電通時代に感じた、デジタルプロダクトの可能性
2004年に株式会社電通へ新卒入社し、営業局に配属となりました。外資系消費財メーカーやIT系企業等のマーケティング戦略に従事し、広告枠の販売、広告制作、マーケティングデータ分析等、幅広い業務を経験しました。転機となったのは2009年、新規事業担当として電子雑誌販売アプリの立ち上げおよびプロダクトマネージャーを務めたことです。 当時、日本国内でもIT系のスタートアップが次々に設立され、飛躍的に成長しているのを目の当たりにしました。その状況を見て、マーケティングの中心がデジタルプロダクトになっていく未来を強くイメージできるようになり、会社に対して電子雑誌をインターネットで販売するプロダクトの企画を提案。このアイデアが認められ、電子雑誌販売アプリのサービスを立ち上げることになりました。 電通にとって初の「BtoCサービス」でしたが、電子雑誌販売アプリのプロダクト開発を通じて、コンシューマー向けのデジタルサービスを成長させる仕事の面白さを実感しました。新規事業なので想定していなかったことも起こったり、ハードなことも多かったですが、そこでの経験は大きな財産になり、その後電通内でクライアント向けにデジタルプロダクトの企画や開発のコンサルタントとしてのキャリアをスタートさせました。
電通を辞めて、株式会社GNUSを設立した背景、そしてユニークな社名「GNUS(ヌース)」に込めた想い
スマートフォンの急速な普及により、デジタルプロダクトの重要性はますます高まっていきました。2011年には、電通内に新設された新規事業開発&コンサルティング部門へ移籍し、様々な業界において、デジタル化や新規事業のコンサルティングを推進する役割を担いました。「DX」という言葉がまだ一般的ではなかった時期ですが、クライアント企業に対してデジタルプロダクトを活用した新規事業を提案し、それを開発する仕事に従事しました。 次の転機は、2017年のニューヨーク出向です。Dentsu Holdings USAにて、日系大手メーカーのデジタルマーケティングコンサルティングや新規事業企画を中心に担当しました。その過程で西海岸のスタートアップ企業とも協働する機会を得ましたが、何事もエキサイティングで、新しい技術やサービスが次々に登場し、ビジネスの成長においてデジタルプロダクトの開発が重要な役割を担うでことを痛感しました。 2019年に帰国し、これまで以上にDXというワードが注目されるようになっていましたが、本企業のDXが業務効率化やコスト削減を目的とした「守りのDX」に偏っている状況に課題を感じていました。また、多くの事業担当者が新規事業や新規サービスの必要性は感じつつも、なかなか実際にそのアイデアを形にすることができていないという課題が根強く、この課題を解決したいという思いで当社を設立しました。 社名は、アフリカに生息する牛の仲間「ヌー(Gnu)」からヒントを得ました。大きな群れを作りながら生活する生き物で、その群れを統率するリーダー「King Gnu」は強いリーダーシップを発揮し、集団を導きます。嗅覚が優れており、目的地を嗅ぎ分け、凄まじいスピードで進むと言われています。私たちは、クライアントの目的を達成する最適な道のりを瞬時に見極める集団になりたいとの想いから、社名を「GNUS(ヌース)」と名付けました。
GNUSで働くメンバーに大切にしてほしいと願っていることは?
