プランナーもエンジニアも社員全員がクリエイター
株式会社ディーゼロは、数千~1万ページ級の大型コーポレートサイトから、ブランドサイト、スマートフォンサイトやシンプルなLPに至るまで、あらゆるコンテンツに対応するWeb制作会社だ。
強みは、クリエイティブ領域をコアに、システム構築やデザイン・マーケティングなど、クライアントのニーズに応じてトータルに受託できる総合力。サイト構築に加え、運用サポートやキャンペーン企画、コンサルティング、CI、VI、ロゴマーク開発を含めたブランディングまで、事業領域は幅広いのが特徴だ。
九州の地場企業や大学、病院、自治体等に加え、首都圏の大手クライアントからのオファーも年々増えている。手がける案件は大小合わせて年間500サイトを超え、アライアンスを組む大手広告代理店各社の信頼も厚い。2018年11月には東京オフィスを開設し、新たな成長フェーズに入っている。
同社は2000年8月、「全国No.1のWebデザイン会社を福岡から」というビジョンを掲げ、Webに特化した制作会社としてスタートした。代表の矢野修作氏は当時24歳。
「つくりたかったのは、クリエイターがハッピーになれる会社。私自身がWebデザイナーとしてキャリアを積んでいたので、無理な納期に振り回されることなく、デザインのクオリティに徹底してこだわることのできる環境を実現したい、という想いが強かったのです。また当時はWeb創成期で、いち早くWeb領域で強みを確立したいという狙いもありました」(矢野氏)
設立当初から重視しているのは、「顧客とともに創りあげていく」スタンス。クライアントの要望を形にするだけでなく、課題の整理・抽出の段階からコミットして多様な提案を加え、プランニングチーム、デザインチーム、システムチームがタッグを組んでサイトの付加価値を高めていくスタイルだ。
創立20周年に関わるブランディング全般を一気通貫で受託したフォントメーカーの案件などは、同社らしい総合力をいかんなく発揮した実績の一例。Webサイトリニューアルの5社コンペからスタートしたにも関わらず、オリエン時に行った提案をきっかけにニーズが広がり、ロゴマーク制作を含むブランディング全体を同社が一手に手がけることになった事例だ。この案件を担当したのは、大手広告代理店への出向を経て2006年にジョインした黒木 洋道氏(取締役/CPO)。
「エンジニアも含め、当社では社員全員がクリエイター。職種を問わず、任された仕事に対して常に新たな提案をプラスする発想が自然と身に付いています」(黒木氏)
エンジニアリングとクリエイティブの両立を目指す姿勢も、総合力強化につながった。福岡発のオープンソースCMS「baser CMS」の開発プロジェクトに参加するなど、技術オリエンテッドのトピックも多い。
クリエイターが快適なオフィスを実現するために自らオフィスをデザイン・設計している。
「3つの部署と5つのユニット」で、重層的なチームビルディングを推進
Webサイトによる幅広いソリューションを強みとするディーゼロだが、クリエイティブ重視の姿勢は創業以来、少しも変わっていない。
「アクセス解析の技術も確立されていない時代にスタートした当社は、顧客ニーズに着実に対応しながら事業領域を広げてきた制作会社です。ブランディングやコンサルティングといった付加価値の高いスキルも磨きますが、軸となるのはあくまでクリエイティブ。樹木に例えるなら、魅力的な新しい枝葉を広げながら、クリエイティブの幹を太くしていくイメージです。Webの世界で全国No.1のクリエイティブ・エージェンシーを目指すビジョンは、今後も変わりません」(矢野氏)
福岡No.1から全国No.1へ。ビジョンの具現化を担う社員は現在約60名。特筆したいのは、個々の能力を無理なく引き出し、大きく伸ばす特徴的な社内体制だ。社内には専門部署とユニットという2軸の組織があり、社員はその両方に所属する。
