2D・3DCGアニメーションの企画から制作、編集、プログラミングまで一貫して開発
パチンコやパチスロなどの遊技機向けCGアニメーション制作会社の、株式会社ゼロワン。当該業務はゲーム制作会社などが多角化の一環として手がける場合が多いが、同社は数少ない遊技機向けに特化した専門企業。それだけに、この領域をストイックに掘り下げ、パチンコ・パチスロファンに受ける企画力や演出力を磨いてきた強みがある。
同社が手がけているのは、遊技機に組み込まれた液晶表示用コンテンツとしての2Dおよび3DのCGアニメーション。企画から制作、オーサリング(編集)、液晶制御プログラミングまで一貫して開発できる強みがある。
まず、企画・制作面の強み。代表取締役の折上英作氏は、この世界で30年間、デザイナー及びプロデューサーとして活躍してきた国内屈指の存在である。そのほかの役員やディレクターなどは、押しなべてパチンコ・パチスロのマニア揃い。
「頻繁に仕事の後などに店に寄って、調査研究を兼ねながら趣味としても楽しんでいます」と代表取締役専務の小林一彦氏は言う。
コンテンツは既存のIPキャラクターを活用して制作する場合もあるが、顧客である遊技機メーカーから大まかなテーマを受け取って、オリジナルのキャラクターやストーリーを一から企画するケースも多い。遊技機の液晶表示コンテンツはインタラクティブ性が少ないので、ムービー制作に近い仕事といえる。
「当社ではデザイナーが絵コンテをきっちり描き込むことを重要視しています。絵コンテやVコンテが関係者全員と制作内容を共有する最重要のツールとなるからです。遊技機のCGアニメは動きのタイミングが命ですが、そうした調整に職人技を発揮しています」(小林氏)
次に、制作管理面の強み。分業制を導入して業務効率化を図り、一人ひとりの負荷を軽減させている。また、業務支援ツールを社内で開発し、作業の自動化・省力化も推進。さらに、専門性の高いハイエンドの3Dムービー制作などは、特定の外部協力会社に依頼している。これらにより、品質と効率を高めている。
「長い経験を積んでいるので、工程のどこでトラブルが生じやすいかといったことを熟知しています。そこで、ディレクターがトラブル回避の策打ちを緻密に講じているので、当然のことではありますが、仕様どおり・納期どおりにきちんと仕上げる力があります。お客様との信頼関係が構築できており、当社が遊技機メーカー各社と直取引を続けられている大きな要因であると自負しています」(小林氏)
自身もパチンコ・パチスロのファンで、仕事の後に楽しみながら研究をしているという。
子会社としてアニメ・実写映画の企画制作会社設立! シナジーを発揮し認知度向上を目指す
同社設立の経緯を、小林氏は次のように話す。
「大手ゲーム会社でデザイナーを務めていた折上が33歳で独立し、個人で仕事を始めました。取引先から法人化を求められ、2000年7月に設立したのが当社です」
折上氏は、10名ほどのフリーランスを束ね、当初は遊技機だけでなくゲームやモバイルコンテンツなどの仕事も請け負っていた。しかし、3~4年目の頃に、会社を成長させていくには曾孫請け・孫請けから直取引に進化させる必要があり、そのためには、コアとなる領域に絞り込んで強みを磨く必要があると判断。20代からのパチンコマニアであった折上氏は、遊技機向けに特化することを決断する。それとともに、集合離散を繰り返すフリーランスによるプロジェクト運営をやめ、正社員化してノウハウやスキルの蓄積を図ることにした。以来、今日まで原則的にアルバイトや派遣を採用せずに正社員を主とした組織運営を心がけている。
また、一時期、長時間労働が続いて離職率が高まることがあった。そこで、前述のとおり分業化や外注化、省力化を進めて業務効率化の徹底を図ることに。現在、月間の平均残業時間は20時間以下で落ち着いているという。
パチンコ・パチスロは国の規制が強化され、業界は生き残りをかけてより一層、遊技機の質を高める動きを強めている。
「当社は遊技機メーカーの最強のパートナーとして、取引量をまだまだ伸ばしていきたいと考えています。現にプログラム開発での領域拡大を要請されており、対応するラインを整えたところです」と小林氏。従来は液晶表示プログラムのみ手がけていたが、同一CPUで稼動させるサウンドや役モノの演出プログラムも新たに受託を始めたところだ。
さらに、同社は2017年12月、アニメや実写映画の企画制作会社である丸壱動画を設立。2019年秋に公開されるヒューマンドラマ作品の製作委員会に参加し、企画立上げなどの制作やTVアニメでの3Dアニメーション制作をスタートさせている。2020年には3本の実写映画企画をクランクインさせる予定だ。
「遊技機の制作実績は一切外部公開できず、当社の実力をPRすることが困難です。一方、映画は公開できるので、丸壱動画とゼロワンとのシナジーを図って一体的に認知度を高めていければと考えています」(小林氏)
折上氏は53歳、小林氏は52歳。両名が60~65歳になるまでに、次世代の経営層を育成しなければならないという課題もある。
「若手からキーマンを発掘して育てていくことが、非常に重要なテーマです。そのためにも、人材採用に力を入れて取り組んでいきます」と小林氏は意気込む。
経営データをオープンにして一体感を高める。過去3年間の定着率は95%
2018年12月現在、社員数は71名。プロデューサー1名、ディレクター12名、デザイナー51名、プログラマー6名、管理2名という構成。ゲームやアニメ業界の出身者が多く、美術監督クラスも3名在籍しているというプロフェッショナル集団だ。平均年齢は35歳で、女性比率は31%。
就労環境としては、業務ソフトウェアは最新バージョンを1人1ライセンス供給するとともに、デュアルディスプレイを導入し充実させている。また、前述のとおりの業務効率化によって、平均残業時間は1日1時間未満。有休取得率も65.9%と比較的高い。クリエイターが働きやすいように意識をしている。
社内の親睦を深める機会としては、年に1回の社員旅行を全額会社負担で実施。沖縄や北海道、京都に1~2泊で出かけている。
「それ以外では、社長と私は毎週末、社員と飲みに行くようにしています。そこで社内のいろいろな話を聞いて、運営改善に生かしています」(小林氏)
同社の過去3年間の定着率は95%と高い。その要因の一つに、経営データのオープン化が挙げられる。12月決算の同社では、毎年3月に社員総会を開催し、そこで前年度の売上高や利益などの経営数字を公開して、事業別の収益状況の分析結果を全員で共有しているのだ。そこで、全体利益のために自分のやるべき課題が明確になり、一体感が高まる効用がある。一定の利益が出ると決算賞与として分配されるので、社員の関心は高いという。
「この発表の時は、大いに盛り上がります」と小林氏。こうして毎年きちんと情報開示や分配を行っているので、例えば東日本大震災での業績悪化時に賞与が不配となった際も、全社員が理解を示したという。
「当社では、社外の人との交際接待費をあまり使っていません。その一方で、社員とのコミュニケーションにはコストをかけています。決して内向的な会社というわけではありませんが、制作会社は作品が全て。社外とのお付き合いより、いかにいいモノをつくるかということをストイックに追求する職人集団のマネジメントに力を入れているのです」と小林氏は言う。
思う存分、CGアニメーション制作の道を究めたいという人にとって、見逃せない企業といえるだろう。
株式会社 ゼロワンの社員の声

20代後半
2015年04月入社

30代後半
2014年10月入社
休日出勤が無いの...続きを読む

20代後半
2017年09月入社
限られた時間を有効に...続きを読む