博士課程での研究を経て、すぐに起業ではなく就職を選ばれたのはなぜですか?
当時も起業という選択肢は頭にありましたが、学生の立場で組織運営の経験がないまま進むのは難しいと判断しました。そこで、まずは社会人としてのビジネスマナーを身に付け、日本における事業運営の方法を知るべく、民間企業へ就職しようと決めました。 就職先としてJR東日本を選んだのは、鉄道という社会インフラの現場で、AIやモニタリング技術に取り組める環境があったからです。自身の専門性を生かせる明確な領域があり、最先端の取り組みにも関われる点が魅力でした。 入社後の4年間は研究に加え、現場での経験も積みました。在籍した時に、上司によく言われていたのが、現場第一線の大切さです。単なる世の中の最先端技術を追求するわけではなく、現場が直面している課題や工夫を理解し、それを解決できる最適な技術を開発すべきだと分かりました。そのJR東日本での現場および研究機関での経験は今の会社運営に大いに役に立っており、そのおかげで現場に評価されている商品を次々と開発できております。
会社立ち上げの背景には、どのような課題意識や思いがあったのでしょうか?
土木分野におけるDX化を加速したいからです。例え医療、宇宙といった他領域ではIT技術との融合が猛スピードで進んでいる一方で、土木分野ではかなり遅れています。 もちろん、土木は長年の経験や現場ノウハウが非常に重要な分野です。ベテランの知見を否定するのではなく、それを生かしながら、最先端技術と融合させていく必要があります。ところが、土木とITの両方が詳しい土木分野に特化したスタートアップの数が非常に限られているため、他分野に比べて土木のDX化が大きく遅れており、人手不足や技術継承の面でも課題が山積していました。 こうした課題に対して、技術と現場の橋渡しを担う存在が必要だと考え、当社の立ち上げを決意しました。
今後さらに挑戦したい領域や展望しているビジョンがあれば教えてください
主力事業の一つであるGLOCAL-EYEZはリリース以来、国内導入実績と売上は毎年200%以上を達成し、国土交通省や自治体からの採択・表彰も多数頂いています。こうした実績を土台に、今後は国内のさらなる定着および海外への展開を目指しています。 特に、近年グローバル展開にも注力しています。今年度は、当社の保有する社会インフラ点検技術のノウハウが国際連合工業開発機関UNIDOに採択され、ウクライナ戦後復旧への支援事業も始まっています。当社には英語力と国際感覚を兼ね備え、日本の現場や技術にも精通したグローバル人材が揃っており、技術面でも思想面でも世界に通用する力を持っています。それをしっかりと社会に役立て、世界に伝えていくことで、日本の存在感をより強く発揮していきたいと考えています。 なお、道路のみならず、現在は鉄道や橋梁など、さまざまな社会インフラ長寿命化に向けたサービス開発にも注力しております。
土木分野に関心を持たれた原点と、日本で学び働くことを選ばれた理由を教えてください
土木分野、特に道路インフラは身近なものであり、自然と関心が芽生えました。大学時代には、人々の生活を支える社会基盤として、その設計や構造に強く惹かれました。 世界中に自然災害が年々増えており、人々の生活に支えている社会インフラが壊れ、人的被害等、悲惨な光景を目の当たりにしてきたことが、「もっと頑丈に、もっと良くしたい」という思いの原点です。 そうした願いを胸に、高度な知識と技術を身に付けたいと考えるようになり、災害大国の日本への留学を決意しました。災害対策や国土強靭化の分野において、日本は世界をリードする存在。自分のスキルを伸ばすには、最適な環境だと感じたのです。今は、専門領域である「土木×AI」の技術を生かしながら、社会に貢献できることに大きなやりがいを感じています。
求職者の方々に向けて、メッセージをお願いします
当社には、AIやITの技術はもちろん、社会インフラに関する深い知見とノウハウの全てが揃っています。開発して終わりではなく、実際に社会で活用されるところまで責任を持って取り組むことに、大きなやりがいを感じてもらえるでしょう。 また、利益の最大化よりも社会への貢献を大切にしたくて、同じ思いを持つ仲間と共に、一歩ずつ積み上げてきました。 社員達は、自社製品や技術にまるで“自分の子供”のように向き合い、丁寧に育てるような気持ちで仕事に取り組んでいます。社会課題の根本解決に貢献したい、現場の笑顔に繋がる仕事がしたい――そんな思いを持つ方と、ぜひ一緒にチャレンジできたら嬉しいです。 自社製品を自分の手で開発し、社会実装まで携わる。その道に面白さや意義を感じてくださる方のご応募をお待ちしています。
