株式会社ワンズマインド

年間100万PVを誇るビジネスマッチングサイト『比較ビズ』。それを開発・運営する株式会社ワンズマインドは、2023年に設立20周年を迎えた。累計15万の企業・事業者が、『比較ビズ』で仕事を発注してきたという。名だたる大企業や大学、官公庁もクライアントに名を連ねるが、同社が設立当初から変えない姿勢は、あくまでも「中小企業を支えること」。クライアントの大半を中小企業とし、課題やニーズを的確に捉えたサービスを展開している。

同社を設立したのは、代表取締役の尾池徹哉氏。もともとITやシステム開発に関心があり、情報系の大学へ進んだという。今となってはベンチャー企業の代表格ともいえるIT業界だが、当時はまだまだマイナーな分野だった。しかし、「だからこそ、挑戦したかったのです」と尾池氏は語る。

学生時代から起業を目指しつつ、まずは経験を積もうとシステム開発会社に就職したという。業界を肌で感じ、スキルも身に付けた2003年、満を持して起業。しかし、そこまでずっと尾池氏を取り巻いていたのは、深刻な不況だった。「私の学生時代は、まさに就職氷河期。その状況は起業した頃も終息を迎えていませんでした。その中で、経営に頭を抱える中小企業をたくさん見てきたのです」（尾池氏）。そこで生まれたのが、「この世の中で頑張る中小企業を応援したい」という思いだったのだ。

「当時のIT業界では、“ITを使って営業する”という考え方は薄かったですね。一方で自社ホームページを作るという動きは盛んだったように思います。起業当初も、多くの企業からホームページ制作をご依頼いただきました。しかし当時、ホームページ一つ作るにも70～80万円ほど掛かり、中小企業にとっては決して軽い負担ではありませんでした」（尾池氏）。

そういった企業ホームページや集客サイトの制作を行うなかで、反対に、尾池氏自身がサービスを探す機会もあったという。理想は、成功報酬型で小規模の回収にも対応できる業者。しかし、これを探すのにとても苦労したと語る。

こうした中で、“仕事を任せたい企業”と“仕事を受けたい企業”が、うまく出会える場所がないことに気が付いた尾池氏。「双方がもっと気軽に使えるネットワークが必要だ」と考えたという。そこで誕生したのが、『比較ビズ』だ。

今となっては、ビジネスマッチングのプラットフォームはかなり普及している。しかし当時、このビジネスモデルはかなり革新的だっただろう。『比較ビズ』の前身から振り返ると、業界でも長いであろう18年の歴史を誇っている。

『比較ビズ』の特徴は、大きく分けて二つある。

一つは、リーズナブルな料金設定だ。まず、発注者側は無料で利用ができる。発注までの段階で同社へ支払う料金はなく、「とりあえず登録しよう」と気軽に利用可能だ。受注側における利用料も、月額15000円程度。他のビジネスマッチングサービスでは高額な月額費用や案件ごとの紹介料が必要となるが、『比較ビズ』では手軽な月額料金のみで、多くのクライアントと出会い、ビジネスチャンスを掴むことができるのだ。

二つめの特徴は、バラエティ豊富な検索機能。例えば、「3ヵ月ごとの定期決算を任せたい」という場合は、そういった税理士と契約しなければならない。「こうした細かなニーズでネット検索するのは難しいです。事業者も、特色をホームページには書ききれません」と尾池氏は話す。そこで『比較ビズ』では、事業者の“強み”を細かく表示した。例えば「飲食業界で実績多数」「中国語対応可能」などだ。強みを分かった上で、実績や人となりも一目で理解できる。わざわざ商談しなくても契約に繋がるケースが多いという。

この結果、マッチング数は累計10万件を突破。さらに、日本トレンドリサーチ実施のイメージ調査（インターネット調査／2022年7月）では、国内ビジネスマッチングサイトの支持率1位を獲得した。

さらに同社は、マーケティング力にも自信があるという。サービスを通して集めてきた市場データを、絶えず分析してきたのだ。なおデータの一部は、プレスリリースとして公表もしている。20年分の蓄積は、同社の大きな宝だ。取引する業界が広い分、さらに強固なデータとなっていることだろう。自社の事業戦略に役立てるのはもちろん、コンサルティングという形でクライアントにも還元できるというわけだ。

「当社が目指すのは、ユニクロやニトリのようなサービスです」と話す尾池氏。低価格・高品質で、“普段使い”できるBtoBサービスを提供したいという。

こうして右肩上がりの業績を作る同社は、近年中の株式上場を予定している。さらに直近では、ファクタリングや請求書発行サービスを手掛ける、株式会社Biz Forwardとの販売代理店契約が発表された。上場に向けた事業拡大は好調だ。

「昨今ニーズが広がるこのビジネスマッチングで、業界トップを目指しています。ですが、これまでと変わらず“中小企業の成長を支援する”というスタンスは変えません。マッチングサイトに限らず、他にもクライアントの役に立てるようなサービスを展開していきます」（尾池氏）。

パートナーなども含め、現在40名以上が働く同社。IT業界やビジネスマッチングの黎明期から、少数精鋭でここまで大きなシェアを広げてきた背景に迫りたい。

オフィスへ入ると、広々とした1室に全員分のデスクが並んでいた。営業部、マーケティング部、エンジニア含む制作部と、部署ごとでデスクを固めてはいるが、部署関係なく、気軽に話しかけられるような距離感だ。そして、すぐそばに社長室のドアがある。

「少数精鋭というだけでなく、ワンフロアであればさらにスムーズに意思疎通できます。さらに自社サービスを扱っているため、自分たちで出し合った意見も反映させやすい環境です」そう話す尾池氏へ、フランクに話しかける従業員の姿も見られた。

また、月１回行われるMVP制度にも注目だ。営業だけでなく全従業員が対象となり、MVPと準MVPが選出される。直近の表彰者はマーケティング部門のメンバー。自身のアイデアで、より集客率の高いCPC広告を作ったという。また過去には、商談スケジュールをうまく調整できるシステムを開発し、クライアントの満足度を上げたメンバーも。

成功までの道のりが長かったメンバーもいるだろう。しかし社内では、トライ&エラーを繰り返しながら結果を出すことが大切にされている。失敗を恐れる必要はなさそうだ。

MVP制度だけでなく、尾池氏は従業員のキャリアアップにも積極的だ。
「これから入社される皆さんにも、どんどん部署や会社のリーダーを目指してほしいです」
自由なアイデアを形にでき、会社を担っていく――。誰もが、この歓喜の舞台に立つチャンスがあるのだ。

ここまで「やりがい」の部分に触れてきたが、同社においては、「働きやすさ」も忘れてはならない。

残業は月平均7時間、年間の有休取得率は84%と、ワークライフバランスの高さも魅力だ。こうしてオンオフのメリハリをしっかりつけられるのには、二つの理由がある。まずは、自社サービスを手掛けることで柔軟にスケジュール調整できる点。もう一つとしては、社風が大きく影響しているという。「限られた時間で、最大のパフォーマンスを出す」というマインドが、一人ひとりのメンバーに刻まれているのだ。

圧倒的な知名度と満足度の『比較ビズ』をはじめ、中小企業に寄り添いながら成長を続ける同社。ここで活躍するメンバーは、日本の中小企業に革命を起こし続けるだろう。