株式会社エニプラ

株式会社エニプラは、主にシステムエンジニアリングサービス（SES）を手掛けている、独立系のシステム開発ベンダーである。エンジニアが現場に分散するSES会社として、エンジニアの帰属意識や一体感を高めるとともに、興味関心を広げ、スキルアップを促進する施策に力を入れていることが大きな特長の会社だ。

まずは、同社のサービス内容から見ていこう。
案件としては、企業向け業務システム（インフラおよびアプリケーション開発）が主で、一部BtoCのWebサービスも手掛けている。
具体的には、業務システムでは通信キャリア基盤移行、航空管制システム開発・構築、生保向けシステム再構築、証券会社向けリスク管理システムといったプロジェクトがある。
Webサービスとしては、ネットバンキングやスマホ決済アプリ、ECサイトといったプロジェクトだ。
主に大企業向けの案件が多いが、中小企業向けの案件も新たに取り組み始めている。

SESを担う社員エンジニアは約100名。得意分野としては、開発系50%、インフラ系40%、その他10%といった内訳だ。
基本/応用情報技術者、Oracle Java/DB、CCNA/CCNP、AWS Solutions Architectといった資格取得者が多数在籍している。
各エンジニアは、教育担当との面談を通じて本人の得意分野や経歴等をスキルシートにまとめるとともに、営業部門や開発部門の責任者が本人のキャリアビジョンを重視して最適な案件にアサインできるよう配慮している。

取引先は、SIerやBP等の約500社。このため、多様かつ豊富な案件にアプローチ可能なので、エンジニアは安心できるだろう。
SES企業の成長は、エンジニアの人数に比例する傾向が強い。同社は毎年着実に採用人数を増やし（2025年度は新卒が62%）、売上としてもほぼ右肩上がりの成長を継続。2026年3月期は16億円を予定している。

同社は、代表取締役の林博樹氏が2010年8月に創業した。

林氏は大学卒業後、出身地である岡山の広告代理店でキャリアをスタート。その1年目に、独立志望の同期と出会ったことで、自分自身も起業を意識するようになる。
その後、先輩が起業したばかりの会社に転じて経験を積み、さらに別の会社からスカウトを受け、音楽配信用デジタル視聴機器の営業職に就く。導入先全630店舗中、430店舗を自らが営業するという活躍をして自信を付け、起業への思いを果たす。
当時、IT業界は営業職が不足していることを知り、社会基盤づくりに不可欠なIT業界に貢献しようと志し、縁があった千葉県千葉市で同社を設立したという経緯だ。

エニプラとは、“Any-plus”の略。「すべての人々に“プラス”の価値を提供したい」との思いで命名された。
そんな同社の企業理念は、次のとおり。
【情熱、愛情、素直さを心に刻み、お客様の発展と社会の発展をめざし、プラスの価値を実現する】

その“プラスの価値”を発揮して、どういった企業像を目指しているのか。
「まずは、ITプロジェクトにおけるエンジニア不足を解消する現在の当社事業を拡大したいと思っています。具体的には25期売上高30億円、社員数265人の規模を目指しています。また、同時に会社として新規事業の検討・立ち上げ、社会貢献にも積極的に取り組んでいきたいと考えています」と、林氏は説明する。

新規事業としては、自社サービス開発や、本拠地である千葉への貢献のため、地域と連携した新規事業を検討している。例えば、千葉の飲食店のIT活用支援等、大企業が取り上げない領域を拾い上げた事業を想定。また、最近では千葉市等と連携し、同市の子供向けのキャリア教育も手掛けている。「こういったCSR活動も今後拡充していきたい」と林氏。
こうした事業展開の結果、まずは売上高100億円を目指す構えだ。

2025年8月現在、同社の社員数は130名（うちエンジニアは約100名）。30歳以下が約7割を占めるという若い会社だ。ちなみに、男女比は7対3で、女性エンジニアも活躍している。

冒頭で触れた、エンジニアの帰属意識や一体感を高めるとともに、興味関心を広げ、スキルアップを促進する施策について。同社では、仕事も趣味も楽しめる会社にするために、“興味を伸ばす”“スキルを伸ばす”“関係性をつくる”という、社員ファーストの三つの取り組みに力を入れている。

●興味を伸ばす
・エニプラボ：社内で大切にしている“遊びゴコロ”を進化させるために設置された“実験箱”という位置付けの活動。エンジニアが関心を持っているロボットやIoT、スマートグラス、アプリ等のデバイスを活用して好きなものづくりを行う。作品は動画チャンネルで紹介している。また、アプリコンテスト「ヒーローズ・リーグ」にも応募している。
・Qiitaへの投稿：エンジニアに関する知識共有サービスに、全エンジニアが持ち回りで記事を投稿。自分の知識をアウトプットすることで、さらなる知識習得に繋げるといった狙いがある。
・えにぃとプラ子：イラスト同好会のメンバーが創作した同社のマスコットキャラクター。LINEスタンプにして販売しているほか、広報用のグッズにも利用されている。

●スキルを伸ばす
・導入研修：キャリア採用者も、入社後1カ月間は現場配属せず研修に集中できる。業界の経験値に関係なく次のキャリアに向けた資格取得や勉強をするエンジニアも多い。
・テクニカルスキル研修：必要に応じて、AI/PythonやAWS、セキュリティ等の様々な技術領域について学べる。
・資格取得支援：業務に関わる資格取得について、受験費用の補助のほか、合格報奨金を支給。
・外部研修：コミュニケーション力を培う「傾聴力研修」や、自身の使命や役割を理解するための「中堅社員研修」等が受講できる。

●関係性をつくる
・チーム会：月1回、帰社日としてチーム単位で会社に集まり、各プロジェクトの状況や課題等について共有。先輩から後輩へのアドバイス等も活発に行われる。
・社内サークル：現在、イラスト、写真、ボードゲーム、スポーツの4サークルが活動。社員のサークル参加率は38%。
・社内チャット：チャットツールに様々なチャンネルを設けてテキストコミュニケーションに活用。
・エニプラAward：毎年12月の忘年会の一プログラムとして行われる。チーム単位で1年がかりで製作したIT作品を通じて技術スキルを発表し、表彰するイベント。

チーム会等で帰社して社員同士のコミュニケーションを促進したり、オフィスワークを充実させるため、東京・秋葉原に構えるオフィスでは、カフェスペースやギャラリー、雑誌コーナーや本棚等を整備して、居心地のいい空間を用意している。
これらのほかに、“社員ファースト”として「コミケ休暇」「趣味休暇」「恋愛休暇」「失恋休暇」という四つの特別休暇を設けているのがユニークだ。

そんな同社が求める人材像について、林氏は次のように期待を寄せる。
「働く中で専門技術や知識が必要なのはもちろんですが、それだけでなく、メンバーとの関係性づくりや後輩や新人の育成力も大切です。私も働く中で沢山の方と関わり、チームで仕事をする大切さを体感しています。また、会社で働くということは必ずお客様がいるので、相手の意図を汲み取ったり、物事の折り合いをつけたりしながら働くことも必要となります。なので、チームで働く意識を持てる方、課題に対して突破口を見つけられる方、そんな方にお会いできたらと思います」

社員の一体感を大切に考える同社ならば、仲間と共に楽しく働け、成長を目指せるだろう。