当社はITコンサル会社でも、システム開発会社でもありません。当社がお客様に提供するのは、アイデアや納品物やチームではなく、デジタルプロダクトを通じた事業の成長です。前提や常識にとらわれず、お客様にビジネスの変革と長期的な成長を支援しています。最適なデジタルプロダクトを企画・開発するには、ビジネス環境やユーザーのライフスタイルの変化を素早く察知する必要があります。そのためには「変化を起こす側」の人であらねばなりません。変化を歓迎し挑戦を応援するカルチャーを大切にしています。 そして個人的には仕事を楽しむことを大切にしています。プロジェクトミーティングでデジタルプロダクトの提案をしていると、クライアント企業の担当者の方から「楽しそうですね」と、よく言われます。デジタルプロダクトの開発支援はまさにクリエイティブで楽しい仕事です。当社のプロジェクトは、大手企業の事業部が手掛けるチャレンジングな取り組みも多く、成功したときのインパクトが非常に大きいため、難しいことも多いですが、やりがいを感じられる瞬間も多いです。 また、新しいものが好きな人と働きたいと思っています。息を吸うように新しい物テクノロジーや考え方を取り入れ、それを情熱を持って広めていける人。そうした人々と共に働くことで、私自身も多くの刺激を受けています。現在、会社は30名規模に成長し、次のステップへ進むために、これまで以上に幅広い層の人材が活躍できる環境を整えることが重要になってきました。スキルや経験が浅くても、やる気と熱意、チャレンジ精神を持つ人には、広く門戸を開いていきたいと考えています。
GNUSの事業を支えるハイスキルフリーランス集団「GNUS Network」を自社で組織した背景
「日本の多くの大企業が抱えるイノベーションの課題」の一つが、テクノロジー人材の不足です。その解決策として、私たちが考えているのは、フリーランステクノロジー人材の最適な活用です。常日頃から優秀なフリーランス人材を積極的に募り、自社で「GNUS Network」と呼ぶタレントプールを組織しています。GNUSを立ち上げる際に、米国のスタートアップのGigsterから学んだ手法で、このことによってプロジェクトに合ったチームを柔軟に組成することが可能となり、サービス提供できる範囲についても正社員のリソースやスキルセットのみに依存せず拡大が可能です。 過去、電通でデジタルプロダクトを開発した際、フリーランスエンジニアに助けられた経験がありました。フリーランスという言葉を聞いて、特定の業務を補完的に作業するイメージを持つ方もいるかもしれませんが、より深く開発に関わり、専門的な視点から有益なアドバイスをしてくれるエンジニアもいます。特に大手企業のようにリソースが固定化されやすい環境においては、ハイスキルなフリーランス人材を活用することで、単なる人材不足を補うという考え方から、組織では生まれにくい考え方を取り入れる、という考え方に変えていくことが重要だと考えています。 このような組織づくりは私が大好きなサッカーにも通ずる部分があるように感じています。最近の日本代表は、世界中のリーグで活躍する選手が代表戦のために集まり、チームを形成するスタイルを取っています。これは、全国、時には世界から優秀なフリーランスを集めチームを組織し、開発に挑む私たちの仕事と似た構造です。世界レベルの選手たちはそれぞれ優れたスキルを持っていますが、勝利を収めるためには、個々の力をチームのために最大限発揮する必要があります。一方で、個性の強い選手や自己主張の激しい選手がいる中、監督は彼らを適切にコントロールし、勝利へ導く役割を担います。社員であれば、集まった優秀なフリーランスの力を掛け算的に増幅し、それをまとめあげ、市場と顧客が求めるプロダクトに仕上げる「オーケストレーション力(編集力)」が必要となります。
デジタルプロダクト開発に特化したプロフェッショナル集団である「GNUS」が目指す先は?
大手企業、メガベンチャー、スタートアップといった多様な環境でのビジネス経験があるメンバーが集まる当社は、大手企業の考え方やビジネスの進め方と、スタートアップが持つスピード感やプロダクトへの価値観、開発への柔軟な姿勢を併せ持った、ハイブリッドな組織だと考えています。顧客の中心である日系大手企業の、イノベーションを実現するために不可欠な要素のひとつが、スタートアップ企業のメソッドやリソースの転用です。私たちは創業時に大きく影響を受け、業務提携先でもある西海岸のスタートアップ企業Gigsterのノウハウをベースに、大手企業が活用しやすい企画や開発メソッドを再設計してきました。大手企業のカルチャーとスタートアップのカルチャーの両方を理解する私たちだからわかるメソッドを提供できることが一つの強みです。 ただ、メソッドだけでは、デジタルプロダクトを起点としたビジネスの飛躍的成長や変革は実現できません。そのためのチーム(リソース)が必要なのです。ハイレベルなフリーランス人材ネットワークに注目したのは、それが理由です。多くの優秀なエンジニアやコンサルタントが、フリーランスとして活躍しているという流れが世界レベルで拡がっています。技術力の高い彼らを単に企業へ紹介するのではなく、一緒にクライアントのデジタルプロダクトを開発するのが、私たちのソリューションです。 従来のシステム開発の手法である「ウォーターフォール開発」だけでなく、「アジャイル開発」や最新の「AI駆動開発」などのアプローチも取り入れながら、自律したプロフェッショナルが共創的にプロダクトを作り上げていく。スタートアップの開発チームのようなチームを、大手企業のデジタルプロダクト開発の現場に導入することで、日本の大企業の事業担当者がデジタルプロダクトを企画し開発していくことができるようになること。それが私たちの使命であると考えています。