AIやICT技術による医師のための臨床支援ツール「ヒポクラ×マイナビ」を提供
日本初の“ドクター to ドクター”(D to D)の臨床支援ヘルステックスタートアップである、株式会社エクスメディオ。
全診療科の医師が活用できる、AIやICT技術による臨床支援ツール「ヒポクラ × マイナビ」(旧・「ヒポクラ」)を提供している。
「ヒポクラ×マイナビ」は、2018年4月に転職情報サイトなどを運営する情報サービス大手の株式会社マイナビと業務提携し共同運営体制を構築。ブランド力やコンテンツ制作力を大幅に強化している。
「ヒポクラ×マイナビ」の主要機能は、次の4つ。
●コンサルト 皮膚疾患画像をアップし、皮膚科専門医およびAIに診察・診断のコンサルト(助言・意見を求めること)ができる「ヒフミルくん」、同様に目の疾患画像により眼科専門医やAIにコンサルトができる「メミルちゃん」がある。
●知見共有 全診療科の医師同士が臨床経験に基づく知見を共有し深め合うとともに、AIが臨床の問題解決をサポート。皮膚科、眼科以外の専門医へのコンサルト機能も兼ねる。
●Bibgraph 英文の医学系論文の検索エンジンを日本語で検索でき、日本語に自動翻訳された論文タイトルや概要を読むことができる論文検索サービス。Bibgraphの機能は、「知見共有」とも連動しており、「知見共有」に投じられた投稿に対して、AIが参考論文をリコメンドする機能もある。
●世界医療ニュース 世界中の主要メディアで報じられた医療関連ニュースを毎日紹介。英文の記事をその場で翻訳する機能も。
医療分野において、“AI×ディスカッション”機能を備えた臨床支援ツールはほかにない。
ユーザーである40代の総合病院総合内科の勤務医は、「とにかく返信が早く再診機能があるため、10~20点の診断を60~70点ぐらいに引き上げられる」と評価する。
2018年5月現在、ユーザー数は数万人。
「マイナビさんと提携したことで、これから普及にさらに弾みがつくと見ています。数年後に控えた上場を見据えて、さらにサービスを拡大していきたいと思います」と代表取締役社長CEOの物部真一郎氏は言う。
精神科医として臨床の現場に立ちながら、医療の課題をITでさらに解決するために同社を立ち上げた。
総務省、経済産業省、地方自治体や大学などの各研究機関からも認められ、支援を受けている。
「日本における医療の課題をITで解決しよう」と創業
精神科の専門医である物部氏は、地方の病院で認知症を中心とする精神科疾患の臨床に従事していた。高齢の入院患者は、精神疾患だけでなく、皮膚や目などの疾患も発生する。
「日本では伝統的に主治医制度が取り入れられており、患者さんのことを一番理解している主治医がその患者さんのあらゆる疾患をマネージすることが求められています。しかし、私が精神科の医師であるように、医師はそれぞれの診療科の高度な専門教育を受けているものの、それ以外の診療科に関する専門教育は受けていません。したがって、主治医として医療過誤を起こすリスクがあるのです。この私も、目の前の患者さんの皮膚疾患に対処する際に『専門医の助言がほしい』と痛感しました。この臨床現場での体験が、当社を起業し『ヒポクラ×マイナビ』を開発する動機となりました」
そんな物部氏は、臨床の中で直面した様々な課題を解決するため、医療者として起業することを思い立つ。そして、スタンフォード大学経営大学院に留学し、MBAを取得する。
渡米中、物部氏は医療の中に最新のITが取り入れられ、遠隔診療が進展している様を目撃する。「自分が考えていた日本における医療の課題は、ITで解決できるのではないかとひらめいた」と物部氏は言う。
そして、シリコンバレーのコミュニティで今泉英明氏(現・CTO)、大学の同級生であったチン・リー氏(現・CFO)と出会う。今泉氏はトヨタのシリコンバレーの研究所で自動運転の研究開発に携わっていたが、胃ガンを患った直後で、再発の懸念から「いつ死ぬかわからない。もっとユーザーに近いところで貢献できていることを実感できる仕事がしたい」と感じていた(PRタグ参照)。そこで、物部氏の「一緒に、テクノロジーの力で世界の健康寿命を5年延ばそう」という構想を聞き意気投合する。ケンブリッジ大学でAIの研究を手掛けた後、起業を目指して学んでいたリー氏と3人で、在学中の2014年12月、同社を創業。最初のサービスである、ドクターtoドクターの遠隔医療サービス「ヒフミルくん」をローンチする。
