代表取締役社長　宇田川 耀平氏 大学卒業後、証券会社に入社し証券アナリストに従事。 1990年、デュオシステムズ（現：ＩＴｂｏｏｋ）を設立し、代表取締役に就任。その後、代表の座を退くが、2024年6月に再び代表取締役に就任し、現在に至る。

2024年に再び代表に就任された背景についてお聞かせください

これまでの資本主義には、「資本家が自由に利益を追えば、市場の働きで資源が最適に配分され、社会全体が豊かになる」と考えられていました。 しかし現実には、資本が一部に集中してしまった。 そこで登場したのが、政府が社会全体を支えるという「大きな政府」の路線。 社会保障を公的に担う仕組みが整えられましたが、コストや規制が膨らみ、民間の活力を損なう副作用も生まれました。 その反動で、今度は政府の介入を減らし民間に委ねる「小さな政府」への転換が進みました。GAFAのような巨大企業が台頭したのもこの時期です。 しかし、民間の投資や取り組みだけでは限界があり、社会課題に応え切きれない現実に直面しました。 こうして現在は、政府と企業が協力して、 公共の目的と経済成長を両立させる「新しい資本主義」への移行が進んでいます。 行政のシステム標準化やDX推進支援に取り組んでいる当社は、まさにその最前線に立つ非常に良いポジションにあります。 これまでの強みに、「新しい資本主義」の視点を加え、新たな価値を創出する企業を目指し、再び自ら舵を取る決意を固めました。

今後、注力する事業領域やサービス展開についてお聞かせください

当社はこれまで、自治体におけるシステム標準化支援をはじめ、教育・防災・地域交通等、地域サービスを含む幅広い行政分野に深く関わってきました。 現場の実情を理解した上で、的確なITコンサルティングサービスを提供してきたことが、最大の強みです。 現在、国が進める「ガバメントクラウド」への移行により、自治体のITシステムは大きな転換期を迎えています。 当社は既存サービスに加え、ネットワーク運用管理補助等の新規事業を視野に入れ、 これまでのフロー型に止どまらない、ストック型ビジネスへの展開を強化していきます。 さらに、技術を“どう使えば地域社会のウェルビーイング向上に繋がるか”を考えたAIソリューションの提供や、「都市OS」と称するデータ統合サービスにも取り組みます。図書館や病院といった行政以外の公共機関にも対応領域を広げることで、地域サービスの質的向上にも貢献したい。 今後も、国の政策や社会の変化を的確に捉え、“公共×テクノロジー”の先頭を走る存在として、新たな価値創出に挑戦してまいります。

代表が大切にされている考えや価値観はどのようなものでしょうか？

1990年の創業以来、一貫して変えていないのが、「世界の平和的繁栄を導くために技術を活用し、豊かな社会生活を実現する文化を創造する」という経営理念です。 これは当社の在り方の根幹として、ITに止どまらず、科学・財政・生物化学等の多様な分野の技術を生かし、世界の平和と人々の幸せに貢献したいという思いに基づいています。 創業当時は冷戦構造が崩れ、世界が統合へ向かう希望がある一方で、新たな分断や不安も生まれつつありました。 そうした中で、技術は使い方次第で、平和にも混乱にも繋がると感じました。 だからこそ、技術を「どう使うか」を常に問い、正しい方向に活用するという信念を会社として持ち続けることが重要だと考えています。 この理念の下、行動指針として掲げているのが、「Integrity（誠実さ・高い倫理観）の追求と実現」です。どのような商業活動においても、この指針から逸脱しない判断と行動の徹底が欠かせません。 この理念と指針に共鳴する仲間を、さらに増やしていきたい。 社員一人ひとりの多大なる貢献の積み重ねが、企業の持続的な成長の源泉になると確信しています。

求める人物像を教えてください

私は「美しい心を持ち、美しいものを美しいと感じられる感性がある人」と一緒に働きたいと思っています。ビジネスにおいても、“美意識”はとても重要です。 私は、日本人のDNAにはこの“美意識”が組み込まれていると思っています。 ここまで細やかな感性を持つ民族は稀有。日本が世界と戦っていけるとしたら、それは日本人の美意識しかないと、本気で思っています。 例えば、私はピアノを弾くのですが、一つの音が、組み合わせ次第で驚くほど美しく響く瞬間があります。『なぜここでこの音？』と作曲家の意図をたどり探求していると、思いがけない発見に出会うことがあります。その時の感動は言葉では言い表せません。 ビジネスもまさに同じです。ゼロから新しいものを生むのは難しい。 でも、過去の積み重ねと成功事例をどう組み合わせ、どう生かすか。 そこに美を感じられる感性が必要です。 だから、当社では、美意識を持って事業に取り組む人、発見を楽しめる人、そして繊細な感性を磨き続ける人を歓迎したいと思っています。

働く環境や人材活用において、御社が力を入れている取り組みがあれば教えてください

当社の社員は皆、本当に優秀です。正直、代表の私が一番びっくりしています。 だからこそ、彼らがより能力を発揮できる環境づくりを徹底したいと考えています。 特に今、注力しているのが Employee Experience――すなわち社員満足度の向上です。具体的には、オンライン教育環境の整備や資格取得の奨励制度の拡充、インセンティブ賞与の導入、IT環境の拡充等を進め、社員一人ひとりが「この会社で働けて良かった」と思える環境づくりに注力しています。 また、女性の活躍推進にも本気で取り組みます。ITコンサル業界はまだまだ女性が少ないのが現状ですが、執行役員クラスに女性がいるのが当たり前という組織を目指します。今後3年が正念場。女性だからといって不利な扱いをすることなく、むしろ積極的に力を発揮してもらえるような環境を整備していきたいです。 企業としての理念や価値を高めること、顧客満足度を上げることは当然のこと。 その上で、社員満足度をどこまで高められるかが、これからの企業成長の鍵になると考えています。