目標は、日本で最初に思い浮かぶ「個性的なゲームをつくる」会社
ふんどしパレード株式会社は、スマートフォン向けゲームを企画・開発・運営している会社だ。受託開発は一切おこなわず、自社タイトル100%。会社設立は2015年12月で、本社は東京・新宿にある。代表取締役は北迫宏一郎氏と山田裕希氏の2名で、株式会社スクウェア・エニックスでは同じチームで働いていた同僚だった。
会社員当時、2人は「大手では創作意欲が満たされない」という不満を抱えていた。理由は開発規模にある。1つのゲームをつくるチームは数十人~数百人規模で、自分が担当できるのはゲームの中のほんの一部分のみ。クリエイターとしての創作意欲が満たされるような環境ではなかった。
2人は創作意欲を満たすため、会社に勤めながら個人活動をスタートした。北迫氏は趣味でオリジナルキャラクターを使ったLINEスタンプ(真顔で追いつめるスタンプ)を作成し、これがヒット。会社を辞めて独立した。ちなみにこのスタンプのキャラクターは、ふんどしパレードの主力タイトル「君の目的はボクを殺すこと」シリーズの主人公になった。山田氏はiPhoneアプリの開発に取り組み、ゲームやツールアプリを多数リリースした勢いで、会社を辞めて独立した。
独立後、旧知の仲であった2人は再会し、「一緒にゲームアプリをつくろう」と意気投合。「君の目的はボクを殺すこと」の開発がはじまった。このゲームは100万DLを超える予想外のヒットとなり、本格的にゲーム開発をするため、ふんどしパレードを共同設立した。
会社設立後も、3年間は2名体制のままだった。会社員時代の職種は2人ともプランナーだが、独立後はデザインもプログラムもすべて2人で担当。ビジネス的な成功も手にし、少人数での中規模ゲーム開発に大きな可能性を感じた2人は、創業4年目から人材募集を開始した。しかし、大作ゲームをリリースするような大企業になるのではなく、少人数の開発チームがいくつも存在し、個性的なゲームを次々に生み出せるような“クリエイター共同体”を目指している。
独りよがりの個性ではなく、“広がりと継続性”のあるゲームづくり
ふんどしパレードの主力タイトル「君の目的はボクを殺すこと」(AppStore/GooglePlay)は、基本プレイ無料のゲームアプリだ。ターゲットは日本が中心だが、アメリカ、韓国、台湾などにもユーザーを抱えている。売上高の推移を見ると、設立初年度から2年目にかけて6倍の急成長を遂げ、その後も毎年1.5倍の成長を継続。ちなみに、マーケティング費用や採用費用などは、すべて自社タイトルの売上からまかなっている。
市場では、個性あふれる中規模ゲームの開発に特化している会社として位置づけられている。中規模ゲームとは、カジュアルゲームと大規模ゲームの間に位置するポジションで、飽和したスマホゲーム市場にありながらライバルが少ない。また、中規模ゲームは少人数での開発・運営が可能で、ユーザー側も気軽にプレイを試してみやすい特徴がある。それでいて、予算をかけてのマーケティングや、長期運営を継続できるだけの収益性も兼ね備えている。
最新作「君の目的はボクを殺すこと3」は、全世界で400万DLを突破した。シリーズ作品なのに1の次が3という謎だらけの設定や、話題になった「後払いガチャ」、ユーザーと運営側がゲーム内SNSでコミュニケーションを取る独自の運営スタイルなど、個性的なアイデアが詰め込まれている。基本無料だがビジネス的にも成功を収めた理由は、ゲーム内の課金収益と広告収益の両方でマネタイズする“ハイブリッドモデル”にある。売上が安定しやすいので、「スマホゲーム事業=不安定」という課題解決につながった。
今後の展開としては、主力の「君の目的はボクを殺すこと」シリーズの新規タイトルはもちろん、まったく新しいシリーズも立ち上げていく予定。また、少人数の開発チームを社内に数多く抱える組織づくりを進め、テイストやターゲットの異なるゲームや、海外市場を狙ったタイトルなどもリリースしていく。その結果として会社全体としての多様性を広げ、さらなる会社・事業の拡大につなげていく。
規模拡大と新作開発に向けて、ゼネラリストクリエイターを育成
ふんどしパレードが目指す“少人数開発によるクリエイター共同体”には、以下の3つのメリットがある。1つは、クリエイターの創造性をダイレクトに発揮しやすく、成熟したスマホゲーム市場でも埋もれないような、個性あふれる作品を生み出しやすいという点がある。2つ目は、開発・運営コストが安いことだ。大手のような大ヒット狙いの挑戦をしなくて済むし、大赤字の心配も少なく、黒字にもしやすい。
3つ目は、人数が少ないぶんコミュニケーションコストが低く、開発期間の短縮が可能である点だ。ゲームのヒットを確実に予想することは不可能なので、リスク分散のためリリースサイクルを早くして、チャレンジ回数を増やせる。この3点は「スマホゲーム事業=不安定」という課題を克服するポイントでもある。
今回の採用では、ゲーム会社で数年以上の経験がある、中堅クリエイターの採用を想定している。具体的には、ある程度の経験を積んで実力をつけたものの、大きなゲーム会社では自分の創作意欲が満たせないという、クリエイター志向の強い人材だ。代表の2名もまさにこのタイプ。ふんどしパレードでは、人材市場では珍しい、いわゆるインディーゲームクリエイターなども戦力として加わっているほか、個人開発者など大手ゲーム会社に属さないタイプのクリエイターにも期待している。
採用ポリシーは、“ゼネラリストクリエイター”の採用・育成だ。大手ゲーム会社は開発組織が大きいので、一つの役割に特化したスペシャリストクリエイターが役割分担して開発にあたる。同じデザイナーでも、UIデザイナー、エフェクトデザイナー、モーションデザイナーなど細かく分かれているのが、そのわかりやすい例だ。一方でふんどしパレードは、一人で何役もこなせるようなゼネラリストクリエイターの共同体を目指す。スペシャリスト中心の大手では開発工程を少人数でまかなうことは難しいが、ふんどしパレードでは少人数での開発が可能なので、他社との差別化に一役買っている。