高度な堅牢性や厳重な安全性が求められる金融業界のインフラが得意。独自サービスも
システム開発会社の、株式会社ワンズパワー。インフラ構築や業務システム/アプリケーション開発プロジェクトにおいて、“超上流”のサービス仕様・要件定義やプロセス改善、ベンダーコントロールなどのコンサルテーション/マネジメント業務から、設計、構築・開発、保守・運用までをトータルに手がける、ITのマルチプレーヤーだ。
特に強みとしているのは、金融業界のインフラ構築。大手SIerや金融業界専門のSIerと組み、エンドユーザーのオフィスに常駐するSESの形で当該業務に取り組んでいる。
金融機関のシステムには、高度な堅牢性や厳重なセキュリティが求められる。そこで、例えば決済サービスにブロックチェーンなどの先端技術を活用。また、不正検知にRAPID機械学習、審査に異種混合学習技術、窓口業務にAWS+チャットボット、アンケート集計にテキスト分析技術を活用するなど、AIを用いたソリューションも手がけている。
一方、受託開発にも力を入れている。特にコロナ以降は、「リモートで開発業務を行いたい」というエンジニアのニーズに応える狙いもある。目下、建築会社の工程管理システムを開発中だ。
さらに同社は、広範なユーザーに適用できる自社サービスの「ReWebホスティングサービス」と「ウド支援」も提供している。
「ReWebホスティングサービス」は、高機能CMSを導入し、コストやセキュリティを犠牲にしてリッチにしたWebサイトを、CMSを使用することなく堅牢かつ低コストで運営できるように改善するためのホスティングサービス。
「ウド支援」(クラウド)は、オンプレミス環境に構築したWebサイトを、そのままAWSやAzure、GCPなどのクラウド環境に移行するサービス。クラウド選定・設計、リストア・バックアップ設計、対障害性向上などの必要業務をパッケージにして提供している。
「いずれも、金融機関の業務で培った知識やスキルをベースに、インターネットを安全かつ効率的に活用できるようにするためのサービスです。これらのサービスで、クライアントの裾野を広げることも意図しています」とゼネラルマネージャーの小林雄一氏は説明する。
SESと受託開発を経営の2本柱に。システム開発以外の事業も視野に
同社の創業は、2008年10月。大手ICTベンダーの業務を手がけるシステム開発会社を経て、フリーランスのエンジニアとして活動していた小林氏が、SIerと直取引を始めるに当たって設立した。
「当初は自分一人で頑張るつもりだったので、『One’s Power』という社名にしました。ポリシーとしたのは、飽くなき探求心を持って新しい技術を吸収し続け、常にベストなアウトプットを生み出すこと。それと、自分の技術を提供することで、世の中のネット環境をより安全なものにしていくことも意識しました」と小林氏は言う。
そんな姿勢が認められ、セキュリティが重視される金融業界のプロジェクト案件を依頼されるようになり、メンバーを増やしていく。
「今も、メンバーに対しては『新しい技術や知識を貪欲に吸収する努力を忘れないでほしい』と常に話しています。我々はサービス業であり、お客様に喜ばれることがすべて。お客様から言われたことだけに唯々諾々と従うのではなく、吸収した技術や知識でよりよい改善策やお客様が気づかない問題点を提案・指摘してほしいと要望しています。そんな意識がカルチャーとして定着してきましたね」(小林氏)
今後のビジョンとしては、短期的には受託案件を増やしてSESとの二本柱にすること。その先に、アイデアやチャンスがあれば、自社サービスづくりにも着手する。そして、「中長期的には、システム開発以外のビジネスにももっと取り組んでいきたい」と小林氏。
同社はすでに「ART INCUBATOR」事業をスタートさせている。これは、イミテーションではなく作家の本物の作品を企業などにレンタルするサービス。作品は同社がセレクトし、額装して2カ月ごとに入れ替えるというものだ。
「当社は、メンバーがやりたいことの実現を大きな方針に掲げています。そこで、あるメンバーから『小林さんは何がやりたいの?』と問われたことを機に、このサービスを考えました。当社はこれまで、“企業とエンジニア”“新技術とクライアント”といったマッチングに取り組んできました。そこで、私が関心のある“アート作品”を企業にマッチングすることを思いついたわけです」と小林氏は説明する。
こうした幅の広さや柔軟性が、同社の一つの魅力といえるかもしれない。
月1回の1 on 1でメンバーがやりたいことを確認
2020年10月現在、同社では11名の社員が5カ所の現場に分かれて業務に取り組んでいる。高度な技術力を身に着け自律できるエンジニア揃いで、プロジェクト現場に1名で加わるケースが多い。そうした事情もあって、毎月定例会を開いて各現場の状況などを共有しているほか、小林氏は月1回のペースで全メンバーと1 on 1を行っている。
「自社オフィスならば毎日顔を合わせますから、月1回でも少ないくらいだと思います。状況確認や今後の課題だけでなく、プライベートの状況を聞いたり顔色を見て、心身のコンディションもチェックするようにしています」(小林氏)
そして、話し好きの小林氏は、1 on 1では現在の仕事のことだけでなく、メンバーがやりたいことを必ず聞くという。そこから、新規事業のアイデアを見つけるためだ。
「例えば、農業をやりたいというメンバーがいれば、必ず会社としてどう関われるかを考えます。このように、メンバーがやりたいことに対して極めてポジティブかつ柔軟な姿勢があると自負しています」
人材育成としては、「メンバーの学習に対する投資は厭わない」と小林氏は話す。また、日常的なメンバーによる業務報告の際、背景を含めて端的に説明するスキルや、より伝わりやすい話し方といったヒューマンスキルも意識的に指導しているという。このスキルがPMO業務に活かせていることはいうまでもない。
現在はまだ11名の組織であるが、「今後100名、200名となってもヒエラルキー型の組織をつくるつもりはない」と小林氏。志向しているのは、フラットなティール型組織だ。現場のエンジニアの中で、リーダー志向や能力のある者が一定のサイズのチームをまとめる“役割”を担う程度の管理形態である。
「課長や部長といった管理職と現場の作業者を明確に分けるような組織は、日本的ではないとの思いがあります。あくまでもプレーヤーが主体のチームとして、全員が協調して一つのミッションに向かうといったイメージです」(小林氏)
メンバー同士の親睦を深める機会としては、コロナ以前は毎年、全員でスノーボードを楽しむといったイベントを行っていた。「メンバーの要請もあり、コロナが落ち着いたら再開したい」と小林氏。
そんな同社が求める人材像として、小林氏は次のように話す。
「明確なテーマがなくても、何かやりたいという思いがある人。そういう思いさえあれば、やりたいことを見つける手助けができます。当社は、何かやりたいと思っている人たちの集団なので、入社すれば一斉に『何をやりたいの?』と聞かれるでしょう(笑)。それにポジティブに応えられれば、当社に馴染めると思います」