テイラー株式会社

ERPシステムは、お客様の企業活動に深く関わっている。業務に不可欠なシステムとして、SaaS等のパッケージ化されたツールも沢山普及しているが、いざ使うとなるとシステムに合わせて業務フローを見直す必要が少なからず出てくる。この見直しは、一つのプロセスに関わる部署が多い大企業ほどハードルが高い。では、業務実態に合わせてシステムの方をカスタマイズするとなると、SE等専門家の力を借りなければならない。それはそれで時間もコストもかかってしまうため、やはり導入に躊躇する企業も多いのが現状である。

このような問題を解決する手段として、株式会社テイラーが提供するのが、ERPをローコードで構築するためのHeadless ERP基盤である。これによって、企業は自社にテーラーメイドされたERPを、自分達の手で構築することが目指せる。問題点の修正や改善も自社で可能なので、アジャイルのようにスピーディーに開発サイクルを回せる点もメリットとして大きい。

同社のサービスは、会社を設立する前の2020年から、協力してくれる企業からフィードバックをもらいつつ、機能実装と改善を重ねてきた。サービスとして成長の可能性が見えてきたため、2021年に同社を設立し、有料サービスとして提供。さらなるブラッシュアップを進めている。具体的には、広範な業務に対応できる“共通部品”を増やしている段階である。CEOの柴田陽氏は、「今はまだ、作り込みのフェーズ。お客様のニーズをヒアリングしつつ、プロダクトラインアップを増やしている」とのこと。

開発の志向性としては、ユースケースに対応することもあるが、基本的には受託開発ではないので、インフラをつくる感覚に近いという。また、開発のロードマップについては、あえて設けていない。丁寧な作り込みによって、真に使えるプラットフォームを目指している。利用しているお客様の評価は上々。プロダクトに対する期待値は投資家からも高く、日本拠点のスタートアップとしては15年ぶりとなる、世界的なスタートアップアクセラレータープログラム「Yコンビネーター」に採択された。コロナ禍によるDX推進の機運も追い風となり、世に出るべくして出てきたサービスとして、まさに飛躍の時を待ち構えている。

同社が掲げるミッションは「Empower every company to deploy any ideas 誰もがデプロイできる社会を創る」
その実現のためにも働き方を自由に選択できる仕組みを採用。その人の希望に合わせて独自のワークスタイルを一緒につくっていくスタンスを取っている。

フレックス、裁量労働、副業等、いわゆる雇用形態すら自由。例えば、業務委託の形態で、沖縄在住で働いている社員や、週1日は自己研鑽の日に充てるため、週4日勤務の社員もいる。柴田氏やCTOの髙橋三徳氏も、基本はリモートだという。さらに、それぞれの人生のフェーズに合わせて、変更することも可能になっている。「ロケーションや時間は、人それぞれの事情があると思うので、その人のパフォーマンスと、優先したい事情を尊重している」と柴田氏は自由度が高い理由を説明する。

就業時間も場所も自由な分、社員同士のコミュニケーションが希薄になりそうだが、同社は毎朝11時に「Daily Standup」というリアルタイムで情報共有できる時間を設け、繋がりを強化している。ここで対面で話し合い、相談ごとを解決できる。「基本的にはビジネス用チャットツール等でコミュニケーションを取っているが、リアルタイムに話した方が早い相談もある。その機会として重視している」と柴田氏。また、髙橋氏は「Daily Standup」は、連絡事項を伝える“朝会”ではないと説明を補足。「全社のアジャイル的な手法の一環として、前日を振り返り、今日の目標を明確にするためのもの。まさに読んで字のごとく“Daily Standup（日々の立ち上げ）”という位置付け」と重要性を語っている。

社員の育成にも力を入れていきたい考え。スタートアップしてから間もない今は、組織が小規模なため、ワン・トゥ・ワンのコミュニケーションで指導しているが、組織拡大と共に研修等の体制も整えていく。髙橋氏は、「前職でも育成に力を入れていた。その経験をもとに、オンボードのための社内説明会や、ユースケースの勉強会等も、積極的に実施したい」と構想を語っている。

プロダクトの機能追加に向けて、現在複数のプロジェクトが進行している。その開発スピードをさらに加速するため、同社は組織の拡大を目指している。また、メンバーが増えることで、企業としてのカルチャーも醸成していきたいと考える柴田氏。その指針として、三つのバリュー「Go BOLD」「ALL fo ONE」「Be a PRO」を採用。Valueを形式的なものだけにとどめず、日々の業務において意識されるべき価値判断の軸であり、採用や人事評価の最上位に位置する概念として活用できる「使えるValue」を目指してValueを設定した。

今後の事業展開については、まずは日本の商習慣に最適化したプロダクトのラインアップを増やしていくという。しかし、同社が提供するのは、バックエンドのサービスのため、ローカライズのハードルが低い。ゆくゆくはベトナム、シンガポールといったアジア圏へのサービス拡大も視野に入れている。将来的にグローバル展開に関わることになれば、貴重なキャリアとなるだろう。

また、連続起業家でもある柴田氏は、スタートアップで積むキャリアの独特な魅力もアピールする。「今まで世の中に無かったものをつくり上げる楽しさは、新規事業の比ではない。それに特化したチームをつくって、生み出すことに全てを最適化していく、非常に純度の高いものづくりと言える。それは、他の事業が上手く回ったからカバーできた、人が成長したからいい、という成果では済まされない。こんな経験を味わえるのはスタートアップだけ」と語る。

しかも、同社は、柴田氏が様々なスタートアップでの経験を経て、本当に世の中に必要なサービスを模索し、本腰を入れて立ち上げた企業だという。いわば、スタートアップのプロが、本気を出したスタートアップ。面白くならないはずはない。