欧米スタートアップのブランディングを支援。スタートから100%、グローバル市場でビジネス!世界20,000件以上の実績
株式会社ZeBrand は、世界唯一のブランドツールキットを生成するWebサービス『ZeBrand』の提供を通じて、スタートアップのブランディングを支援している会社。創立95年の歴史を持つ国内最大手フォントベンダー・株式会社モリサワの新規事業としてスタートし、2019年10月にグループ企業としてスピンオフした。ZeBrand Inc.という米国企業としての活動がメインであるが、役員および社員は全員日本人で、日本法人に在籍し米国法人を通じて業務を行っている。
『ZeBrand』は、ユーザー企業の企業名や事業領域、ミッション、ビジョン、バリュー、ロゴなどをインプットすると、独自のAIアルゴリズムがその企業にマッチしたカラーやタイポグラフィー、ビジュアル(写真)からなるブランドツールキットを提案する。既存のロゴを修正するエディット機能もある。
こうしたブランディングの要素づくりという難しい作業を、身近にデザイナーがいなくても誰でも手軽に行うことが可能だ。フリーミアムとしてブランドツールキットは無償で提供し、ブランドガイドライン、ソーシャルメディアアセット、プレゼンテーションテンプレート、Webサイトテンプレートなどを有償で提供する。
さらに、今後はブランディングをフォローアップするエデュケーションコンテンツもリリースしていく。ちなみに、プロダクト開発にはニューヨークのブランドエージェンシーなどで活躍した米国人メンバーがジョインしている。
『ZeBrand』が対象としているユーザーは、ニューヨークを中心とするアメリカおよびヨーロッパ、オーストラリアの2~10名のスタートアップ。2020年1月現在、20カ国以上の約2万3000社が利用している。
欧米市場からスタートさせたのは、全世界に展開させていく上で、まずは最もデザインリテラシーの高い層に使われ、同社自身のブランディングを確立させる狙いがある。「日本市場は、引き合いが多くあれば検討する」と菊池氏。ここに、日本のスタートアップには稀有な戦略性があるといえるだろう。
「我々は“Brand your way”というブランドパーパスを掲げています。そこには、次のような思いがあります。スタートアップが成功するためには、創業者は何より重要なビジョンやミッション、バリューをメンバーにしっかり伝え、チームビルディングを万全に行い、迷わずに突き進める環境づくりが必要となります。その手段として、ブランディングが極めて有効なのです。
一般的なブランドガイドラインにビジョンやミッション、バリューを加えることはほとんどありませんが、我々はそれらを加えることで、チーム内に共通認識を生むことを意図しています。そして、我々はあらゆるスタートアップが自分らしさを表現し、認められる世界をつくりたいと考えています」と、創業者でCEOの菊池諒氏は説明する。
国内最大手フォントベンダー・株式会社モリサワの新規事業としてスタートし、2019年10月にグループ企業としてスピンオフした。
2025年までにユニコーンを目指す
同社が設立された背景には、モリサワの経営課題があった(「インタビュー」タブ参照)。菊池氏は次のように説明する。
「モリサワは国内トップシェアを誇るフォントベンダーですが、グローバルでは認知度が低かったのです。しかし、GoogleやAdobeというグローバル企業がフォントも手がけている中で、グローバルに成長していくためには、新たな柱となる事業をつくる必要がありました」
全米最高の美術大学にランキングされ“美大のハーバード”と称されているロードアイランド・スクール・オブ・デザイン。海外留学制度を利用し同校で学んだ菊池氏は、留学中にニューヨークのデザイン界にネットワークをつくっていた。そこで、経営陣に現地調査を申し出る。
①ニューヨークのデザインスタジオやブランドエージェンシーでは、フォントやタイポグラフィーはどのように使われているか
②今後のアメリカを担うデジタルネイティブのジェネレーションZ層には、どんな価値観や行動特性があるのか
という2軸でリサーチし、その結果から『ZeBrand』に繋がる事業の方向性を抽出。経営陣にプレゼンテーションし、新規事業として立ち上げることを認められたのだ。こうして2017年10月、モリサワ社内に新規事業部門として「MORISAWA BRAND NEW Lab」を設立する。
