人材&コア技術を武器に、低価格・迅速に質の高いリモートセンシングサービスを提供

同社は、日本初のリモートセンシングサービスを展開するテクノロジースタートアップである。

リモートセンシングとは、ドローンや衛星等、離れたところから物体を観察できるデバイスを使って対象に関するデータを取得。そのデータを処理・解析して地図上で表現するテクノロジーだ。
株式会社スカイマティクスは、「リモートセンシングで、新しい社会を創る。」をミッションとするテクノロジースタートアップである。リモートセンシングとは、ドローンや衛星等、離れたところから物体を観察できるデバイスを使って対象に関するデータを取得。そのデータを処理・解析して地図上で表現するテクノロジーだ。
文章としてまとめてしまうと、何やら簡単そうに思えるかもしれないが、リモートセンシングをサービスとして成立させるには、四つの高度なコア技術が必要になる。一つは、「地形データの自動生成」だ。空撮画像からオルソ画像・点群データ等の地形データを生成する技術で、本来は測量ソフトメーカー等に依頼しなければならない専門性の高い技術である。二つ目が、生成した画像の特性を踏まえて様々な手法で解析する「画像処理解析・AI」であり、大容量のデータを地図上で快適に表示・検索・動作させるには3つ目の技術「GIS(地理情報システム)」も不可欠となる。こういった技術をベースに、UI/UXとして分かりやすくサービス化する4つ目の技術「ウェブサービス、アプリ」を組み合わせて初めて、ユーザーに提供できる付加価値の高いサービスを構築できる。
「これらの技術はそれぞれ専門とする会社に委託するのが普通ですが、スカイマティクスには、4領域の技術者がそろっており、一連の工程全てを内製化しています。だからこそ、いいプロダクトを安く、早くローンチすることができるのです」(代表取締役社長・渡邉善太郎氏)。
これらの技術を結集して完成したプロダクトの一つが『KUMIKI(くみき)』だ。これは、ドローンで撮影した画像データをサイトにアップロードするだけで、オルソ画像や3D点群モデルといった地形データを自動で生成するサービスである。利用者は、わざわざ撮影現場に行くことなく、オフィスにいながらにして現場のあらゆる地形を計測できるようになる。その結果、建設会社が工事を行う際に実施する測量や盛土土量の計測等に必要な作業員と作業時間を大幅に削減できるといった効果も。ある砕石会社では、石量の体積・重量把握に必要なリードタイムを95%削減することができたという。また、『くみき』は建設業界を対象に国交省が推進している『i-Construction』の「ICTの全面的な活用」にも対応している等、広大な面積の地形データを把握して、日々調査、進捗管理する必要のある建設・林業・防災分野において、とりわけその有用性が高く評価されているのだ。
「既に700社以上のお客様に導入いただいており、プロダクトマーケットフィットしている(上記)3分野を重点的に開拓しているところです。さらに、世界展開も視野に入れ、現在海外でのテストも進めています」(渡邉氏)。
人手不足が深刻な調査・点検領域の変革に貢献する『くみき』&『いろはMapper』

