株式会社BYARD

業務設計プラットフォーム『BYARD（バイアード）』の開発・提供を行う株式会社BYARD。2021年5月に設立された同社は、「社会のリソースを解放し、より自由で快適な仕事環境を創造する」をミッションに掲げ、2022年に『BYARD』をリリース。わずか1年で約50社への導入を果たした。顧客の業種は様々だが、「良い意味で想定外だったのは、誰もが知る大手企業様からの引き合いが多かったことです」と、代表取締役 武内俊介氏は語る。

同社は元々、株式会社SmartHRが行った「社長募集」に武内氏が応募することで誕生した会社である。金融系での商品開発・システム企画を経て、税理士の資格を取得し、その後コンサルタント業に転身した武内氏は、コロナ禍で一躍注目を浴びたオンラインツールや自動化ツールに対して懐疑的だった。「人が行う業務は、AI等では代替できない複雑なものの方が多いはず。業務の始点から終点まで緩やかにカバーできるプロダクトを作るべき」という結論に至る。そこで『BYARD』は、業務を“設計する”プラットフォームとして開発、リリースされた。

会社には、入社手続きや受注管理、イベント推進等、定型かつ人同士が連携し合う業務が必ず存在する。入社手続きの業務を例に挙げると、面談、内定通知、各種ヒアリング、備品手配、アカウント発行等があり、それぞれに担当者がいる。その一つひとつをカードにしてPC画面上に可視化。全担当者が画面を共有しながら、フローや業務の過不足を見直し、それまでの業務を再構築する。新しいフローで運用後、見直しが必要であればPC上でアップデート。そのまま次年度の担当者に引き継げるので、マニュアルは不要で、属人化も防げる。

今まで同社にキャリア入社したメンバーは例外なく、『BYARD』に魅力を感じている。エンジニアの大野健太郎氏もその一人だ。
「前職ではドキュメントの整理にとても苦労していました。ドキュメントが最新のものじゃない、同じドキュメントが複数ある。誰がいつ更新したか分からない。こういった環境にいた私は、『BYARD』の存在を知った時、ぜひこれを世の中に広めたいと考えたのです」

そしてこのような業務設計ニーズは、数多くの人が一つの業務に介在する大手企業に顕著であることが、リリース後の1年で明らかになってきたのだ。

想定外のターゲットが見えてきた中で、同社はさらなる拡販を目指す。その際のエンジンとなるのが、各職種の専門性の高さだ。

マーケティングによるブランディング・集客→インサイドセールスによる商談のセッティング→フィールドセールスによる導入提案→カスタマーサクセスによる顧客のオンボーディング…というのが同社のビジネスの大きな流れである。

マーケティング部門の責任者を務めるのは、MAツールのマーケティングおよびマネジメントの経験を積んだ相原美智子氏だ。
「『BYARD』の認知拡大に向けた施策立案から、メールを送るお客様のリストの入手、展示会での接客等、これまでの経験を棚卸しして、新しい市場を作っていきます」

フィールドセールスは、SmartHRから出向してきた備家祥永氏が担当。出向元のノウハウを活用しながら顧客への提案を行っている。

「これからは導入済みのお客様に対する検証にも力を入れていきます。検証をしてみて、活用範囲を広げていただく余地があれば新しいプランを提案する等、『BYARD』をサステナブルなサービスに育てていきたいですね」（備家氏）。

そしてカスタマーサクセスでは、同じくSmartHRから出向してきた鈴木高太郎氏がマネージャーを務め、プレーイングでメンバーの育成に当たっている。
「ローキャリアのメンバーは、まずは私がお客様向けに行うオンボーディングを見ながら学んでもらいます。3～6カ月後には役割をスイッチ。メンバーがフロントに立ち、私はメンバーにチャットでアドバイスを送るというフォーメーションで、場数を踏んでいくわけです」（鈴木氏）。

それぞれ専門性の高いプロフェッショナルがフロントを担っているが、同社では前職の経験にはこだわっていないようだ。マーケティングの相原氏によれば、人は誰もが“自分自身のマーケター”であり、どういう場所でどう輝くか、自分をどうブランディングしていくか、常に考えている生き物だという。

「そういう人はちゃんと意欲を持っているので、仕事に対する吸収力があるし、フットワークも軽い。ですからやれば何でも学べるはずです。何でも学んで、やってみて、そこから自分の得意を見つけて磨く、でもいいと思います」（相原氏）。

もちろん各職種の素地はあるに越したことはないが、その上で自分の場所を見つける余白が、同社にはあるのだろう。

そんなキャリアステップの余白がある同社だが、一緒に働く仲間には不可欠な要件がある。それは「自律型」であることだ。

同社はフルリモート・フルフレックスに徹底的にこだわっている。開発部門でフルリモートを導入している会社は少なくないが、同社はセールス等のビジネス部門、バックオフィス部門も全てフルリモート。東京、福岡、沖縄等、メンバーの居住地は十人十色だ。同じように、フルフレックスも全メンバーが活用している。直接会うのは四半期に一度のキックオフミーティングのみ。ちなみに開催地は毎回異なるため、社内では「旅するキックオフミーティング」と呼ばれているそうだ。

当然、同社の業務には締め切りやスケジュールがあり、求められる成果もある。しかしそれらが確実に守られていれば、いつ・どこで働くかはメンバーの裁量に完全に委ねられている。だからこそ、一人ひとりは自律型でなければならない。

「自分に与えられた役割をきちんと果たす、困った時はすぐにメンバーや上司に質問する。フルリモートは、いつも隣に誰かがいる環境ではないので、自律的にそういう動きをとれることが絶対条件になります」（武内氏）。

冒頭で、同社の「社会のリソースを解放し、より自由で快適な仕事環境を創造する」というビジョンを紹介した。このビジョンを実現するには、顧客への提案以前にまず同社が「より自由で快適な仕事環境を創造」している必要がある。だからこそフルリモート・フルフレックスに徹底的にこだわるし、メンバーに自律型であることを求めているのだ。

そして、フルリモート・フルフレックスにはもう一つの狙いがある。それは海外展開だ。ドイツやオランダで働いている武内氏の友人は『BYARD』を高く評価。「こちらでもかなり売れるはず」と太鼓判を押した。現在は某日本企業のベトナム法人で『BYARD』が導入されている。海外展開が現実味を帯びてきた時、時差も距離も超えてビジネスを進められるフルリモート・フルフレックスは強い武器になるのだ。

「通勤時間を減らしたい。3カ月おきに好きな土地に住みたい。もっと子供との時間を持ちたい。全部、人として当たり前の思いじゃないですか。自分のやりたいことを犠牲にしない働き方は、『BYARD』でしっかり業務設計をすれば実現できます。そういうプロダクトで、お客様や世界と繋がっていきたいですね」（武内氏）。