社は多様性が起業当初から豊かで、年齢も性別もキャリアステージもバラエティに富んでいます。 その人の環境よりも、経験や視点、今後のビジョンを大切に採用しています。 二つ目に、その苦労や視点がサービスコンセプトやプロダクトの企画に反映されています。自分の人生について悩んでいる時の経験です。 不安を抱えていても、心配をかけるから家族や友人には話せない。 またはどう話していいかわからない。 自己責任ってどこまでなの? 社会全体の問題を、個人で解決できるわけがない…。 その諦めにも似た、虚無感をそのままサービスやビジネスモデルに落とし込んでいます。 苦しいことはいっぱいあったけど、尖ったサービス構築にも、ダイバーシティ経営にも活かせていると信じています。
NPO法人に就職されたきっかけをお話しください。
結婚・出産を経て体調を崩し、やむを得ず転職することになりました。仕事に復帰しようと、保育園のお迎えに間に合う範囲で働ける営業職を探しましたが、条件に合う仕事が見つからず、初めてハローワークを訪れました。 そのとき、窓口の担当者から「お母さんが仕事中心だと、お子さんがかわいそうです」と言われたことが、のちにNPO法人に就職する大きなきっかけになりました。「子どもが大きくなるまでは子育てに専念した方がいい」「自宅から近く、子育てと両立できる営業職で希望の年収を得られる仕事なんてない」「そもそも再就職は難しい」といった言葉を聞かされて、これは個人の問題ではなく、日本社会の構造的な課題だと感じました。 それならば、今度は「相談を受ける側」になろうと思い、さまざまな支援団体を調べる中で見つけたのが、無就業者の就労支援を行うNPO法人の求人でした。ハローワークからの紹介状は資格がないことを理由に、なかなか出してもらえませんでしたが、直接連絡を取って訪問すると、所長がとてもユニークな方で、私の経歴や経験に興味を持ってくださいました。当時、私は子育てと並行して、父の介護もサポートしている状況でしたが、ご縁もあって、採用してもらうことになりました。
その後、NPOではなく株式会社の形態で起業した理由をお話しください。
当初は「社会的インパクトを重視するなら、非営利組織の方が適しているのではないか」と考えていました。 株式会社の場合、株主の利益を優先するあまり、掲げたミッションやビジョンが後回しになり、形だけが残る危険があります。理想を掲げながらも、結局は売上を追う事業になってしまうことは避けたいと思っていました。 そのため、最初はNPO法人としての立ち上げを考えていました。 しかしその頃、「スタートアップ」という形態があることを知ったのです。 過去2度の起業経験から、事業で得た利益を再投資して成長する方法は時間がかかり、歩みが小さくなりがちだと痛感していました。 また、収益のために「本当はやりたくないことをやらざるを得ない」状況がチームを崩壊させた苦い経験もありました。 だからこそ、「本当にやりたいこと」に共感し、資金を出してくれる人がいる状態で始められる仕組み――それがスタートアップの魅力だと感じ、この形を選びました。 当時はまだ「インパクトスタートアップ」という概念自体がほとんど知られていませんでしたが、赤字を抱えながらでも初期からテクノロジー投資ができる点に魅力を感じ、この形を選びました。 しかし、翌年に入り改めて社会を見渡すと、ワーキングプアの問題は加速度的に進行しており、このままでは2050年には貧困層が“当たり前”になるのではないかという危機感を抱きました。社会全体が貧しくなっていく中で、もはや悠長なことを言っている場合ではないと強く感じたのです。労働人口は減り、国費も限りがある中で、急がねばならないと。 子どもたちの未来を考えたとき、少子高齢化が進み、財源が先細る中で「できること」が減り続けていく現実を前に、一刻も早く持続可能な仕組みをつくらなければと感じました。そこで、民間企業こそが社会課題を解決する原動力にならなければならない、という想いを強めていった頃、ちょうど「インパクト投資家」という存在が登場し、その流れに乗ることができました。
組織づくりを進める上で大切にしてきたことをお話しください。
仲間を増やすうえで、私が最もこだわってきたのは「平均よりもなるべく高い水準の報酬を支払うこと」です。社会課題の解決を目的としたインパクト系のビジネスでは、「やりがいがある分、給料が低くても仕方ない」という風潮が今も残っています。NPOの現場でも、もう一人子どもを持つことを諦めたり、子どもの習い事を我慢させたり、家族の治療費を保険適用の範囲で抑えながら、目の前の人を助ける――そんな状況が“当たり前”になっていることに、強い違和感を持っていました。 「志が高い場所にこそ、正当な報酬が支払われるべきだ」というのが私の信念です。 国立大学病院が赤字でも必要な役割を果たしているように、社会的意義の高い仕事にこそ適正な対価が必要です。そのため、まだ利益構造が十分に整っていない創業初期の段階から、前職よりも年収を上げることにこだわってきました。 もちろんその分、人員を一気に増やすことはできません。だからこそ、一人ひとりのパフォーマンスを高める仕組みづくりが欠かせません。けれども私は、社会的インパクトを生み出す仕事だからこそ、「志に対する正当な対価」が最も重要だと考えています。 もちろん、持続的に事業を続けるためには利益を生み出すことも欠かせません。 起業当初、投資家からは「プア層からお金を取るべきだ」と何度も言われました。 “料金を支払うことで当事者の意識が高まり、本気になる”という、トレーニングジムのような発想が当時は主流だったのです。 しかし実際には、同じように「利用者から料金を取る」仕組みを採った支援サービスは、あまり続かなかったように思います。 私はその方法は根本的に違うと考えていたため、たとえ投資家から「ビジネスモデルが分かりにくい」と言われても、支援対象者からは一切お金を取らない――この一点だけは絶対に譲らないと決めていました。投資家のためではなく、国民のためのサービスだからです。 そうした制約の中で、試行錯誤を重ねて生まれたのが、現在のビジネスモデルです。 テクノロジーを活用することで、労働集約型ではない、持続的に利益を生み出せる仕組みを実現しました。
求める人物像をお話しください。
現在、自治体と連携したDX相談窓口の運営、またデジタル就労支援事業を中心に展開しています。今後は全国のあらゆる地域にサービスを届けていくために、GovTechとしてだけでなく、自社ブランドとしてのサービス確立を目指しています。 そのためには、同じ志を持ちながらも「事業をスケールさせる」という野心を持った方にぜひ加わっていただきたいと考えています。 私たちの事業を「社会貢献をしているNPO的な会社」と捉えられることがありますが、それは大きな誤解です。 Compassの仕事は、“良いことをしたい”という気持ちだけで成立するものではありません。社会の仕組みを変えるためには、高度な知見と行動力が必要不可欠です。 私たちのファンではなく、共にトライ&エラーを恐れず挑戦し続ける勇気を持った仲間を求めています。 そもそも私たちは、支援の対象となる人々や制度そのものを変えていく必要があります。そのためには、専門的な技術や知識を自ら学び、磨き続ける姿勢が求められます。 もちろん、応募の段階で「就労支援」や「キャリアカウンセリング」「自治体の仕組み」について深く理解している必要はありません。入社後に学んでいける環境を整えていますので、重要なのは“意欲的に学び続けられるかどうか”です。知識や経験よりも、成長意欲と探究心のある方と一緒に働きたいと思っています。
