株式会社サナリィ

「Minor Innovation For Everyone」――小さな、かつそれぞれの人や組織に必要な変革を起こす。そんな使命感を持ち、システム開発やDX支援、エンジニアのリスキリング支援などを展開する株式会社サナリィ。2025年2月に立ち上がったスタートアップ企業だ。

同社の代表取締役である岸田那由多氏は、IT業界では少々特異な経歴の持ち主だ。

岸田氏はもともと地域医療を志し、理学療法士を目指して進学する。

「医療の中でも理学療法士を目指したのは、地域というよりミクロな世界に貢献でき、さらに一人ひとりの患者さんと向き合う時間をじっくりとれると考えたからです」と岸田氏。岸田氏はここでも既に、「Minor Innovation For Everyone」をゴールにしていたのだ。

しかし学生として実習に訪れた医療現場で、岸田氏は新たな課題を発見する。深刻な人材不足と、そこに渦巻く、不完全な組織体制だ。

「“医療業界にはホスピタリティがなくてはならない”というムードが、この社会にはあるように思います。もちろんホスピタリティの精神は大切ですが、それは現場に立つ方々の心身に余裕があるからこそ、生まれるものではないでしょうか。その“余裕”が現場の方々にないような印象を受けたんです」（岸田氏）。

岸田氏が冷静に医療現場を見つめてみると、業務効率化や人材育成方法などの“仕組み”がまだまだ整っていないことに気付く。そして、その“仕組み化”の重要な手段の一つであるIT環境の整備も、うまく行き届いてはいなかったのだ。

「医療に携わりたい思いは消えていません。ですがまず、実習の時点で気付いたこの“仕組み化”という課題を解決するのが、自分の役目なのではないかと考えました」（岸田氏）。

そこで岸田氏は大学卒業後、“医療の道”ではなく“ITの道”へと進んだ。

新卒1社目は、従業員2,000名規模のSIerへ。2年弱という短い在籍期間の中で、岸田氏は大きな活躍を見せる。重要な技術コンペの選抜メンバーに選ばれるほか、SaaS製品の大規模導入プロジェクトや大手サイトのサーバー再構築プロジェクトなどにも参画。エンジニアの仕事もこなしながら、経営企画にも携わったという。

その後は起業を見越してSES企業へ転身し、満を持して2025年、「Minor Innovation」を巻き起こす同社を立ち上げた。

「“Minor Innovation For Everyone”を掲げるエンジニア集団として当社が目指すのは、自分たちの技術にプライドを持てる開発会社です」と岸田氏は語る。

岸田氏曰く、企業側がシステム構築などを依頼する際、同じ金額の発注であっても成果物のクオリティに差が出てしまい、場合によってはクライアントに納得いただけないことがあると言う。

しかし同社は、そのような状況を許さない。「サナリィへ頼めば、いつも期待通りまたは期待以上の仕事をしてもらえる」とクライアントから思われるようなレベルの高い組織を作っている。

「だからこそ、当然一緒に仕事をするエンジニアは慎重に見極めます。面接などでじっくりと話して人柄やスキルを把握し、安心して任せられるか判断しますね」と岸田氏は断言した。


現在同社では、受託開発やシステムエンジニアリングの形でクライアントを支援する。SES事業では2次受けと浅い商流が多く、エンドクライアントは大手企業がメインだ。

その受託・SESどちらでも、同社では上流工程から関わることが多い。

例えば、電子帳簿保存法改正に伴う電子取引対応アプリのプロジェクトでは、開発から既存業務フローへの導入支援も行った。また飲食店予約アプリの開発では要件定義から携わり、予約状況に伴う店内の仕込み管理も機能として取り込んだ。

「中には、要件定義や設計を超えて経営戦略から入ることもあります。企業理念や経営計画をヒアリングした上で、どんなIT戦略を練るべきかについても一緒に考えていくんです」（岸田氏）。


