YOOI株式会社

国内最大手ゲーム会社で人気シリーズのコアスタッフを約10年務めた後、ソーシャルゲーム会社のCS部門責任者や、IT開発会社や外資系ゲーム会社で経営にも関わった木賀大介氏。大手IT企業の出身で、Webメディア会社やマーケティングサービス会社の立ち上げやマーケティング責任者を経験後、外資系ゲーム会社で取締役CMOを務めた中山和哉氏。

エンタメ業界にバックボーンを持つこの二人が出会い、立ち上げたのが、マーケティングに強みを持つデジタルエージェンシーのYOOI株式会社。同社が提供するのが、人の心を動かす「感動マーケティング」だ。設立への思いについて、中山氏は次のように話す。

「今は時代の変わり目です。組織よりも個人がマーケットの中で力を持ち、個人の意向がより反映される世界になってきているというのが、二人の共通認識でした。そこにフォーカスした新しいマーケティングが、従来とは違うやり方でできるんじゃないか。そこにチャレンジしようと考えたんです」

二人が長年携わってきたエンタメ業界、特にゲームやアニメ、アイドルといった分野においては、利便性や役に立つ・立たないではなく、「好き」「楽しい」「ハッピー」「嬉しい」という感情が行動原理となって動いている。いわゆるファンマーケティングだ。

「我々がエンタメ業界で培ってきた、人の心を動かし人を幸せにするという『感動』を切り口にマーケティングサービスを提供しようと考え、『感動マーケティング』と銘打ってサービスを提供していきます」（木賀氏）。

感動とは、単に涙を流すことだけでなく、笑うとか怒るとか、人の心が動くことの総体であるという考え方だ。そしてそれが、個の強い時代において最も合った方法ではないかと考えたわけだ。

「ファンが他の人達に魅力を伝播させたり、勝手にファンを連れて来てくれたり、といったことがファンマーケティングのメリットです。ですから、個人の人達の声をいかにそれ以外の消費者に届けるか、我々はそのための流れを作り、個人が行動しやすくするための後押しをしていきたいと考えています」（中山氏）。

ファンを明確にし、増やしていくということは、企業にとっては資産が増えることに等しい。ただ、事業会社からすれば確かに魅力的なマーケティング手法ではあるものの、すぐに売上に直結しにくい「足の長い施策」となることから、敷居の高さがある。

じゃあどうするか。そこで同社が考えたのが、企業の中の人達のデジタルマーケティング力を底上げするという方法だ。木賀氏が解説する。

「自社でデジタルマーケティングに取り組んでいるがやりきれていない、もしくはお客様のことを一番知っているのは中にいる社員のはずなのに実際にデジタルマーケティングを担っているのは外部の人だったりする、そういった企業に対してOJTを行い、コンサルティングしながら、お客様自身を育てていくのです。我々が土台をしっかり作るお手伝いをすることで、その後のデジタルマーケティングによる戦略立案の方法や予算感、勘所等も分かるようになります」

伴走型ではなく、お客様自身がデジタルマーケティングをできるようになるという意味で「自走型」のコンサルティングを目指す、というわけだ。

「そして、それをコストを抑えて提供することで、多くの企業の力になっていきたいと考えています」（木賀氏）。

同社の事業計画はそれだけではない。そうした土台づくりを進めながら、さらに二つのビジネスを用意している。

一つは、お客様に自走力が付いた状態で、お客様のサービス自体のビジネスデザインをデジタルシフトさせるためのDXマーケティングの提供だ。同社では「リデザイン」といっているが、デジタルをただ取り入れて活用するのではなく、ビジネスモデル自体をデジタルシフトさせ、既にデジタルシフトしているお客様や消費者に対応できる状態を作っていく。

「ビジネスがオンラインとオフラインを当然のように行き来しながら、どちらに出口があってもいいような戦略を立てていきます。オンラインを介することで色々な数字が取れるようになりますので、ここでデジタルマーケティングが生きてくるわけです」（木賀氏）。

そして二つ目が、デジタルマーケティングによって分かってきた消費者の動向を活用した「感動マーケティング」の提供だ。

「お客様の動きが見えてきたら、何がどうなると買うきっかけになるのか、買った人がリピートしてくれるのか、といったデータを生かして、我々の知見でより高度なマーケティング分析をしていきます。我々は『コミュニティマーケティング』と表現していますが、個人の行動を後押しすることで、ユーザーが会社を応援してくれるようなマーケティングを確立していきます。つまり、我々が当初から目指している『感動マーケティング』に繋げていくわけです」（木賀氏）。

つまり、土台づくりを作って現場が自走できる環境を整え、ビジネスモデルをリデザインしながら感動マーケティングが実践できる場を作っていく。こうした一貫したビジネスモデルが用意されている。

既に、ウェブ上での集客のための戦いは熾烈になっている。だからこそ、サービスを新しく使ってくれる人をいかに安く集めてくるか、もしくはサービスを継続して使ってくれる人の単価を上げるかがカギとなってくるだろう。「そこに応えられるのがコミュニティマーケティングです」と中山氏。

既に、大手IT企業において土台づくりのサービスが導入開始。プロジェクトの一部として、コミュニティマーケティングの活用もスタートした。

個々の力がどんどん強くなっていくこれからの時代において、コミュニティマーケティングの考え方は欠かせないものになる。そこを同社がリードしていく、そんな流れが少しずつだができ始めている。

働き方については、リモート前提で考えているという。「場所を選ばない・場所に縛られない働き方ができます」と木賀氏。その上で、裁量は非常に大きなものになると話す。

「自分でいいと思ったことを信じてやるのが私達の仕事になってくるので、自ら物事を判断し、行動して責任を取っていく必要があります。だから、一人ひとりに非常に大きな裁量を与えることになります。逆に裁量がありすぎて辛いと感じるかもしれませんね」（中山氏）。

木賀氏も、「当社での仕事は『与えられた箱を埋める仕事』ではありません」と力を込める。

それは、1メンバーに対しても「経営者的な判断」を求めるということでもある。そのために、風通しのいい経営を心掛けており、全ての情報は共有し、興味があれば経営会議にも出席してほしいと話す。「その先に、本人が独立したいと思うなら、そこも我々でしっかり支援しようと思います」と中山氏。

その時に、大企業のノウハウを持って独立し、同時にスタートアップベンチャーでの経験も豊富な二人の下で働けることは、大きな意味があるだろう。言い換えれば、そうした経験豊富なメンバーが作った土台の上で、自由に新しい会社を作っていくところに早いうちからジョインできるのは、他ではなかなか経験できない面白さがあるに違いない。

同社がこだわるのが、「Rules without Rules」という考え方。「ルールに縛られない」という意味になるが、何事もルールから入らないでほしい、ということだ。「まず何をやりたいかが先にあってほしい。そのために必要なものがあれば、それがどうすれば手に入るかを考える。そういう発想で何事にも取り組んでほしいですね」と木賀氏は話す。

「当社はまだまだ創業間もないドベンチャーです。必要なものをゼロイチで作っていけるフェーズであり、だからこそ、そこを思いっきり楽しんでほしいです。自分の思い描く働き方を、当社で実現してください」（木賀氏）。