<strong>専務取締役 　安部 賛 氏</strong> 株式会社アドマテックス　専務取締役　テクニカルセンター長 1953年福岡県北九州市出身。九州大学総合理工学研究科材料開発専攻。 1981年にトヨタ自動車入社。セラミックスエンジンの開発に携わる中で、従来にはなかった酸化微粒子の製造法を考案。トヨタの新規事業立ち上げ第1号企業として、現在のアドマテックスの設立から参画。

設立当時を振り返っていかがですか？

今考えても、まさか自分がこんなふうになるとは思ってもみなかったですね。そんなつもりでトヨタに入っていないですから（笑）。 もともとはトヨタ自動車でセラミックスエンジンの材料開発に携わっていました。その際に材料の配合を間違えて作業をしてしまったんですね。本当はそういう燃え方をさせたいわけじゃなかったのに、シリコンの粉末をたくさん入れすぎたために急激に燃えてしまって、爆発してしまった。すると金属の粉がセラミックスの粉になって、非常に高温で酸化物になったものだから、気体から液体になって表面張力で丸まって、真ん丸い微細な粉末ができあがっていたんです。本当に偶然に（笑）。 従来とはまったく異なる方法で、従来よりはるかに効率的に製造できる方法を発見したわけです。

それで会社設立に至るわけですね。

これは何かに使えそうだということで、数年あたためながらいろいろと考えました。その結果、半導体用の封止材の中のフィラー（詰め物）に必要な、セラミックの粒子に適しているんじゃないかと思い、事業化が実現しました。それが1990年、信越化学さんとトヨタ自動車の共同出資という形でした。 封止材としてのノウハウや技術は、信越化学さんからいただいて、トヨタ自動車はそれを作るという形で動き始めた。けれども理屈では炉の中に原料の粉末と酸素を入れて、火を着ければ同じ反応が起こるだろうとは言えても、その生産炉の開発から始めなければならないし、偶然できたものを工業的に作るというのは本当に難しかったですね。

封止材のフィラーとして、どう優れていたのでしょう？

粒子が非常に細かいということ。球としての形が整っていること。そして無孔質で含水量が少ないのも特徴ですね。 メモリーカードがいい例ですが、デジタル機器はどんどん小型化が進んでいます。そこには半導体そのものの高集積化が不可欠です。となると一つの回路が小さくなって、配線が細かくなって、それを保護する封止材も、細かい配線のほんの小さな隙間にまで入り込んでいかなければならない。そんなところにまで入り込める大きさのセラミックの粒子というのは、他にはないです。 逆に言えばアドマファインがあるから、いろいろなデジタル機器はどんどん小型化を進めることができるんです。“Intel Inside”じゃないですが、“AdmafineInside”というシールがあったら、あらゆるものに貼られることになりますよ。

世界中の半導体に、なくてはならない存在になりました。

当時の私は30過ぎでしたけど、定年退職までに10億くらい売り上げを作れればいいかなと思っていました。それが現在既にその10倍の売り上げです。それでもまだまだ毎回、試行錯誤の連続です。樹脂に混ぜると一口に言っても、お客様が使われる樹脂も用途によってさまざまです。 ですからその素材に合わせて、表面に化学的な処理を施すことが必要になります。何が何と相性がいいのかというようなこともすべて、ひとつひとつ探しながら進んでいくわけです。 けれどもそのぶん、お客様との関係も強くなりますし、技術者のレベルも上がっていきます。そうしたことの積み重ねで、現在の技術力があるわけです。

今後の抱負をお聞かせください。

まずはより細かいものを生産できるようにしていきたいです。ナノの世界ですね。 そして粒形の揃ったものをきちんと作り、粒子の表面の制御についても、もっと研究を深めていきたいと思っています。生き物ではないですが、それでもちょっとした温度や湿度の違いでできあがりも違ってきますので、そういった管理の部分もしっかりやっていきたい。 それから、今はまだ微妙な量の調整等には人の手が必要になり、サイズをピタッとデジタル的に合わせるところまではいっていないのが現実。スイッチをポン！といれて、サイズ0.2ミクロンってボタンを押せば出てくるというのが理想的ですので、そういう意味では自動化というのもこれから研究していく部分です。 あと、今でこそ半導体関連のニーズがほとんどですが、だんだんと異業種からの引き合いも来ています。歯科関係や化粧品、研磨剤・・・。そういったデジタル以外の用途も、これからはどんどん新製品のニーズは増えてくると思いますので、やはりいろいろな分野の知見を持った方に、是非入社していただきたいと思っています。