社員がプロジェクト、ポジションを選べる仕組みで黒字経営を実現
人手不足が慢性化する一方で、ブラックなイメージで語られることも少なくないシステム開発業界。そんな状況を逆手に取ったユニークなビジネスで成長中の会社がある。SAP ERPパッケージの導入支援をメインに事業展開するAESコンサルティング株式会社だ。
同社は福岡県北九州市に本社を置く会社だが、2008年の創業当時から東京、大阪で活発な営業活動を行っている。携わる案件のほとんどがプライムベンダーと呼ばれる大手SIerやコンサルティングファームとの直取引案件だ。
強みはSAPを中心としたERPパッケージ導入支援におけるノウハウの蓄積だ。中軸を担う社員の多くがSAP認定コンサルタントの有資格者で、財務会計や管理会計をはじめ、販売、在庫管理、購買、人事といった幅広い領域で、豊富な経験を活かしながら要件定義から設計開発、テスト、運用保守まで幅広いソリューションを提供している。
同社のビジネスのユニークな点は、プロジェクトやポジションを社員自身が選択していることだ。一般的なベンダーでは、営業が受注した案件に対してリソースを割り当てる。それに対して同社の場合は、営業が受注機会のある案件を集めてきて、その中からエンジニアやコンサルタント自身が各自希望する条件(収入や働き方、仕事の内容など)を満たせる案件を選ぶのである。
このようなやり方は、一見、発注者側にとっては喜ばしいものではないように思える。案件を打診した後、エンジニアの希望があるかどうかの回答を待ってくれる余地があるとは考えづらい。特に同社が取引するのは国内外の大手企業の大型プロジェクトを扱うプライムベンダーだ。いくら人手不足と言っても、引き受けるかどうか確約されない返事を待ってくれるということがあるのだろうか。このような素朴な疑問に答えるのは取締役・椎野健一氏だ。自らSAP認定コンサルタントの有資格者でもある。数年前までは営業と人事を兼ねながらSAP導入の現場で活躍していた。
「直接ユーザーに売り込んでいたら仕事を選べることはまずありません。当社は幅広いベンダー様と付き合っているので、仕事の情報は沢山集まってきます。本人が選ぶプロジェクトなので高いモチベーションを持って参画することになる。弊社の従業員は全て中途採用ですので、案件が自分で選べることが当たり前ではないことを知っています。だから自分で選んでいるので頑張ろうと思うわけです。一概には言えませんが、ベンダーさんから見るとそれは納得できるところはあるようです。」(椎野氏)
このような仕組みで同社は設立以来毎年黒字を達成し続けてきた。さらに間接部門を設けずに社員への還元率を最大化することで、今や同社の社員の給与は業界トップレベルにまでなっている。