「思い出づくりのお手伝い」をモットーに、心を込めた菓子づくり
株式会社鼓月(こげつ)は、京都市伏見区に本社を置く京菓子メーカーだ。日本全国に直営店や百貨店インショップを69店舗運営(※1)しているほか、オンラインショップでの販売もおこなっている。
代表的な商品は、京銘菓「華」、「千寿(せんじゅ)せんべい」、「姫千寿せんべい」、「万都の葉(まつのは)」、「京の離宮」など。代表銘菓の「華」は、バターやミルクといった洋風素材を取り入れたことで、1963年の発売当時は業界で異端的な評価を受けた。しかし、顧客には「おいしい」と受け入れられ、今日まで愛され続けている。
また、「千寿せんべい」は鼓月の一番の人気商品で、京都の手土産トップ10の評価も得ている。
鼓月の歴史は、1945年(昭和20年)まで遡る。戦争で夫を失った創業者・中西美世氏は、仕事もお金もなく、幼い子供を抱えて途方にくれていた。そんな時、物置でひと缶の黒砂糖を発見。「お菓子を作るんや。戦争で疲れた人たちのためにも。生きていくためにも」と決意を固め、黒砂糖は米などに交換せず、菓子づくりの材料をかき集めては手づくりのお菓子をつくり、自ら売り歩いた。物がなかなか手に入らない時代、前向きに、ひたむきに歩み続ける姿勢は、今日の鼓月にも受け継がれている。
その後、中西菓舗として産声を上げた小さな菓子舗は、1953年(昭和28年)に法人化。昭和30年代以降は、直営店のほか百貨店、駅ビルなどへの出店を加速していった。1977年(昭和52年)には大阪進出を果たし、1987年(昭和62年)には名古屋、1992年(平成4年)には東京へ出店。その後も、北海道、東北、関東、関西、中・四国、九州と店舗網を広げていった。その勢いはとどまるところを知らず、2016年(平成28年)には台湾へ進出した。
現・代表取締役社長を務める中西英貴氏は、1971年(昭和46年)、京都市の出身。明治大学商学部を卒業後すると、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)へ入社。その後、祖母である美世氏が創業した鼓月に入社し、2005年(平成17年)に代表に就任した。
※1 2018年1月時点
‟ふたくちサイズ”の姫ケーキ
コンセプトとした京都洋菓子工房 KINEELを展開
他にないチョコレートを作るベルギーのショコラティエMarijin Coertjens(マレーンクーチャンス)と提携しチョコレート事業を展開
和菓子の安定した売上を背景に、「より大きな夢」にチャレンジ
鼓月は、伝統ある京都の菓子業界の中で、「トータル・スイーツ・カンパニー」を標榜している。
鼓月ブランドのほかにも、ケーキやフィナンシェ、マドレーヌなどを扱う「京都洋菓子工房 KINEEL(キニール)」や、どら焼きを専門に扱う「京菓子処洛心館(らくしんかん)」など、和菓子のみにとらわれない展開をおこなっている。
さらに、“ベルギーチョコレートマスターズ”で連続優勝の快挙を達成した、ベルギーのカリスマチョコレート職人、Marijn Coertjens(マレーン クーチャンス)氏と提携し、チョコレートを販売している。また、台湾の百貨店に出店するなど、「日本のスイーツ」の価値を海外に広める取り組みもおこなっている。
店舗数69店舗のうち、26店舗が直営店だ。地元・京都での直営路面店の売上は、業界トップクラスの水準を誇る。路面店から立ち上がった会社だけに、直営店を大切にする運営方針は今後も変わらない。百貨店などインショップ形式の店舗は、43店舗となっている。直近の売上高は42億円ほどだが、この規模でこれほどまでに店舗展開している菓子メーカーは珍しい。
今後の鼓月は、「夢あるお菓子づくり」を通じて、京都から世界へ豊かな菓子文化を創造・発信していく。同時に、お菓子の製造・販売という枠を超えて、多方面で展開していく方針だ。発売から半世紀以上にわたり愛され続ける「千寿せんべい」などのアイテムを持つ鼓月は、年間を通して売上高の波が小さい。固定客が多く景気の変動にも左右されにくいため、財務基盤は非常に安定している。鼓月は「大きな夢」をカタチにするべく、さまざまな事業にチャレンジし、さらなる飛躍を目指す。
寺町二条に「京都洋菓子工房 KINEEL」をオープン
2013年には、隣接地に千寿せんべいの新工場を竣工
フットワーク軽く、アイディアを具体化していくECサイト担当者
保守的な和菓子業界にありながら、フットワークの軽い社員が多いのが鼓月の特徴。常に新しいことに取り組む社風で、自ら考えて努力し行動すれば、たとえ失敗しても応援する風土が根付いている。企画などのアイディア出しで煮詰まった時は、実際に店舗に足を運び、現場の生の声を拾い上げることも大切にしている。
1ヶ月あたりの平均残業時間は、10時間ほどと少なめ。主な福利厚生は、各種社会保険完備はもちろん、団体保険、退職金制度(日本版401k)、社内預金制度、社員割引制度、慶弔見舞金制度など手厚い。クラブ活動を補助する制度があり、現在はソフトボール、サッカー、テニス、スキー、卓球、サイクリングなどが活動している。社内イベントは総会や運動会、旅行、食事会などがあり、運動会は家族も参加できる。
従業員の満足度向上を目的に、全従業員を対象としたMVP投票をおこなっている。2019年度のMVPは、多くの店舗と信頼関係を気付いた営業マネージャーが受賞した。鼓月は数字に表れない部分も多面的に評価しており、準グランプリは後輩指導に精力的に取り組んだ製餡課の職人や、物流部門の担当者が受賞した。
今回の採用では、ECサイトの運営担当者を想定している。同ポジションの募集は、鼓月としては初となる。チームは少数精鋭のため、一人あたりの仕事の範囲は非常に大きい。ECサイトの構築・運営はもちろん、戦略立案、新商品/新サービスの企画などにも参画する。主体的に動き、新しいことをやってみたいという人には、とても魅力あるポジションだ。