代表取締役会長　鎌田和彦氏

まず、ご経歴をお教えください。

慶應義塾大学の学生時代から学生ベンチャー企業に関わって、イベントの企画などを手がけていました。そこでは、後に一緒にインテリジェンスを創業する宇野康秀さんと出会いましたし、ビジネスの基本も学べましたね。卒業後は、マンションデベロッパーのリクルートコスモス（現・コスモスイニシア）に就職し、偶然にも宇野さんと同期入社となりました。学生ベンチャーの頃から、宇野さんに「いずれは一緒に事業を立ち上げよう」と誘われていましたが、宇野さんの知り合いで当時リクルートに勤務していた1年上の島田亨さん、前田徹也さんの4人で入社1年目から「起業しよう」と話し合うようになったのです。そして、1989年に新卒採用コンサルティング会社として株式会社インテリジェンスを創業しました。バブル経済に乗って急成長しましたが、バブル崩壊後はピンチに陥り、人材派遣業を始めて事業を安定化させました。こうして、創業10年ほどで100億円企業にまで成長させたのです。98年には、宇野さんが父親の経営する大阪有線放送社（現・USEN）の後を継ぐことになり、私が社長に就任します。そして2000年にジャスダックに株式上場を果たしました。しかし、この会社で自分が仕事をし続けていく理由を無くしたと感じたことで、2009年4月に退任し、アート・クラフト・サイエンス（ACS）の会長に就任しました。 ACSでのビジネスの根幹は、インテリジェンス時代の経験が相当生きています。けれども、違う分野のビジネスとしてオリジナルに考えることも非常に多いですね。

ACSではどういったことを実現したいとお考えですか？

個人的には、インテリジェンスとは違うモデルのビジネスでも成果を上げたいと思っていますし、そのことを通じて社会に貢献したいと考えています。 私は最近まで、日本社会は“核家族化”が続いていると思っていましたが、そんな家族形態はもう古いと認識を改めているところです。核家族はマイナー化しつつあり、現代は高齢者だけの世帯や、高齢の両親と中年の娘との3人の世帯、さらには独居世帯などと、家族形態は分裂し変容しています。そして、所得の二分化が進み、中間層が抜け落ち始めているのです。そこで、例えば共働き夫婦として世帯年収が600～800万円の世帯でも購入できる住居が必要とされており、ACSはまさにそうした世帯が身を置くべきコミュニティに快適に住まえるよう、当該エリアに“中古＋リノベーション”のマンションを供給しています。このビジネスは、これからの時代背景の中で、確実に社会に貢献できるものと確信しています。

鎌田さんといえば、銀座のレストランの経営や、小説も書かれています。そうした本業以外の活動も楽しんでいるのは？

基本的には、「一度きりの人生、やりたいと思うことは全部やる」という方針があってのことです。しかし、最近はそういった本業以外のことをやることが散逸的ではないかと反省するようになりました。今は本業であるACSの経営に集中すべき時と自覚しています。事業が軌道に乗ればまた散逸的になると思いますが（笑）、その繰り返しですね。

そんな鎌田さんにとっての“仕事観”と社員へのメッセージをお願いします。

仕事をビジネスと捉えると、ビジネスほど面白いゲームはないと思っています。ゲームである限り、勝つことを目指しているわけですが、戦い方は自由ですし、勝てば生きていく糧も得られますから。とはいえ結構しんどい面もありますが（笑）。ACSのビジネスでは、メンバーとともにいろいろもがきつつ形にしていっている観がありますが、そのプロセスがまた面白かったりもします。 そんなビジネスで、プロとして成果を出せるようになってほしいと思っています。プロであれば、時間の使い方や服装、仕事のスタイルなどの自由度は高いほうがいいと思っていますから、当社では制度で縛るようなことはせず自律的に動いてもらっています。 そして、成果を上げて、待遇もどんどん良くしていきたいですね。