2015年に「ヒフミルくん」をテスト的に運営した後、2016年から本格的に展開を開始。その間に「メミルちゃん」や「Bibgraph」を開発し、全機能を集約して「ヒポクラ」に統合した。そして、数万人の医師会員を集めた2018年4月、マイナビと業務提携する。
同社は、「医療者がテクノロジーを活用し、患者がより良い医療を受けられる社会を実現する」というビジョンのもと、「ヒポクラ×マイナビ」を通じて、「テクノロジーの力で世界の健康寿命を5年延ばす」というミッションを追求している。
疾患画像をアップし、専門医およびAIに診察・診断アドバイスを求めることがができる。現在は皮膚科領域と眼科領域で展開。
世界中の医療ニュースを毎日収集し、独自のAIで分類。最適化された情報をユーザーに提供する。自動翻訳機能も実装している。
AIやITビジネスのカッティングエッジがわかるメンバーぞろい
2018年5月現在、同社のメンバーは従業員20名、および、業務委託スタッフ10名といった体制。組織はビジネス開発、サービス開発、エンジニアリング、AI研究開発、コーポレートの各チームに分かれ、プロダクトやタスクごとに各チームからメンバーがアサインされてプロジェクトチームが結成されるグリッド型の経営スタイル。
そのメンバーは、錚々たる顔ぶれだ。東京大学特任准教授として超高速光インターネット技術の研究を手掛けた後、楽天技術研究所チーフサイエンティスト、トヨタのシリコンバレー研究所の勤務経験を持つCTOの今泉氏以下、元楽天のエグゼクティブデータサイエンティスト、ケンブリッジ大学や東京大学で最先端のAIを研究した人材、外資系戦略コンサルティング会社やリクルート、ヤフー、ミクシィ出身者などが集う。「まさに、AIやITビジネスのカッティングエッジがわかるメンバーぞろい」と今泉氏。
そんな同社は、野田聖子総務大臣の「先駆的ICTに関する懇談会」メンバーにPreferred Networksやナイアンティック、bitFlyerなどと共に選ばれている。まさにヘルステック領域において日本を代表する存在と認められた形だ。
母校の高知大学で特任准教授を務める物部氏、同じく母校の慶應義塾大学SFCの村井研究室で特任准教授を務める今泉氏など、関連領域の本物の講師や識者に事欠かない同社では、それぞれが講師となって全メンバーを対象に勉強会を実施、知識・スキルの底上げを行っている。
事業運営においては、経営ボードメンバーが3カ年計画を作成し、半期ごとに議論して見直しをかけ、その結果を全従業員に共有。常にビジョン、ミッションおよび「臨床現場ファースト」というバリューに照らし合わせながら、スピードを意識してサービス・ビジネスの開発と改善を繰り返している。
「職種など関係なしに誰もがアイデアを出し、エンジニアは勝手に機能を開発しています(笑)。それが良さそうなものであればすぐにローンチし、行けそうであれば掘り下げるといったアジャイルなスタイルでどんどんサービスを開発していますね」とCOOの柘植氏。その風土は「“ド”がつくほどのフラットさ」(柘植氏)だ。少人数ということもあるが、経営層とメンバー間は極めて近い。
「とはいえ、飲み会などは多くなく、それぞれの主体性や自由度を尊重しています」(物部氏)。一方、「皇居ランニング部」が結成されており、自由参加で会社から徒歩5分の皇居の周りでランニングを楽しんでいる。
ワークスタイルとしては、フレックスタイム制(コアタイム11~16時)と週1日(介護や育児、看病などの特別な事情がある場合は週2日)のリモートワーク制度を導入し、ワークライフ・バランスを重視。労働時間は抑制的だ。
そんな同社が求める人材像について、物部氏は次のように言う。
「課題だらけの医療をITの力で改善することにワクワクしたり、医療の先にいる患者さんのQOLの向上に貢献できることにワクワクできる方がいいですね」
「新しい技術やテーマに柔軟かつ積極的にチャレンジできる方に、ぜひ来ていただきたいです」と今泉氏は補足する。
「お互いに話したことのない医者やエンジニアが集って話し、一つのサービスをつくる楽しさが当社にはあると思います。ぜひその楽しさを味わっていただきたいと思います」と物部氏は呼びかける。
不定期であるが、金曜日の夜などに軽食とお酒を出し、カジュアルな勉強会やワークショップを行う場を設けている。外部の方の参加も歓迎していて、医師やエンジニア、デザイナー、コンサルタントなどさまざまな人が集まり、知見を深めている。