美容師から社会保険労務士へ。お客様へ「プラスの価値」を提供したい
今も現役の社会保険労務士として活動する代表の石山洋平氏は、元々美容師だった。「とにかく楽しいこと、ワクワクすることが好きだった」という石山氏は、美容師の仕事を楽しむ傍ら、バックパッカーとして東南アジアやヨーロッパを回っていたこともあるそうだ。そんな石山氏は20代後半の時、自身の父親が始めた「社会保険労務士」の仕事に興味を持つようになった。
「最初は、堅そうな仕事だな…と思っていました。でも、ふと“そこで僕が美容師として培ってきたサービス精神や、ユーザー目線の考え方を生かすことができたら面白そうだ”と考えるようになったんです。僕にしかできないことが、できるんじゃないかと」(石山氏)。
そして石山氏は、一念発起して資格を取得。社会保険労務士として、新たな一歩を踏み出した。ところが、思ったような手応えを感じることができない。社会保険や労災保険の手続き、事務代行を行うだけの日々に、だんだん疑問が生まれてきたという。
「社労士には、依頼されたものをミスなく確実に納品することが求められます。一番大事なことは、“マイナスをつくらない”こと。でも僕は美容師として、ずっと“プラスの価値”を提供することに喜びを感じてきた。だから、この仕事になかなかやりがいを見出すことができませんでした」(石山氏)。
社労士としての立ち位置に迷いを感じ始めていた石山氏に、ある時転機が訪れた。ある顧問先の企業から相談を受けたのだ。「病気で仕事を続けることが難しくなった従業員がいるのだが、今後の生活をサポートしてやれる方法はないだろうか…」と。社労士としてはニッチな分野だったが、「力になりたい」と思った石山氏は、リサーチを始めた。そして、“障害年金”を受給できることが分かり、申請の手続きを代行したのだそうだ。そのことが、とても感謝されたのだという。
「これほど喜んでもらえるなら、隠れたニーズがあるかもしれない」と考えた石山氏は、障害年金の手続き代行サービスを始めた。そうして、社労士の仕事を通して見えてきた顧客の課題を解決していく方向へと、業務の幅を広げていったのだ。顧客企業の人事・労務のサポートやDX化支援、一人親方の労災保険事業等にも着手。顧客からの需要が増えていき、2016年に法人化することになった。
「“社労士の仕事はここまで”という線引きはせず、お客様のニーズに応えるように事業を広げていきました。そうしたら、仕事がとても面白くなってきました」(石山氏)。
美容師時代に喜びとしていた、お客様に「プラスの価値」を提供できる手応えを、再び味わえるようになったのだ。
企業のバックオフィス部門、障がいを持つ方、一人親方…様々な人達を支える事業
現在、同社はグループ法人である「Sen社会保険労務士法人」と共に、三つの事業を展開している。
一つ目は、BtoBの「法人事業」である。こちらは顧客企業の社外人事部を請け負うサービスだ。給与計算や社会保険等の事務手続きの代行、労務相談、採用支援や就業規則、人事評価制度の作成等も担当する。また、バックオフィスの業務改善に向けたコンサルティングも行っている。
中でも力を入れているのは、人事労務関係のDX化支援だ。特にバックオフィスはシステム化が遅れており、紙のタイムカードを使っていたり、出勤簿に手書きで記入していたりと、昔ながらのやり方を続けている企業も少なくない。そうした企業へ、システム導入による業務効率の改善を提案している。
二つ目は、先ほども紹介した「障害年金事業」。病気やケガによって働けなくなったり、所得が減ってしまったりした方が、“障害年金”を申請・受給することで、生活できるようにするためのサポートを行う部署である。
三つ目は、「労働保険事務組合事業」だ。ここでは、建設業界の一人親方が労災保険に加入できる『楽々(らくらく)親方』という自社サービスサイトを運営している。この『楽々親方』の運用も、実は顧客からの問い合わせをきっかけに始まったのだという。