このような姿勢を全うしているからこそ、クライアントからの信頼は厚い。

受託開発では、紹介から始まる取引が100％。信頼できる企業として勧めてもらえるのは、クライアントの高い顧客満足度を得ている証だ。


2025年2月のスタートから、既に順調な滑り出しで進んでいる同社。

「2030年にはSESを3割、受託開発を3割、企業のDX支援3割と、バランスを整えていきます。そこに加えて、新しくスタートしたIT人材育成に向けたリスキリング支援も行っていきます」（岸田氏）。

このような「創業後5年計画」を、設立間もない頃からしっかりと組み立てている岸田氏。自社のマネタイズや組織構築はもちろん、事業としてはDX支援やリスキリング支援も並んでおり、岸田氏がかつて課題として抱いていた、企業の“仕組み化”の支援にもしっかりとリンクしている。

「また、今後はオフショアやブリッジエンジニアリングなど、ビジネスの視点を海外にも広げていこうと考えています。そのため社内では英会話なども福利厚生に取り入れ、グローバルに活躍できる人材を育てていくつもりです」と岸田氏は、次々と今後の展望を語った。

「20年後も、一緒にお酒を飲んでいるような間柄。せっかく仲間として迎えるなら、そんな関係でいたいと思うんです」と岸田氏は語る。そのために岸田氏が大切にしていることは、大きく分けて二つある。

一つは、「エンジニアとして無理なく活躍し続けるための待遇」だ。

例えば、エンジニアへの還元率にはぜひとも注目したい。稼働したプロジェクトにおいて、入社1～2年目には70%、3～4年目には73%、5年目以上では75%が自身の給与に反映される仕組みができている（2025年7月現在）。

「決して低くはなく、かつ会社としても非常に現実的な還元率だと自負しています。こうして着実に年収を増やしてもらい、エンジニアが普段の暮らしを潤すための“可処分所得”を高めたいんです」（岸田氏）。
このような安心できる条件に魅力を感じて入社を決める新メンバーも多い。

そしてもう一つ、岸田氏は「技術者としてモチベーションを燃やせる環境」も譲らない。

「とある新メンバーは結婚を控えており、年収アップは転職のマストな条件でした。しかし一方で、面接では『エンジニアという仕事を自分はどれだけ楽しめているか』とも悩んでいると聞きました。その点で、“Tech is FUN！”をパーパスに掲げる当社を面白く感じてくれたようです」と岸田氏。

“Tech is FUN！”という言葉が既に体現されているエピソードは、既にたくさん出てきている。

例えば、同社では社内のDiscord サーバーを自由に利用可能。仕事はもちろん、趣味やスキルアップのためのコミュニケーションを取るのもOKだ。中には好きなゲームについて話すチャットもある。

「現在は毎週決まった時間に、内定者と共に個人開発を行っているんです。みんな、やはり技術が好きなんですね。『あのサーバーを使おう！』とか、『このネットワークは自分たちで引こう！』とか、次々とアイデアが出てくるんですよ。先日はとあるIT関連のニュースがチャットの話題に上がり、かなり盛り上がりましたね」と岸田氏は笑顔で語る。


ここで押さえておきたいのは、岸田氏は「帰属意識を持とう」「会社に全力で貢献しよう」などということを求めているわけではない、ということだ。

「正直、普段から皆で同じ目標を持って同じモチベーションで頑張りたい……とは思っていなくて。けれどふと、社内で何かを話すタイミング等では同じ方向を向いて、クライアントとのプロジェクトが成功したら、一緒に心から喜べる。そんな楽しい時間は一緒に共有したいんですよね」（岸田氏）。

インタビュー中、岸田氏はそのような思いを繰り返し語った。


ほんの少し、あなたの胸に問うてほしい。
夢だったエンジニアになって数年、現在、エンジニアという仕事を心から楽しめているだろうか？ もし、「こんなはずじゃなかった……」「いつの間にか“楽しさ”から遠ざかっていた……」という人がいれば、ぜひサナリィのドアを叩いてほしい。

ここは、エンジニアがエンジニアとして、いつまでも“Tech is FUN！”という心を持ち続けられる場所だ。