株式会社SAMANSA

映画の配給・製作・配信サービスを行っている株式会社SAMANSA。アメリカで映画製作を行っていたCEOの岩永祐一氏と遠山孝行氏の2人が2021年に立ち上げた。

メイン事業が、世界中の上質な「ショート映画」を世界に向けて配信する日本初のサービス『SAMAMSA』の運営だ。

同社では30分以下の映画をショート映画と定義しているが、すでに500本以上を配信しており、月額490円で見放題。日本国内だけでなくアメリカでの展開にも力を入れており、アプリの総ダウンロード数は100万DLを超えている。

日経クロストレンドの「未来の市場を作る100社」に選出されたほか、「B DASH CAMP 2024 Fall」では「最もグローバルで最もダイバーシティに富んだサービス」と高く評価されて優勝するなど、サービスへの評価や期待値も非常に高い。

『SAMANSA』の特徴について、創業者である岩永氏は次のように話す。

「今までだとショート映画はニッチな存在で、製作者目線でいうと映画祭での受賞を目指して作ることが多いため、どうしてもアート寄りになってしまいがちでした。SAMANSAでは一般の人でも馴染めるような面白いものや、理解しやすい作品を集めて配信しています」

作品の選定については、直接海外などのクリエイターに声をかけて集めているため、配給会社経由で仕入れる競合サービスとは作品群が全く違っている。英語圏の作品が多くなっているが、日本やアジア圏の作品もあり、そうした作品をアメリカなど海外に紹介する役割も担っている。

「日本だけでなく韓国を含めたアジア圏の作品は、アメリカでもすごく反応がいいですね。アメリカではこの1年でSNSのフォロワー数が16万くらい伸びたのですが、サービスへの注目度が高まると同時に、そうした作品への注目度も高まっているように感じます。最近はいろいろな国のクリエイターから作品の売り込みもくるようになりましたし、ユーザーから“こういう作品を扱ってほしい”といった声も届くようになっています」（岩永氏）。

同社がショート映画に着目したのは、日本の映画業界が抱える閉塞感を打破するためだったという。岩永氏は次のように話す。

「私も遠山も映画を作っていた人間なので、アメリカと日本の製作現場を知っています。アメリカはすごくポジティブで“いい映画を作る”というモチベーションがすごいのです。一方で日本の製作者は、割と有名な方でも“いいものを作れる環境がない”“製作費が出ない”“人件費が安い”などとネガティブな声が多く、閉塞感がある。その状況を打破できるような何か新しいことができないかと考えた時に、新しい市場を作る必要があると考えたのです」

そもそも日本の映画業界自体がシュリンクする中、これまでの延長線上では新しい市場は作りにくいと考えた2人。そこで目をつけたのが「短い動画」だった。

「そもそも映画の歴史を遡ると、チャップリンの時代などはショート映画が主流です。TikTokなどでショート動画が見られるようになったタイミングだったので、映画も短いものがより見られる時代になるのではないかと考えました」（岩永氏）。

また、ショート映画の作り手が、なかなか作品を発表できる場がない現状にも着目した。

サービスの立ち上げにあたっては、ニーズの検証からスタート。知り合いなどを通じて集めた作品の予告編をSNSに上げて集客したところ、ほんのひと月で20万人ほどが集まったという。ニーズがありそうだと感じ、有料課金でのサービス提供がスタートする。

「私たちが目指しているのは“国境のない世界”をつくることです。世界中でいろいろな軋轢がある中で、それを簡単に突破できるのがエンタメの力だと思っています。映画というエンタメを通して世界を1つにしていきたい。それは創業以来ずっと意識しているところです」（岩永氏）。

もう1つ、同社が大切に掲げているのが「映画を、自由化する」というビジョンだ。

ショート映画がなかなか広く浸透してこなかったのは、「映画は2時間、それを2000円で劇場で見て、その後はソフト化」というようなフォーマットが決まってしまっていたからで、そこにショート映画が入り込む余地がなかったからだと同社は考えている。

「我々は、視聴者にもっといろいろな作品が見られる環境を提供したいし、クリエイターにももっと自由に作品をつくれる環境を提供したい。それを自由化という言葉に込めています。業界全体をもっと開放して、いろいろな人が自由に楽しめる場所にするとともに、映画を通して世界について考える機会をつくったり、新しい価値観を共有できる世界をつくりたいのです」（遠山氏）。

そのために、同社では配信サービス以外にもいろいろな事業を行っている。2023年からはオリジナル映画の製作をハリウッドの若手映画監督などと進めている。作品は配信するだけでなく、ハリウッドでの長編化やテレビシリーズも視野に入れており、現在までに7本の作品が進行中だ。

また、映画館やクラウドファンディングサービスと共同で、製作・公開・配信を一気通貫で行うプロジェクトなども進行中。自治体や企業と連携して上映会を行うなど、ショート映画を広く知ってもらうための活動にも力を入れている。

ビジョンの実現に向けてはまだまだ道半ばだが、その手応えについて「想定以上にショート映画のニーズがあると感じている」と岩永氏は語る。

「一度『SAMANSA』を使って作品を見てもらえればその良さを直感的に理解してもらえるので、今後はそういう機会をいかにつくるかがポイントだと考えています。航空会社であるスターフライヤーの機内で『SAMANSA』の提供を始めましたが、そういった隙間時間の活用や、時間の制約があるからこそ活用したい企業も多いと思うので、いろいろと考えていきたいですね」（岩永氏）。

今後は、ショート映画を活用した飲食店向けの集客支援や、美術館のようにショート映画を見て回るようなサービスづくりなど、新たなチャレンジをしていきたいと話す。

「僕らは今後の映画はショートがメインになると本気で思っていますし、その世界をSAMANSAがリードしていければ。ゆくゆくは、ショート映画が巷で話題になるような世界をつくっていきたいです。単なるエンタメだけでなくてドキュメンタリーのような社会派の作品を増やしたり、世界中の人々がよりポジティブに生きられるような作品も提供していきたいですね」（岩永氏）。

アメリカの次は、ヨーロッパなどその他の英語圏の国々にもサービスの提供を広げていく予定だという。「資金調達も済んだ今こそが、ジョインするのにベスト」と遠山氏は話す。

「どんな価値を生み出せるかを、新しくジョインしていただく方も含めてみんなで考えていきたいと思っています。そこを一緒に引っ張っていってほしいですね」

職場環境については「今まさに整えているところであり、良くも悪くも何も整っていないので新しいことは何でもやれる環境です」と岩永氏。

「だからこそ、仕事を作り出せる人や、どうやって価値を生み出すかを自分で考えていける人であることが重要です」（岩永氏）。

「大事なのはSAMANSAがやろうとしていることへの共感ですね。あとは、やっぱり映画が好きな人が集まっている会社なので、そこは求めたいなと。いくら能力があっても、映画に興味がない人だとギャップが生じてしまうかもしれませんね」（遠山氏）。

正社員のほかに業務委託やインターン、副業等、様々な仲間が関わっており、特にコンテンツ周りの仕事については英語話者が多く、海外とのやりとりも頻繁にあることから英語でのコミュニケーションも多いという。語学力を活用して働きたい人にもぴったりの環境だ。

「今後、SAMANSAは一気に広がっていくと思います。その直前の今だからこそのワクワク感を、ぜひ一緒に味わってほしいと思います」（岩永氏）。