専門部署は、案件プロデュースと企画プランニング、ディレクションを行うプランニング部と、デザイン全般を担うクリエイティブデザイン部、そしてフロントエンドからバックエンドまで、エンジニアリング課題をトータルに受け持つテクニカルデザイン部の3つ。職種別の横軸の組織だ。
また現在5つあるユニットは、いわば企業内企業。それぞれプランナーからエンジニアまでフルラインナップで揃えた縦軸の組織で、デザインに強い、運用に関する知見が豊富、セキュリティなど技術課題に強いというように、各ユニットに特徴を持たせている。
制作案件は原則としてユニット単位で進められ、業務の進捗管理や売上管理はユニット内で完結する。もちろん開発規模や内容に応じて他ユニットのメンバーに助力を仰ぐなど、仕事の進め方は臨機応変だ。一方、部署が担うのは教育や人事評価などのマネジメント。ユニットで日々経験値を高めながら、個別の目標や成長イメージをふまえて、中長期的な能力開発を進めるイメージだ。
「会社の成長に比例して手がける案件のレベルも上がります。少数精鋭の組織には、個々の能力を分厚く伸ばす環境があります。大きな組織のメリットも小さな組織の利点も両方生かすには?そんな発想から生まれたのが現在の社内組織です。成長チャンスが多く成長スピードも速い、理想的なチームビルディングを可能にする組織体制と自負しています。ぜひ参考にしたいと、見学に訪れる大手企業も少なくありません」(矢野氏)
クリエイターをハッピーにする会社で、幸せなクリエイターになる、という選択
柔軟な制作環境の効果か、社内ではエッジの立った個性的なクリエイターが目立つ。専門学校のWeb人材養成講座の講師役を務めるプランナーや、視覚障害者に向けたアクセシビリティ基盤委員会のメンバーなどがその代表例だが、ほかにもUI/UX設計に長けたデザイナーや、エンジニアのコミュニティを主宰・運用したり、独自にフロントエンド勉強会を企画して社内外のエンジニアに呼びかけるメンバーなど、社員の多くが自分なりの専門スキルを確立している。
「俗に、やりたいこと、できること、稼げることの3つが重なった仕事が天職、などと言われますが、クリエイターを天職にしたいと思うなら、ここ福岡ほど適した街はないと思いますね。長時間通勤とは無縁で暮らしやすく、食べ物もおいしい。スキルアップに割く時間も確保しやすく、当社の場合は優秀な制作パートナー企業とも多数、提携していて、成長チャンスも豊富です。モノづくりが好きな人、クリエイティブで勝負したい人には最高の環境で、起業時に思い描いた環境はかなりのレベルで実現できたと思っています」(矢野氏)
首都圏で磨いたスキルを地元九州で活かしたいというUターン人材、同社の制作環境で成長したいと願うIターン人材、単純に福岡に魅力を感じて首都圏から移住した社員など、多様なUIターン人材の宝庫でもある。
こうした意欲的な人材の能力を大きく伸ばす独自の仕組みや制度も豊富に用意されている。たとえば、「目標シート」に1年後、3年後、5年後の達成目標を記して行う上司との個別面談。コロナ禍の2020年は実施が見送られたが、「ベスト・オブ・クリエイティブ賞」などの「ディーゼロアワード」も、社員のモチベーションを高めるイベントとして定着している。
また、自ら手をあげる意欲は高く評価される。参加したいカンファレンスや勉強会、スキルアップに役立つツールや書籍なども、申請すれば費用サポートが受けられる。開設まもない東京オフィスも「東京で視野を広げたい」と志願したメンバーで占められている。
「これからも当社は、東京や世界に出ていくのではなく、東京や世界に福岡・九州を見てもらう視点を大事にしていきたいと考えています。そのため、すでに大分で稼働しているコーディング専門企業を皮切りに、九州各県に特徴的なクリエイティブ企業を展開して、九州という単位でクリエイティブ色を強めていく構想もあります」(矢野氏)
クリエイターが幸せになれる会社で、幸せなクリエイターになる。この選択に魅力を感じる人は一度話を聞きに行くことを強くおすすめする。