株式会社ランドコンピュータ

1971年の創業以来、日本国内におけるシステムインテグレーション企業の先駆けとして、「システムインテグレーション」「インフラソリューション」「パッケージベースSI&サービス」という事業を継続・発展させてきた株式会社ランドコンピュータ。元々は、コンピューターに関する専門教育機関であった「日本コンピュータ学院」が起源となっている同社は、設立初期の時代から銀行業務オンラインシステムの開発を手掛け、現在も金融機関における業務システムの開発を自社事業の一つの柱としている。同社のこれまでの事業展開について、人財開発センター・部長代理の坊野寿氏は次のように説明している。

「50年の歴史の中、当社は継続して黒字経営を維持してきました。私が入社したのはちょうど設立10年目のタイミングでしたが、当時の規模はまだ100名程度でした。そこから現在に至るまで様々な変化がありましたが、平成の時代になってすぐの“バブル崩壊”の際には、当社の経営も大きなダメージを受けました。銀行を中心とした金融機関のシステム開発をメイン事業としてきたこともあり、収益のバランスが大幅に悪化したのですが、それでも経営を維持できたのは当社に“幅広い業界を対象にした事業展開”という強みがあったからです」（坊野氏）。

その言葉通り、同社は好況時に大きな収益を獲得できる金融業界の案件に限定することなく、公共機関、官公庁、製造業やサービス業といったあらゆる領域のシステム開発にチャレンジしてきた。そこには、経営の安定化といった視点に加え、SIer企業としての技術力発展という狙いがあったと、坊野氏は指摘している。

「“儲かる業界”だけではなく、あらゆる業界を対象に多角的に案件受託を推進したのは、システム開発における技術的なバランスを図るという意図もありました。バブル崩壊後の不況時に、百貨店等のサービス業や中央官庁等の開発案件によって収益を改善できたのは、その取り組みがあったからこそだと思っています」（坊野氏）。

経営上のリスクを分散するためにも、そしてより多様な技術をインプット・アウトプットするためにも、業界を限定しない案件受託を積極的に進めたという同社。その姿勢は、不況時の収益減少を耐えながら企業を継続させるための大きな要因になったことに加え、自社の技術的な対応力を向上させることにも繋がったということだ。現在は、医療業界向けシステムの開発、そしてパッケージシステムの製品カスタマイズや導入支援といった事業にも取り組んでいるが、長い歴史の中で経営を持続してきた安定感に加え、その対応力の多様さこそが同社の強みであり、そして最大の特徴なのだと言えるだろう。

長い歴史の中で積み重ねた実績、そして幅広い領域に対応する技術力を武器に発展を続けた同社だが、企業として今後は何を目指していくのか。自社に在籍するエンジニアの特性を踏まえつつ、坊野氏は将来的な見通しを次のように語ってくれた。

「私自身も技術者出身なので理解できるのですが、当社にはモノづくりが心から好きな人材が多いと思っています。一方で、業務でプログラミングを行う機会は以前よりも減り、ローコード開発等の手法によってシステムを構築していくケースが増えている、という現状もあります。今後もその流れは進むと思いますし、その意味ではエンジニアとしての仕事の面白味というものが変化しているとも言えます。しかし、当社の一つのセールスポイントとしてあるのが “業務理解ができるエンジニア”によって上流工程を担えるということ。システム構築に関する設計工程から関われることは、エンジニアにとって十分な面白味を感じられる魅力があるのではないでしょうか」（坊野氏）。

これまでの幅広い業界を対象にした案件受託により、ユーザー企業の業務を深く理解できるエンジニアが多数在籍していることは、DXが進む時代においては大きな強みとなるというのが、坊野氏の見解だ。金融業務はもちろん、製造業や官公庁等の業務をデジタル化していく中では、開発力だけではなくその業務の内容までを把握する人員をアテンドできることは、大きなアドバンテージになるということだ。

「今後は、AI活用や自動化といった手法も一般化していきますので、プログラミング業務自体よりもシステム設計業務の方が重要度を増していくと考えています。当社には、その上流工程においてユーザーと議論を重ねながら、本当に必要となるシステム、重要度の高いDXというものを形にしていく力があり、それが強みにもなっています。その強みをさらに生かすためにも、プログラミングの実務よりも業務の知識レベルを上げていく取り組みを、今後当社では注力していきたいと考えています」（坊野氏）。

プログラミングという業務で “モノづくりの面白味”を感じる機会は、今後少なくなっていくと予想する坊野氏。今後は、上流工程での設計業務でこそエンジニアとしての仕事の醍醐味は最大化し、直接ユーザーと開発を進められる技術力・信頼性を培ってきた同社はその最適な場を提供できるということだ。

「大手ベンダー企業がユーザーとの間に入ることもありますが、開発のそれぞれの工程における業務を直接担う中では、お客様が身近にいるという環境の中で働くことができます。プレッシャーも責任も大きなものになりますが、システム全体を見据えながら開発に携わるという面白味を、十分実感していただけるはずです」（坊野氏）。

同社が社是としているのは、創業者の田村哲夫氏の言葉でもある「こころできまる」という言葉。約40年前に入社した坊野氏は当時、技術力を売りにした企業が「心」「精神」を重視しているということに疑問を感じたというが、その疑問は入社と同時に解消されたと当時を振り返っている。

「当時から、柔らかい性格の人が多く、職場にはリラックスした雰囲気があるという当社の社風は変わっていないと思います。その社風のベースにあるのは、ユーザーに対しても、そして社員同士においても、関係性を築く上では“心で接する”という意識を大切にするという考えだと思っています。時代の流れの中で変化することも多々ありましたが、この社風や社員の姿勢は変わらず、全員が自然なスタイルで業務に取り組んでいるのが当社の特徴かもしれません」（坊野氏）。

同社の開発職には、新卒入社のスタッフに加え、異業界からの転職者や第二新卒者も多く参加している。この状況は、入社後3カ月間にわたって集中的に実施される研修プログラムがあるからこそだが、そこには“やり直し”が可能な社会で努力したいという人材を広く受け入れたいという坊野氏の思いがあるということだ。

「スタートで躓いてしまうと失敗とみなされる、失敗したらやり直しがきかない。その状況を変えたいという思いが、私の中にはあるんです。当社には、IT業界やエンジニア業務を経験したことがない人材、第二新卒者が数多く入社し、勉強を重ねながら努力を続けています。私自身、この業界での仕事に“向き不向き”はないと思っています。IT業界は面白そうという興味レベルの方はもちろん、キャリアをリセットして新たな人生を手にしたいと思う方には、やり直しの場としてこのIT業界を是非選んでほしいと思います。未経験からでも充実した教育の中でレベルアップできるので不安に思うことはありませんし、思い切って応募してほしいですね」（坊野氏）。