大手企業を中心に、幅広い業種の「自社直営EC」をトータルサポート

代表取締役 工藤 暢久氏
デジタルエージェンシーでインターネット関連の業務経験を積む。その後同社を設立。

オフィスは東京と松山の2拠点体制だが、現在は東京オフィスはリモートワークで業務を実施。
ショッピングモールではなく自社直営のECサイト市場をECビジネスの主戦場と位置づけ、ECコンサルティングを軸に、ECサイトの構築・運用、分析やマーケティング、集客・ECシステム調達、CRMや在庫管理まで含めた総合支援を手がける株式会社久(Qinc)。設立は2012年で、当初はECコンサルの領域からスタートし、クライアントの要望に応じる形で支援領域を広げて今日に至っている。現在ではモール出店の相談を受けても、「自社ECで勝負しましょう」と進言するほど、自社EC特化の姿勢を貫いている。
「モールなどの共用型のEC構築ツールでは、ストアフロントにおいてもバックエンドにおいてもさまざまな制約があり、個別企業の実情に応じたカスタマイズを行いにくい面があります。何より、ECサイトによって得られる最大の資産である顧客情報が残らない。ここが最大のネックです。何の制約もなくクライアント企業の世界観を表現し、事業戦略に沿った機能や付加価値をフリーハンドで追求できる自社ECの成長こそが、ECビジネスの成功に直結します」(代表取締役 工藤 暢久氏)
ECビジネスの総合支援を掲げる同社だけに、提供するサービスは実にきめ細かい。ECサイト分析では6分類372項目に及ぶユーザー視点評価に、徹底したアクセス解析を加えて、売り上げ拡大に向けて「何をすべきか」を可視化。売上ランキング順での商品自動並び替えシステムや商品データを各種仕様フォーマットにあわせる自社開発システムなど、ECサイト運営・運用ツール開発のメニューも幅広い。定期的な訪問やTeamsなどのWEB会議ツールを用いて、こうした詳細かつ継続的なサポートを行うのが同社の支援スタイルだ。
同社の設立は2012年。8年以上にわたって主幹コンサルタントを任されている大手食品メーカーをはじめ、クライアントにはプロ野球球団、総合通販、アパレル、健康食品メーカーなど、年商数百億円規模の大手企業が目立つ。
「大手の場合は、ECシステムの実装に際して、業務システムを担うSIerさんも含めた総合的なコンサルを提供しています」と工藤氏。逆に、自社でサイトの構築・維持が難しい中小事業者に向けては、既存のECサイト構築プラットフォームをベースにしたカスタマイズ提案で、個別企業の成長ステージに即応した柔軟な展開で下支えしている。
クライアントのネームバリューも手伝い、増え続ける支援オファーにキャパシティが追いつかない。この現状を打破すべく、同社ではクライアントのフロントに立つディレクターの増員とサイト構築・運営を担う愛媛県・松山オフィスの増強に力を注いでいる。
東京―松山、880kmの距離を超えたチームワークが強み

無駄なルールがないため、社員同士は仲がよく、雰囲気も明るく働きやすい職場だ。

エンジニアであっても、企画から携わることができるという。キャリアアップに繋がる環境だ。
工藤氏は愛媛県出身。小学生時代にゲーム開発プログラミングに没頭し、司法試験突破を目指した大学院生時代には、憲法の条文を音声変換したCD商品を開発・販売した経歴を持つ。
「思えば、あの憲法CD販売が人生初のEC体験でした(笑)」と、工藤氏は自らのEC事業の始まりを振り返る。ECを含むITの可能性か、法曹界で活躍する未来か。前者を選んだ工藤氏は、博報堂グループのデジタルエージェンシーでECサイトの構築・運営とECコンサルティングのスキルを磨き、35歳の時、東京・麻布十番にQincを設立する。
「EC支援で起業したのは、拡大する一方のECビジネスの可能性を追求したかったから。自分たちが考えた仕様やデザイン次第で、何十万、何百万ものユーザーを動かす手応えは、ちょっと他では考えられません」(工藤氏)
大手企業との関係にあたって、前職時代から続く人脈が生きたことは言うまでもない。現在も、一般財団法人ネットショップ能力認定機構認定講師としての広告代理店へのECビジネスに関する企業研修をはじめ、講演や他企業からの企業研修講師のオファーが引きも切らないという。
そんな工藤氏とQincにとって大きな転機となったのが、2015年の松山オフィス開設だ。
「人生折り返し地点というべき40歳を前に、納税や雇用という形で故郷に貢献しようと考えたことがひとつ。それ以上に大きかったのは、松山の若いエンジニア、スタッフたちに、大手企業の仕事に携われる機会をつくりたいという思いでした」(工藤氏)
松山オフィスの開設により、東京オフィスに常駐するコンサルタントとディレクターがクライアントの交渉窓口として提案を担い、エンジニアを主体とする松山オフィスでECサイト構築、WEBサービス開発とEC運用を実行する2拠点体制が確立。継続的・恒常的な総合支援を提供するQincのビジネスモデルがより強固になった。敏腕ECプロデューサーでもある工藤氏は、東京に軸足を置きつつも、定期的に松山に赴き、若いスタッフの成長をサポートしている。
プロとしてリスペクトされる環境で、自分らしく成長する

打ち合わせ中も無駄な緊張感は皆無。リラックスすることで高い生産性を実現している。

休む時間も各自が決めている。もちろん、"ゆるい"わけではなく、"メリハリがある"ということだ。
Qincは「繋がりの創造」を企業理念に掲げている。
「ひと、こと、ものが時間と距離の制約なしに繋がることができる環境が整った今日、社会に対して価値ある繋がりを創造し、人々の喜びをつくりたい。そんな思いを込めた理念です。今後も自社ECの支援を中心としつつ、クラウドサービス開発への取り組みなど、ECビジネスの可能性を広く追求していきたいです」(工藤氏)
「47都道府県すべての地域でEC支援を」をキャッチフレーズに、地方の名品を世界に販売する試みも、静岡のメーカーをはじめ、確かな成果をあげ始めている。
また一方では、EC運営を担うIT人材の採用が困難な企業を念頭に、フルアウトソーシングのレベニューシェア(成果報酬)型ECサイト総合支援サービスをリリースし、全国的に支持を広げるなど、新たなチャレンジが加速している。
さらには、EC業界に15年余携わった中で感じた課題を解決するためのBtoB向けクラウドサービスの開発にも着手している。
「余計な縛りがないのは、キャリアを問わず、社員一人ひとりをプロとして尊重しているから。もちろん自己啓発の意欲を表明すれば、相応の援助はします」と工藤氏。
確かな成長フェーズに入ったQinc。
成長意欲の高い人には、願ってもないチャンスが待っている。
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