株式会社パシフィックネット

株式会社パシフィックネットは、PCのレンタルやデータ管理等、法人向けのITサービスを定額制で提供するITサブスクリプションサービスのトップランナー。全国7か所に拠点を構え、1万4,000に及ぶ取引先企業のIT環境構築や、DXによる生産性向上に寄与している。

ひしめく同業他社の中で同社の圧倒的な強みは、端末を貸し出すだけに留まらず、業務に必要なソフトウエアの導入や、クラウドを利用したデータの管理、使用後のデータ処分まで、IT資産のライフサイクルマネジメントに関する全ての作業をワンストップで委託できる点だ。企業の情報漏えいに対する危機意識が高まる中、同社はパソコン周りのセキュリティーを安心して一任できる希少な上場企業として、多くの顧客から信頼されている。

同社は1988年に、パソコンや周辺機器のレンタル事業を目的に設立された。使用済みパソコンの回収事業や、回収したパソコンの中古販売および卸売りにも事業を拡大し、そのために欠かせないデータの完全消去サービスも確立。売上を順調に拡大し、2006年に東京証券取引所マザーズに株式を上場、2016年には東京証券取引所市場第二部への市場変更を遂げた。

法人向けの回収・データ消去事業と、個人向けの中古パソコン販売で急成長した同社だが、2018年には全国展開していた中古パソコンショップ「PCNET」を全て閉鎖して大幅な業務転換を図り、市場を驚かせた。業務転換に至った背景を、執行役員の尾崎伶氏は次のように振り返る。

「従来のビジネスモデルでは、環境の変化に左右されやすいフロー型の収益が売上高の大半を占めていたため、会社として危機感を感じていました。将来を見据え、ITサブスクリプションサービスに軸足を移したところ、ストック型の安定した収益が得られるようになりました。新型コロナウイルスの影響下でもテレワーク関連のソリューションを提供し、安定した成長を遂げることができているので、ITサブスクリプションサービスへの事業転換は、大成功だったと思います」（尾崎氏）。

ITサブスクリプション事業の2020年5月期における売上高は21億円に上り、前期比38.3%増。2018年5月期比では74.1%増と、急成長を遂げている。社会全体にDXの波が押し寄せる中、企業の情報システム部門をワンストップでトータルサポートできる同社に対する期待は大きい。

「日本の企業で使用されているパソコンの数は3,600万台に上るといわれていますが、その中で、レンタルのシェアはまだ10%にも届いていません。企業がパソコンをレンタルに切り替えるメリットはとても大きく、これからまだまだ伸びる分野だと確信しています」と、尾崎氏は自信をのぞかせる。

DX時代の到来を前に同社が今、新たに計画しているのが、エンジニアチームの強化だ。サブスクリプションサービスで繋がりのあるお客様から寄せられる要望に、幅広く対応できる体制を整えたいと考えている。

技術部門を統括する執行役員の淺野典之氏は、エンジニアチームの強化にかける思いをこう語る。

「弊社のITサブスクリプションサービスでは、エンジニアがお客様の事業所を毎月訪問し、運用のサポートを行っています。お客様との定期的な繋がりができることで、様々な悩みや要望を聞く機会があり、ここに大きなビジネスチャンスがあると感じています。現在は、15人ほどのチームでお客様のご要望に対応していますが、数年以内にエンジニアの人数を2～3倍に増やし、提供できる技術とサービスの幅を広げたいと思います」（淺野氏）。

現在のITサブスクリプションサービスは、淺野氏らが中心となって、ゼロから立ち上げたサービスだ。エンジニアとして、新規事業の創出やチームビルディングにゼロベースから取り組める環境に、大きなやりがいを感じていると、淺野氏は語る。

「SIerとして技術を提供している企業は星の数ほどありますが、その中で、私達にしかできないようなユニークなサービスを打ち出していけたらいいなと思っています。様々な業種のお客様と関わる中で、新しい仕事を創り出すチャンスは限りなくあると思います。どんな仕事にもチャレンジできる環境で、自分の得意分野を生かしながら、新しい分野にも積極的に取り組んでほしいですね」（淺野氏）。

同社では、中古パソコンの販売事業からITサブスクリプションサービスへとシフトした際に、中古パソコンショップの店頭で活躍していた販売員の多くが、サブスクサービスを担うITエンジニアへとジョブチェンジを遂げている。接客経験があるため、顧客対応が良いと評判だ。

「私達の仲間は気さくで話しやすいメンバーが多いのですが、高い技術力や豊富な開発経験を持つメンバーはまだ少ないので、これから積極的に採用していきたいと考えています。これから新たにチームビルドができるという点にも、魅力を感じていただけたらいいですね。こんな事業をやってみたい、という提案も大歓迎。新しいチームと新しい事業を、皆で一緒に創り上げていきたいと思います」（淺野氏）。

同社では「全従業員総活躍企業」という経営方針を掲げ、人材の育成と、働きやすい環境づくりに積極的に取り組んでいる。その背景にあるのは、「社員が幸せであればこそ、顧客の幸せを追求できる」という、代表取締役社長上田満弘氏の信念だ。

社員のモチベーションを高めるために表彰制度や報奨制度を設け、誰かがお客様から褒められた時にはその情報を社内で共有する等、社員を肯定する文化が根付いている。尾崎氏は同社のことを「誰かに親切にしたら、みんなに褒められる会社」だと表現する。採用時から人柄を重視しているため、穏やかで誠実な人材が多く、分からないことがあっても互いに助け合いながら、気持ちよく働ける環境だ。

人材の育成という面においては、入社後に3ヶ月前後の研修が用意されており、同社のビジネスを一通り経験することができる。機種の選定、オペレーション、キッティング、お客様とのコミュニケーション等、業務に必要な技術と知識をじっくり学ぶことができるので安心だ。

さらに同社では、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験等、業務に関わる約40種類以上の資格取得を推奨しており、本人から資格を取りたいという申請があれば、受験料とテキスト代、合格した際のお祝い金が支給される。この制度を活用して、多くのエンジニアが日々スキルアップに励んでいる。

ユニークなところでは、レンタル用に取り揃えられている多種多様なパソコンやサーバーを、自由に使って勉強ができる点も当社ならではの魅力の一つ。スキルアップを志すエンジニアにとって、この上なく恵まれた環境だ。

新型コロナウイルス感染症対策として、出社は基本的に週に1回と定められ、それ以外は在宅勤務となっている。社内のコミュニケーションを促すため、各部署のリーダーとのOne to Oneミーティングと、小グループでのミーティングを定期的に実施し、新しい人材が入社した際には、顔合わせの場を設けるよう配慮されている。働きやすい環境づくりにも注力していて、女性社員の育休取得率は100%。育休中に子供を連れて会社に顔を出す社員も多く、アットホームな雰囲気だ。ワーク・ライフ・バランスを実現した職場環境を整えることで、社員と会社のさらなる成長を目指す。

同社は日本経済新聞が2021年4月に発表した「従業員一人当たりの営業利益額の伸び率が大きい企業」というランキングで、売上高が100億円以下の中堅上場企業のうち、堂々の首位に輝いた。大胆な業態転換を経て、ITサブスクサービスのトップランナーとなった同社に、さらなる躍進が期待される。