デジタル教科書用ソリューションのデファクトスタンダードへ

学習用ICTプラットフォーム『Lentrance』を提供している同社。現在急成長している「教育×IT」のフィールドで戦うITベンチャーだ。

学校へのICT導入が加速する中、クラウド配信で先行する『Lentrance』がいっそう注目されている。
学習用ICTプラットフォーム『Lentrance(レントランス)』を提供する、株式会社Lentrance。
Lentranceとは、「Learning」と「Entrance」を掛け合わせた造語。その名のとおり、「すべての人の学びの入り口になる」ことを目標に掲げているサービスだ。同社はデジタル教科書・教材に対応した学習用ICTプラットフォーム『Lentrance』や、教育系デジタルコンテンツ販売サイト『Lentranceストア』を運営している。学校教育法改正によるデジタル教科書の制度化や文部科学省のGIGAスクール構想、コロナ禍でのオンライン授業へのニーズの高まりなど、学校へのICT導入が加速する中、同社の学習用ICTプラットフォームがいっそう注目されている。
『Lentrance』の特長は、学習者を主体に置き、学校などの公教育および塾や通信教育などの私教育、また個人の学びで、PCやタブレット、スマートフォンなどからシームレスに使えるところ。デジタル教科書向けとしては、いち早くクラウド配信に対応した。『Lentrance』があれば、学習者はワンストップで様々な学習コンテンツにアクセスできる。例えば、学校で使っているデジタル教科書と『Lentranceストア』で個人購入した教材を『Lentrance』の本棚から一体的に利用できる。書き込み等のデータはクラウド上にあるため、急な学級閉鎖で学校の端末を持ち帰ることができなくても、自宅の端末を使ったBYOD(Bring Your Own Device)での運用で学びの継続が可能だ。
アクセシビリティ機能を豊富に備えることも特長の1つ。障害者差別解消法の施行により学校にも合理的配慮が求められている。『Lentrance』には、例えば目の不自由な学習者のため、画面の色・明るさ・コントラストなどを調整する機能やテキストを読み上げる機能が標準搭載されている。国際標準規格DAISYのサポートも、アクセシビリティへの意識の高さがうかがえる。
教科書・教材会社は『Lentrance』のプラットフォームを使って既存の紙のコンテンツを低コスト・高品質でデジタル化し、学校や塾の児童生徒、個人のユーザーに直接配信できる。配信形式は、デジタル教科書の一般的な形式であるEPUBのほか、HTML5やPDF、画像、音声、動画など、多様な形式に対応している。
こうした特長が評価され、教科書出版最大手の東京書籍をはじめとする教科書・教材会社、教育系コンテンツホルダー17社に採用されており(2021年03月現在)、全国の学校への導入が進んでいる。
ICTを活用して、あらゆる状況下の人に学ぶ機会を届ける

代表取締役社長 石橋 穂隆氏
『Lentrance』によって、世界中の人々に学ぶ機会を届けることを目指す。

今後は国内の展開だけでなく、海外展開も視野に入れ、サービスのクオリティを高めていく予定とのこと。
同社の創業理念は、「どのような環境や立場にある人でも、学び続けることができるサービスを提供し、すべての人の可能性や夢を未来につないでいく」というもの。例えば、病気・ケガなどで登校が難しい児童生徒であっても、『Lentrance』を通じて自宅で学習ができる。さらには、学校がない途上国において、学校や通学路といったインフラの整備を待つことなく、『Lentrance』を通じて豊富な学習コンテンツにアクセスすることも可能になる。一方、日本のように教育制度が行き届いている先進国においては、『Lentrance』はより高度な学習サービスを提供するプラットフォームとなり、学習者の選択肢を広げることができる。
「我々は、ICTを活用してあらゆる状況下の人に学ぶ機会を届けることを使命としています」(石橋氏)
コロナ禍を受け全国の学校に休校措置が取られた際には、学習支援サイトを立ち上げた。このサイトでは、教科書・教材会社の協力の下、学校教育用デジタルコンテンツを誰でも無償で利用できるようにし、学校に行けなくなった児童生徒の学びの継続を支援した。
『Lentrance』はデジタル教科書としての採用が進み、学校で広く利用されていくことが確実視されている。教科書・教材会社や教育工学の専門家と協力して学習履歴や教育データの活用など、教育ビッグデータによる新しい学びの研究開発にも取り組んでいる。事業体としても、大手企業からの出資を受けていながら経営的には独立しているなど、事業の基盤が安定している。その上でイノベーションを起こしていくことを大切にし、個人の自主性やチャレンジを重視していることが同社の魅力だ。
今後は学習塾や通信教育などの私教育分野での採用を進め、学習者を中心としたシームレスな学習環境を提供し、国内で積み上げた実績をもって、海外展開を図っていくことを考えている。「国内、海外の事業展開は順番に進めるのではなく、並行して取り組んでいくことになると思います」と石橋氏は意気込む。
目的意識を明確に持ち、事業に取り組む

全メンバーが主体性を持って、自らの意志で、やりがいを持ちながら働く。それが同社の仕事観だという。
現在のメンバーは、エンジニアが主体。その風土づくりについて、石橋氏は次のように言う。
「事業立ち上げ当初から大切にしていたことなのですが、『Lentrance』事業はどのような目的・意義をもっているのかを伝え、各メンバーが自信と誇りをもって業務に取り組めるよう心がけています。メンバーが家族や友人といった周囲の方に、何のために仕事をしているのかを生き生きと話す。そんな状況が作れたら嬉しいですね」(石橋氏)
具体的な施策のひとつとして、週1回の全社員でのミーティングにおいて会社の状況や課題などの共有を図っている。「通常のミーティングとは別に、お茶を飲んだりお菓子をつまんだりしながらフリーテーマで話すような時間を設けたいといった意見も出ています。今まで以上に双方向のコミュニケーションを活発にしたいと思っているところです」(石橋氏)
働く環境としては、子育て世代が集まっていることもあり、家庭生活も充実できるような働き方を実現させる。「コロナ禍後はテレワークや時差出勤などにフレキシブルに対応しています。またフレックスタイムや勤務間インターバル制度などを積極的に導入していく予定です」と石橋氏。
そんな同社が求める人材について、石橋氏は次のように期待を寄せる。「当社は、今までになかったものを創り出していきますので、“いい失敗ができる人”を求めたいです。積極的にチャレンジし、例え失敗したとしてもそこから学んで次に生かせる人です。自らも成長しながら、我々とともに未来を切り拓いていく。そのような志を持てる方とお会いできるのを楽しみにしています。」(石橋氏)
すぐそこに広がっていく、デジタル教科書の時代を先取りする同社。学習用ICTプラットフォームとしてのデファクト・スタンダードを目指す同社では、やりがいに満ちた仕事ができるに違いない。
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