菊池氏は、まずチームメンバーを厳選し、事業ドメインを決める作業とともに、5つのコアバリューを定めた(後述)。
「以前、モリサワのクレドを定めるプロジェクトに参画した際、“Amazonがどうしても欲しかった企業”として有名なアメリカのEC企業であるZapposなどを調べたのです。同社はコアバリューを極めて重視し、採用や評価、意思決定に徹底しています。そして、同社のメンバーは皆、自分らしさを発揮してイキイキ楽しそうに働いているのです。それが同社の急成長をもたらしており、コアバリューの重要性を再認識しました」
いくつかの紆余曲折を経て、2018年8月にブランディング市場への集中特化を決定。事業構想とWebサービス開発に半年間かけ、2019年2月、β版のミニマムビアブルプロダクトとして『ZeBrand』をリリース。3月には、米国オースティンで開催される最先端テクノロジーの祭典「South by Southwest」に出展し、好感触を得る。その後順調にユーザーを増やしていった。
2019年10月、モリサワから大半の出資を得てスピンオフし、米国法人と日本法人を設立。その理由を、菊池氏は次のように説明する。
「モリサワは100年、200年と永続することを目指す企業。一方、我々はあらゆる人たちにブランディングを届けるために急成長を必要としているチームです。モリサワとは方向性も考え方もカルチャーも異なる。ならば、別会社化すべきと考え、モリサワの経営陣にも理解してもらいました」
ZeBrandは、2025年までに評価額10億ドル以上のユニコーンとなることを目指している。
5つのコアバリューとホラクラシー組織による、完全自走型のチーム一体運営
2020年12月現在、同社の社員は11名(平均年齢30歳)。そこに外部のエンジニアが加わり、内製の開発チームも設けている。
このチームを一つにする5つのコアバリューは、次のとおり。
●We add value / 新しい価値を提供する
●We are one family/ 仲間を思いやる心、自分よりも相手を大事に思う
●We have fun / 楽しめることをやる、楽しみながらやる
●We learn from failure / 失敗から学ぶ、失敗を恐れない
●We keep growing / 成長し続ける、厳しい道を選ぶ
「“Brand your way”は不変ですが、コアバリューは新メンバーが加わるたびに、全員にコミットできるかを再確認し、必要に応じて更新しています。というのも、我々の考え方や価値観は変化するからです。我々は、メンバーが自分らしい生き方、成し遂げたいことを尊重するとともに、それが会社として目指すべき方向性と必ず一致している状態を最重視しています。つまり、全員が全員の夢の実現を応援し合うカルチャーをつくっているのです。その方法論が5つのコアバリューであり、これに賛同することがメンバーとなる絶対条件です」
と菊池氏は話す。
その上で、一人ひとりの業務領域を決め、最大限の権限を付与するホラクラシー組織を導入。プロジェクトマネージャーという“役割”はあっても、“上下関係”はない、というスタイルだ。
「責任は代表者の自分が取るから、メンバーは意思決定をしてほしいと言っています。私からすれば、プロダクトの開発やUI・UXはいつの間にかできている、という状態。完全に自走型の組織ですね」(菊池氏)
オフィスは、渋谷の最新ランドマーク、スクランブルスクエア内のWeWorkに設けている。
①モリサワ社内にいると雑音に影響されるので、物理的な距離を取ってイノベーティブな環境をつくる
②業界の枠を超えた企業やパートナーとのネットワークが構築しやすい
③情報感度の高いユーザーが多く、メディアに注目されやすく露出機会に繋がる
という3つの理由による。
「毎日のように、みんなでお弁当を買いに行って、WeWorkの共有スペースでみんなでおしゃべりしながら食べています。ほかの企業の人から、『こんなに仲のいい会社は見たことないよ』って言われてます(笑)」(菊池氏)
コアバリューに賛同し、カルチャーフィットする人材を何よりも求めている同社。全く新しいサービスづくりを通じて自己実現を図りたい人は要チェックだろう。