株式会社ジーナス

名古屋市熱田区にある小さなシステム開発会社が、クライアントからのニーズに応えるべく、エンジニア採用の強化を始めた。

株式会社ジーナスは、2016年の創業から現在に至るまで、自動車部品のグローバルサプライヤー「株式会社アイシン」をメインクライアントに事業を展開してきた。システム開発の世界は、意外に“ウエット”な業界で、人と人の繋がりでプロジェクトが動く。同社のケースも人の繋がりが会社の根幹を形作っている。同社の取締役である創業メンバーの亀田氏が、長年アイシンと仕事を続けてきた。

「当社は社員9名の小さな会社で、アイシンからの仕事が売上の7割を占めています。取締役の亀田が長年にわたってアイシンと取引があり、彼個人の仕事を当社が引き継ぐ形となっています。現在も、亀田がアイシンに常駐してシステム開発に関するコンサルティングフェーズから携わり、実際に案件となった開発を後方部隊である当社エンジニアが、パートナー会社と一緒に進めるワークフローで、アイシンのシステム開発全般に携わっています」（代表取締役社長・手塚幹人氏）。

クライアントと一緒に課題を抽出して、それを解決するためのシステムを考え、カタチにしていく仕事は、一般的なSES（システムエンジニアリングサービス）業界の仕事とは異なる。クライアントと直接接することができるポジションで動けるため、独自のアイデアを提案する機会に恵まれたり、開発のノウハウを社内に蓄積したりすることができる。

「インフラや業務システムの企画提案から開発・運用保守まで、ワンストップで手掛けているため、エンジニアがスキルを伸ばせる環境があると自負しています。一般的なSI業界、特にSESで働くエンジニアは、スキルアップのチャンスがなく、市場価値を高められません。そのため、年齢を重ねても収入が上がらず、技術の変化に伴う失業のリスクもあります。しかし当社では、上流工程を含め、新しいことにチャレンジする機会があるため、エンジニアがキャリアアップできます」（手塚氏）。

手塚氏はフリーランスエンジニアの経験も長く、エンジニアが個人で強みを発揮できるノウハウも持っている。市場価値の高いエンジニアを目指しているエンジニアにとって、同社で学べることは多い。

同社には、もう一つ事業の柱がある。無人搬送車（AGV）や自動倉庫等をはじめとする生産設備の制御システムの開発だ。こちらの事業は、手塚氏が積み重ねてきたキャリアが土台となっており、物流・マテハン機器の大手メーカーが提供する製品の制御ソフトウェアの開発を担当している。

無人搬送車（AGV）は、1980年代に開発がスタートし、現在では多くの工場や倉庫等で使用されている。「自動運転」や「ファクトリーオートメーション（FA）」にも繋がる技術であり、今後も技術発展が期待される分野だ。

「私がエンジニアになって最初に手掛けたのがAGVでした。現在の自動運転のように高度なテクノロジーではありませんが、長年にわたって工場や倉庫で活用されている重要な技術です。物流システム・マテハン機器の世界トップメーカーの仕事も手掛けたこともあり、私のキャリアの中心はAGVのソフトウェア開発です」（手塚氏）。

愛知県には、フォークリフトを製造する世界的に有名なメーカー『豊田自動織機』がある。これまでのエンジニア経験を武器に、豊田自動織機に営業をして同社で取引が始まった。

「AGVのシステムを導入する会社を通して、豊田自動織機のAGVのソフトウェアを開発しています。エンドユーザーは倉庫業や製造業等で、地域も四国や東北、九州等全国規模です。AGVシステム提案・設計・製造は、受託開発の一つの柱に育てたいと考えています。私が前線で開発に携わっているため、エンジニアの増員で余裕ができたタイミングで営業を広めたいと思っています」（手塚氏）。

取締役の亀田氏と手塚氏のそれぞれのキャリアが事業として、同社を支えている。どちらの事業でもクライアントから増員を要望されており、これまで個人の力を原動力にしてきた会社が、チームワークで新たな価値提供を目指す。

「会社の成り立ちが、私と亀田によるリソース共有だったこともあり、これまでの7年間は無理な拡大をせずに、既存クライアントとの関係を重視して経営してきました。しかし、クライアントからの要望もあって、会社を大きくしようと決意。2024年度は初めて新卒社員も入るため、ここから会社を拡大させていきます」（手塚氏）。

事業が好調に伸びていることもあって、会社の拡大に経営の舵を切ることになった同社。個人事業主の延長で設立された会社だけに、個の力を最大限尊重した自由なカルチャーの醸成を目指している。

働き方は、コアタイムなしのフレックス制度。出社・退社時間を自由に設定できる。月間の勤務時間をクリアすれば、1日の労働時間は自由。服装も特に規定はなく、今後も規定を作る必要もないと考えている。ただし、お客様先での作業がある場合は、お客様先のドレスコードに準拠する。そして、リモートワークもOK。

「会社に慣れるまでは出社してもらっていいですが、リモートワークは入社初年度から可能です。会社がまだリモートワークに慣れていない側面もあるので、今後入社する人でアイデアがあるならどんどん提案してください。社員と一緒に会社を作っていきたいと考えているので、新入社員の意見も大歓迎です」（手塚氏）。

完全能力給で、20代でマネージャーになることも可能。年1回の自己評価+会社査定で給与アップ。会社との面談も年2回実施して方向性の認識合わせをしている。

「年1回の自己評価と会社査定で、翌年の年収を決めます。エンジニアはプロフェッショナルな仕事なので、プロ野球選手のように活躍を翌年の年収に反映できる評価制度にしています。自己評価を基準にしている点が特徴です。自己評価から査定をスタートすることで、エンジニアが満足する評価にできると考えています」（手塚氏）。

チャレンジ大歓迎の会社なので、上流工程やマネジメントに挑戦したい人材にとっては、最適な会社といえる。しかも、マネジメントだけでなく技術を極めたいエンジニアのキャリアパスもある。お客様の課題解決のサポートや、技術の相談・提案、システム計画立案をする「ITジェネラリスト」、要件定義や計画立案、基本設計から製造・テスト・運用フォローまで、技術的な要素についても深掘りしてプロジェクトを支える「ITスペシャリスト」。二つの道が用意されている。

「当社は役職がない会社です。プロジェクトごとにマネージャーやリーダーを決めるので、あるプロジェクトでリーダーをした人が次のプロジェクトで他のリーダーの下で働くこともあります。マネージャーやリーダーは、上下関係ではなく、役割の違いだというスタンスを取っているので、マネジメント・開発のどちらも仕事にできます。一般的なシステム開発会社だとマネージャーはマネジメントしかしませんが、当社ではいつでも開発の最前線に戻れます」（手塚氏）。