主力サービスが、ドローン撮影画像から3D地形データを簡単に作成できる『KUMIKI』と、農地の作付け調査に活用できる『いろはMapper』だ。

いずれもプロダクトマーケットフィットしているサービスであり、顧客から高い評価を獲得。着実に導入数を伸ばしている。
スカイマティクスが開発した特徴的なプロダクトには、『いろはMapper』もある。これは自治体向けのソリューションであり、経営所得安定対策や中山間地域等直接支払における現地調査を省力化するというニッチな市場を対象にしたものだ。
現在、日本では農家におよそ5,000億円の補助金が出ている。それに当たり、各農家が交付金の対象条件を満たしているかどうかを調べるため、自治体やJAの職員が現地に足を運び調査を行っているのだ。実はその事務費に投入されている税金が毎年約80億円にも上っている。このような現状を変革するためのプロダクトが『いろはMapper』というわけだ。これによって、ドローンで撮影した農地の4K空撮画像をサイトにアップロードすれば、何の作物がどこで、どのくらいの面積で栽培されているのかがPCの画面上で分かる。利用者は、この解析画像を使って農家の申請内容を確認すればよく、現地へ行って数百、数千ヘクタールもの農地をいちいち確認する必要がなくなるわけだ。ある自治体では1,200ヘクタールの農地調査を180人、2週間かけて実施していたのだが、『いろはMapper』を活用することで5~10人、作業時間も70%ほど削減することに成功している。
これほど圧倒的な成果を見込める『いろはMapper』のニーズは非常に高く、ニッチな市場ではあるが大きな期待とポテンシャルを秘めたプロダクトだといえる。販売先が自治体になるため、導入予算の確保等スピーディーな展開は見込みづらい面はあるが、既に二桁の自治体で利用されており、三桁、四桁の導入数を目指しているところである。
「日本は深刻な労働力不足に陥っています。そして、人が足りなくなると真っ先に削られるのが調査・点検領域です。そのため、建設現場や農地の作付け調査、森林調査の現場では人手不足が深刻化しています。しかし、こういった調査・点検が適切に行われなければ、その後のプロデュースは何もできません。地形データがなければ何をつくれるか決められず、作付け状況が分からなければ野放図に補助金をばらまくことになってしまいます。こういった現状を下支えし、貢献できるプロダクトが、『くみき』と『いろはMapper』なのです」(渡邉氏)。
社会の黒子を、花形に変革すべくチャレンジできる人と共に!

同社には、もう一つ自社の存在価値を示す強い思いがある。それは、建設や農業、防災といった私達の生活にとってなくてはならない産業、そこで働く人達の労働環境を変革するというものだ。

ここからさらに事業をスケールさせていくには、新たな人材を必要としており、「やりたいことを明確に持ち、ミッションビジョンに共感」してくれる仲間を求めている。
渡邉氏は、2003年に宇宙業界に入り衛星画像やGISエンジンの開発等を手掛ける中で衛星画像の世界に魅了された。しかし、衛星は1基打ち上げるのに数百億円もかかるだけでなく、撮影できる範囲や時間帯に制約がある。撮影画像のデータが重すぎるため解析に時間がかかり、顧客が必要としているタイミングに間に合わないといったジレンマもあった。このような悩みに苦しんでいた時に登場したドローンに可能性を見出しスカイマティクスを起業したという経緯がある。
同社には、渡邉氏のこういった背景やリモートセンシングに対する熱量、ビジョンに共感しているメンバーが集まっている。
「とはいえ、メンバーはどちらかというと“内に秘めた青い炎”を燃やすタイプで、社内は落ち着いた雰囲気です。ベンチャーという言葉から連想しがちな華やかさはあまりなく、実直にお客様との距離を縮めて業界課題と向き合う“大人ベンチャー”といった風土が根付いています」
取締役CFO・信原淳氏が語るような社風において活躍している人材とは、どのようなタイプなのか。
「共通項があるとすれば、やりたいことが明確にあること、ミッションに共感していること。付け加えるなら、『ケタ違い』や『イノベーション体質であれ』等のコーポレートバリューを重視し、成長することに意欲的な人です。これは、そのまま求める人材像にも当てはまります」
このようなメンバーらの力を結集して、5年後、10年後には「産業版Googleマップみたいな存在になることを目指している」と渡邉氏は語る。
「利用者が意識することはないが、実はグルメサイトの裏ではGoogleマップが動いているといったように、地形データと連携したあらゆるサービスの裏で気付いたら『くみき』が動いている、作付け調査は全て『いろはMapper』で行われていたという世界をつくりたい。といっても、別に当社のプロダクトが前面に出る必要はなく、社会のインフラを黒子として支えていける存在になれればいい。だから、産業版Googleマップなのです」
スカイマティクスには、もう一つ自社の存在価値を示す強い思いがある。それは、建設や農業、防災といった私達の生活にとってなくてはならない産業、そこで働く人達の労働環境を変革するというものだ。
「こういった業界で働いている人達も社会の黒子としてインフラを支えてくれていますが、3K=きつい・厳しい・危険な作業環境の中にいることが多い。この状況をテクノロジーの力によって4K=快適・効率的・好印象・高収入に刷新し、社会の黒子を花形へ変えていきたい。このビジョンに共感し、日本初の技術とプロダクトで未来をつくることにチャレンジしてくれる仲間と一緒に、ワクワクしながら働きたいと思っています」(渡邉氏)。
もっと見るexpand_more