株式会社デンソー

株式会社デンソーは、情報通信分野において、製品の開発・設計・製作・施工・保守を手掛ける総合エンジニアリング企業。エネルギー、通信、鉄道、放送といった社会インフラを支えている存在だ。

製品・サービス領域は、次のとおり。

●データセンターインフラ監視システム『garmit』
データセンターファシリティの状態監視、資産管理を包括的にマネジメントできるDCIM（Data Center Infrastructure Management）ソフトウェア。
装置にバンドルされているDCIMが大半の中、『garmit』はハードウェアに依存しないベンダーフリーのソフトウェア製品として柔軟にカスタマイズできる点が強み。ユーザーニーズに最適化されたDCIMとして、使い勝手の良さが大きな特徴。また、外資系ではなく国産製品としての日本語によるきめ細かいフォロー体制も、日本企業のユーザーに支持されている。
「本製品のフロントエンドエンジニアはReactも使う等、常に新しい技術を吸収できる開発環境があります」と技術管理本部データビリティソリューショングループ課長の宮田真里氏は強調する。

●データセンター・基地局
LAN回線切替装置、ネットワーク分電盤、DC-ACインバータ、リチウムイオン電池無停電電源装置等。

●コントロールルーム・監視室
IP型通話装置、通話台、自動音声応答装置、監視用操作卓、通信回線切替装置、各種監視モニタ盤等。

●サイネージ
デジタルサイネージ、多機能ポール（スマートデバイスに対応した街路灯状の多機能情報ステーション）等。

●防災・防犯
LPWA画像伝送システム、LPWA接点伝送システム、ITV装置、侵入警戒装置等。

●設備の保守・施工
4W試験電話機、携帯端末充電棚等。

同社の強みについて、経営管理本部担当部長の鉢嶺雄史氏は次のように説明する。
「競合する企業は大手電機メーカーが中心ですが、そういった大手は一般的にきめ細かな対応ができません。その点当社は、お客様の“痒いところに手が届く”サービス精神を発揮し、お客様が真に必要としている既存製品のアレンジからカスタマイズまで柔軟に対応しています」

こうした点が評価され、顧客には電力会社や通信キャリア、鉄道会社、放送キー局といった大手企業が顔を揃え、いずれも直取引を行っている。
「90名弱という規模で、こうした企業と直取引できているのは、創業51年の歴史的な信頼関係をベースとした当社のポジショニングの重要性を表していると自負しています」と鉢嶺氏は胸を張る。

同社の創業は1972（昭和47）年。創業者が電源・通信用保安器等のメーカーから独立後、数名の仲間と共に事業をスタートさせた。当初は、電力会社等に向けて、落雷から設備を守る保安装置等を販売する商社として機能。その後、装置を現場に搬入し設置、調整まで行う施工業に展開し、さらに装置の開発・設計・ファブレス製造までを手掛けるメーカーになり、現在のトータルプロデュース企業に進化する。

領域としても、当初のエネルギーから、“監視”をキーワードに鉄道、放送、通信へと広範なインフラに幅を広げてきた。そして現在は、これから尽きることなく伸びる一方のデータセンター等、IT領域に基軸を置いている。

そんな同社の社是は“創意工夫”と“人の和”。鉢嶺氏は次のように話す。
「お客様の課題に直接寄り添い、一緒になってどうすれば解決できるか創意工夫し、最適な製品を提供する。そんなマインドが強くあります」

同社の今後を占う象徴的なプロジェクトがある。沖縄県名護市が2025～2026年の確立を目指す「スマートシティ名護モデル」だ。同社は、これを推進する（一社）名護スマートシティ推進協議会のコンソーシアム参加企業7社に加わった。ほかの参加企業は、グローバルのクラウドベンダーやコンサルティングファーム、通信機器メーカー、国内大手通信キャリア、旅行会社といった顔ぶれ。今後、県内外から参加企業・団体を広く募るとともに、健康・福祉、子育て・教育、産業振興等、名護の地域課題ごとにワーキンググループを設置。コンソーシアム参加メンバーは、WG活動を通じて、名護の人や企業、まちの歴史と未来、最新技術と自然等のあらゆる地域資源と、「もっと輝く名護市を創る」という想いを持って、それぞれの力を発揮することになる。

「当社は、多機能ポール等の製品の提供だけでなく、独立系企業として参画各社を連携させていく役割も期待されています」と鉢嶺氏。まさしく“創意工夫”と“人の和”の発揮が求められる役割は同社に相応しい。本プロジェクトは、同社が飛躍する大きなチャンスとなるだろう。

2023年6月現在、同社の社員数は87名。大阪本社および大阪事業所に3分の2、東京事業所に3分の1という割合で在籍している。キャリア採用の社員が80～90%を占める、豊富なバックグラウンドを持つ人材の集まりだ。全社の平均年齢は43歳であるが、ソフトウェアやハードウェアのエンジニアが在籍している技術管理本部の現場は30歳程度と若い。

組織風土の特徴としては、顧客のニーズにきめ細かくスピーディーに“創意工夫”を持って対応するため、現場の裁量が大きいことが挙げられる。社員の主体性を重んじ、力量に応じた裁量権と責任を持って自由かつ創造的に仕事ができる環境だ。
「2代目である現社長はアメリカでの生活を10年ほど経験したこともあり、ビジネスや働き方に対して日本人とやや違う価値観を持っています。製品としては監視装置が得意ですが、社員を“監視”“管理”してはならず、社員にも“前例踏襲”を認めない、という考え方です」（鉢嶺氏）。

したがって、ワーク・ライフ・バランスにも積極的に取り組んでいる。まずはコロナ禍前から“働き方改革”を意識しリモートワークを取り入れた。
「とはいえ、当初は生産性が下がることや社内コミュニケーションの阻害、メンタルヘルスへの影響等が懸念されました。そこで、リモートワーク実施後にアンケート調査を行い、その結果を社内で共有し必要な対応策を講じました」と鉢嶺氏。これによって、コロナ禍でもスムーズに運営できた。そして、ポストコロナとなってからも引き続きリモート体制を維持していく。
加えて、2023年10月よりフルフレックスタイムの導入に向け、検討を進めている。
「働く場所や時間を問わず、極めて柔軟に働ける環境をつくります」（鉢嶺氏）。

人材育成においては、OJTが基本の中にあって、基本情報技術者や応用情報技術者等の会社指定の資格取得者に対し、一時金ではなく毎月の資格手当を支給している。そのほか、カフェテリア方式のe-ラーニングを年間3万円分受講できるポイント制度も運用している。
“人の和”を深める機会づくりとしては、コロナ禍前まで隔年で社員旅行を実施し、ハワイ等海外や国内のリゾート地を楽しんだ。
「コロナが落ち着いたので、2024年春の再開に向けて検討を始めています」と鉢嶺氏。なお、費用は社員の積み立てによる親睦会費と会社が負担している。

同社が求める人材像について、鉢嶺氏は次のように期待を寄せる。
「仕事の基本はお客様や協力会社、そして社内におけるキャッチボールにあります。したがって、不可欠のコミュニケーション力をお持ちの方にぜひアクセスしていただきたいと願っています」