一人親方というのは、文字通り「一人で建設業を営んでいる個人事業主」だ。彼らは事業主なので、通常の労災保険に入ることができない。一人親方が加入できる特別な労災保険もあるが、特定の団体を通じてしか申請することができず、手続きに時間がかかるという。しかし、建設現場で働く際には、労災保険への加入を義務付けられていることが多く、困り果てた一人親方から、同社に問い合わせが入るようになった。
そんな「困った」の声を受けて、「それなら、うちで一人親方のための団体をつくろう」ということになったという。石山氏は、自社グループ内に一人親方向けの労災保険組合を立ち上げた。
しかし、それだけでは解決しない問題もあった。労災保険は、地域によって加入対象が異なるのだ。そこで同社は、全国に現場を抱える一人親方のため、広島だけでなく、北海道や東北、関西、沖縄等にも拠点を設け、どの現場に行く時も加入できる体制を整えた。さらに、「もっと安く、スピーディーに加入したい」というニーズに応えるために、ネット型労災保険『楽々親方』を開発。自社サービスサイトとしてリリースし、組合員数の増加に伴いシステムを新たに構築した。顧客のために「プラスの価値」を提供したいという、石山氏の信念が感じられた。
『楽々親方』は、業界内での認知度も高く、「建設業界に携わる人ならほぼみんな知っている」というサービスに成長している。現在、組合員数は1万人を超えているという。
広島から全国展開を目指すため、会社の「これから」を共につくり上げてくれる仲間を募集
同社は、近い将来の全国展開を目指している。そのために、「今後はシステム部門の強化が必須」と、石山氏。既に運用している『楽々親方』のほか、法人事業部や年金事業部でも自社サービスの開発を進めたいとのこと。そこには、「顧客企業が抱える課題を解決していきたい」という石山氏の強い想いがある。
「今の日本の中小企業は“人”に多くを求めすぎていて、一人ひとりにかかる負担が大きくなっていると思います。それなのに、“とにかく頑張れ”と、気合で乗り切ろうとしている企業も多く、様々な問題を生んでいる。でも業務をシステム化すれば、人の負担は減らせます。そうなれば、従業員は“人にしかできない仕事”に集中することができるし、パフォーマンスが上がって、ミスを減らすこともできる。そういうシステムを提供することで、顧客企業の助けになりたいんです」(石山氏)。
それに伴い、同社ではシステム開発の経験者を募集している。任せたいのは、自社サービスの基幹システムの開発だ。現在、同社に在籍するエンジニアは1名。新しい方を迎えて、システム専門の部署を立ち上げる予定だという。年金や労災等の知識はなくても大丈夫とのこと。「外部の開発者と連携しながら、開発を進めてもらいたい」と石山氏。また、営業やコンサルタント等の人材も同時に募集している。全国に支社を開設し、社員100名程度まで増やしたい考えだ。
働きやすい自由な職場環境は、同社の特長の一つだ。勤務時間はフルフレックスでテレワークもOK。ただし、エンジニアに関してはコミュニケーションを大事にしたいので、「仕事が軌道に乗るまでは、なるべく出社してほしいと思っています」と石山氏。社内は20~30代の若手が多く、男女比は6対4で女性の方が多め。産休や育休の取得実績もある。自由な雰囲気の中、伸び伸びと働く社員達の姿が印象的だ。
石山氏が元美容師ということもあり、髪型や服装も自由。また、「この仕事をここまでにやれ」と上から指示されることもほとんどないという。「お客様に迷惑をかけるのは困りますが、自分の仕事に責任を持ちながら、自由に活躍してもらいたいです」と石山氏は語る。
チャレンジを後押ししてくれるフィールドがあるので、やりたいことがある人や、新しいことに挑戦したいという意欲を持つメンバーが多いという。「私達はこれからまだまだ成長していきますし、新しい挑戦も控えていますので、“会社のこれからをつくっていける”楽しさがあると思っています。そこにやりがいを感じていただけたら嬉しいですね」(石山氏)。