イマクリエイト株式会社

XR（VR、AR、MR）スタートアップであるイマクリエイト株式会社が目指す世界は、「『XRでやってみる』が当たり前になった世の中を実現する」ことだ。それは、現実世界を時間や場所に縛られず誰もがシミュレーションできるだけに留まらない。「XRが現実をより豊かにすることができる」世界だと代表取締役 CEOの山本彰洋氏は強調する。
「VRは、現実の劣化版というイメージがあります。それは、VR等がバーチャルによって現実世界をシミュレーションするところからスタートしている影響からでしょう。しかし、私達は『XRは現実の上位互換』だと考えています。なぜなら、バーチャル技術を活用することで“体験”そのものを進化させることができるからです」

例えば、『VR CREATIVE AWARD 2019』優秀賞を受賞した同社のサービス『けん玉できた！VR』は、けん玉上級者の全身の動きをVR空間に人体モデルとして表示することで、正しい動きに自分の体を重ねながら練習することを可能にしている。しかし、けん玉上級者のスピーディーな動きをいきなりトレースすることは難しい。空中で落ちてくる玉を皿で受ける時、皿の角度をどのくらいにすればいいか見て分かったとしても、コンマ何秒というわずかな時間内で再現すること等は容易なことではない。VR空間であれば、動作スピードや玉の動きを遅くすることができ、誰でも動きを真似しやすい。また、溶接技術を学ぶにはベテラン溶接工の動きを真似ることが近道だが、現実世界では溶接用マスクや溶接時に発生する強い光によって見ることすら難しいものだ。しかし、『ナップ溶接トレーニング』サービスであれば、マスクによる視界の暗さを調整したり、強い光を消したりして手元がよく見えるよう加工することができる。

「バーチャル空間なら重力や速度を自在にコントロールできるし、動きの良しあしを即時にフィードバックすることだってできます。つまり、XRだからこそ“できなかった”ことを効率的に“できる”ようにサポートすることが可能なのです。実際、けん玉では1,128人中1,087人が技を習得できました。できることが増えるのは、とても嬉しいことですよね。その喜びを増やしていけば、人生は豊かになっていくと思うのです」（山本氏）。

近年ニーズが高まっている医療分野における事例をいくつか紹介したい。
一つは、京都大学医学部監修による『新型コロナワクチン注射用VRシミュレーター』だ。筋肉の位置が分かりやすいように可視化された患者に注射する手順を3Dモデルで学んだ後、お手本を追いながら自分で注射を行うVRトレーニングのツールである。このXRシミュレーターを使うことで、3～10分程度で筋肉注射の仕方、動きを直感的に学習することができるという。他にも、東京大学と提携して開発した穿刺手技のVRトレーニングや弘前大学と行った放射線測定トレーニング、神戸学院大学との薬学生向けの患者とのコミュニケーショントレーニング等、豊富な実績を有している。

その道のプロフェッショナルの微妙で繊細な動きを、3Dで忠実に再現するのは容易ではない。それを可能にしているのが、『XR CREATIVE AWARD 2021』最優秀賞や『Tokyo Contents Business Award』優秀賞等、数々の賞に輝いている同社の高度なXR技術だ。とはいえ、技術だけあっても“その道のプロフェッショナル”の協力がなければ、手本となる3Dモデルはつくれない。実は、プロフェッショナルが快く協力してくれる点も同社の強みになっている。
「『けん玉できた！VR』開発では、当社の社員であり全日本けん玉道パフォーマンス大会を3連覇している久保田の協力がありました。『ナップ溶接トレーニング』には、日本一の溶接工が自らの技術を注ぎ込んでくださっています。東京大学や京都大学等との産学連携で最先端のバーチャル技術の社会実装を推進することも。こういった各分野のトップランナーとの“縁”や“繋がり”がサービス開発や成長の後押しになっているのは間違いありません」（取締役 CTO・川崎仁史氏）。

けん玉から始まった「するXR」技術は、ゴルフ、溶接、医療とその分野を広げてきたが、同社が掲げる「XRが当たり前」となる世界はまだ遠い。ただ、同社の「するXR」技術が秘めるポテンシャルに期待する人や企業、教育機関は少なくなく、各方面から声が掛かっているのも事実。これを後押しに、シリーズAから拡大期へと踏み出した同社の飛躍を支える新たな仲間を求めている。

バーチャル上を現実のように動ける技術の研究・開発を通じて、現実ではできなかったことを可能にし、人ができることを広げることで、世の中に新しい可能性を提供していくことに取り組んでいる同社。その成長の原動力となっているのは、間違いなく同社の技術力だろう。だからこそ、技術を担うメンバーの「邪魔はしたくない」と山本氏は語る。
「VR機器は常に最新のものを取り揃えていますし、パソコン等の開発環境も各メンバーにとって最適なものを選んでもらうようにしています。最先端のものを体験するからこそ発想できること、分かることが必ずあるはずだからです」

以前は毎日全体会議を行っていたが、最適化を考えて現在は年に数回のみ全体会議を行っている。全員出社日を減らしてリモートワークを導入したことで、週の大半をリモートワークにしているメンバーもいれば、VR機器に触りながら開発したいと毎日のように出社しているメンバーもいる。要は、自分にとって仕事に集中できる働き方を選べるようにしているわけだ。もちろん、チームでは毎日Slackやオンライン会議等で活発に連携を取り合っている。
「自分らしく仕事に打ち込めるし、技術的に秀でたメンバーが揃っているので、技術力はもちろん、発想力や発想したものを形にする力が伸ばせる環境だと思います」（川崎氏）。

ただ、このような恵まれた環境を生かせるかどうかは本人次第だ。
「やはり、当社の事業に夢中になってもらうためにも、3D技術に興味や可能性を感じていてほしいですね」
川崎氏が求める人材像についてこう語れば、山本氏は「考えるよりも手を動かす人であってほしい」と続ける。
「先端機器や面白そうな技術を前にすると、とにかく試してみようと動き出す人が当社には合っていると思います。試す中で何かに気付き、発見して、さらに試すことで気付き・発見を具体化していける人がいいですね」
「そんな仲間と、現実よりも便利なバーチャル世界をつくり出して広めることで、世の中を変えていきたい。この思いを共有し、一緒にその実現に向かっていける仲間を求めています」（川崎氏）。