株式会社プログレート

株式会社プログレートは人材、保育園支援、システムの3つの領域を事業の柱としている会社だ。具体的には大手転職サイトの総合代理店、自社プロダクトとしてASP形式の人材紹介会社向け業務システム『エージェントリンク』、保育園と保護者をつなぐインターネットを利用した連絡システム『安心伝言板』、および保育士専門の転職支援サービス『保育コンシェル』を手がけている。中でも、日経グループの人材紹介会社の集合サイト、『エージェントサーチ（日経キャリアNET）』の専属代理店として、200社超の人材紹介会社をクライアントに持つトップ代理店だ。

このように多角的に事業を展開しているが、同社のルーツはシステム開発事業だ。人材サービス会社出身の創業メンバーが、業界各社にシステムを提供したのが最初の事業だった。業界への深い理解とノウハウが、他社との差別化ポイントとなり、いくつもの著名な転職サイトの構築と運用を手がけた。

実績を重ね、業界で名が知られるようになるなかで、『日経キャリアNET』を展開する日経HR社との仕事がスタートした。今でこそ人材紹介会社の集合サイトも乱立気味だが、『エージェントサーチ』がスタートした当時は、ほんの数社の先行サービスがあるだけだった。プログレートが日経HR社に人材紹介会社の集合サイトを提案し、「紹介会社の集客も含めて任せられるなら」ということで受託し、専属代理店としても活動するようになったという。

200社超のクライアントを抱える今は、新規顧客開拓の一方で、既に顧客となっている人材紹介会社に対して、サイトを活用した課題解決を提案するようなリテンション型の営業の比重も重い。「コンサルタント的な立場で活用方法を指南して成果を出し、Win-Winの関係になれることが、この仕事のおもしろさです」。こう話すのは、『エージェントサーチ』とASPサービス『エージェントリンク』の事業を手がけるビジネスソリューション事業部にて、マネージャーを務める圓山優子氏だ。

既に専属代理店として活動を始めて10年余り。この年数の重みが、日経HR社からの評価の表れだろう。提案から始まった『エージェントサーチ』の事業は、今や人材領域の事業の太い柱として、プログレートの成長を支える基盤となっている。

システム開発から『エージェントサーチ』へと事業を広げたように、ちょっとしたアイデアからスタートして、今や同社の主要な事業の一つに育っているのが保育領域の事業だ。2008年のリーマン・ショック後、しばらくの間、世の中全体の求人が減り、人材業界は大打撃を受けた。プログレートには、『エージェントサーチ』と自社プロダクトの『エージェントリンク』から生まれる安定収益があったが、多角化も必要だった。

「たまたま当時、自分の子どもが保育園に通っていたことから、保育の領域にもっとITを導入できないかと考えました」。こう話すのは、経営企画室 室長の曽呂学史氏だ。

その後、2011年に東日本大震災が起き、「何か役に立てないか」という思いで開発したのが、保育園向けのインターネット上の連絡サービス、『安心伝言板』だ。災害時に電話やメールがダウンしても、インターネット経由で保育園は状況を書き込め、保護者は安否を確認できる。日頃、パソコンに触れる機会が限られる保育士でも簡単に操作でき、保護者の個人情報を安全に取り扱い、正確に情報を伝えられる。簡単・安全・正確の三点を追求して開発した。

「やや閉じた世界である保育園は参入障壁が高く、社会福祉法人や株式会社など運営主体も混在し、最初は取引を開始するのに苦労しました」と、曽呂氏はリリース当初を振り返る。だが地道に信頼関係を築き、少しずつ導入を増やしていった。『安心伝言板』は、現在は約350施設で導入されている。

そして、『安心伝言板』を通じて保育園と話す機会が増えるなかで、どこの園でも、現場での一番の課題が人材の確保であることがわかってきた。そのニーズに応えるべくスタートしたのが保育士専門の人材紹介サービスの『保育コンシェル』だ。

元々人材業のノウハウがあり、システム構築もお手の物。多くの保育現場と接していることも強みに、保育士と保育園が本当にほしいサービスを形にした。単純なスキルや経験、条件のマッチングではなく、保育士の悩みやキャリアプラン、仕事を選ぶ上で大事にしていることなどをヒアリング。転職先で長く活躍できることを第一に考えて紹介する点が、ほかの多くの類似サービスとの違いだ。

利用者には必ずアンケートをとる。『保育コンシェル』のサイトに回答の一部が載っているが、そこには感謝の言葉がずらり。好意的な回答を抜粋したわけではなく、本当に感謝の言葉が多いのだ。メールやラインを活用してコミュニケーションは効率化しつつ、保育士の気持ちは決して疎かにしない。『保育コンシェル』は、保育士に嬉しいサービスであるとともに、間に立つプログレートの担当者にもやりがいがあり、もちろん保育現場にも歓迎されているWin-Win-Winのサービスだ。好評を博すなか、右肩上がりで成長している。

『エージェントサーチ』も『保育コンシェル』も、関係者みんなが幸せになるサービスを提供できるのは、プログレートの社員が満ち足りているからだろう。

「疲弊していたら良いサービスは提供できない」という信念の下、社員の働きやすさも追求。残業ナシでメリハリをつけて働くほか、「例えば『保育コンシェル』のコンサルタントが、夜に保育士さんと直接やり取りしなくてはいけない場合などは、昼間に抜けて休むように言っています」と曽呂氏。

法に則った厳格な裁量労働制の運用とは異なるが、働き方は個人の裁量に任され、疲弊しないように各人がコントロールする。有給休暇の取得率も極めて高いという。結果として、これが社員の自律を促し、パフォーマンスが高まることにもつながっている。先述の圓山氏は、気候温暖な房総から遠距離通勤中。スローライフを楽しみ、オンオフバランス良く働く好例だ。

社内に一歩足を踏み入れて感じるのは、一人一人が本当に「いい人」であることだ。良き環境下、お互いを思いやる余裕をもって働いていることで人当たりも良くなるのだろう。社員同士も仲が良い。誰かが「バーベキューをしよう」と言えば自然に人が集まり、誰かが上手に仕切ってみんなで楽しむような、そんな自然なコミュニケーションが心地いい会社だ。

現在はたまたま、人材と保育の事業を展開しているが、曽呂氏の発想から保育事業が始まったように、今後も、まったく違う領域の事業を始める可能性は十分にある。自ら事業を立ち上げたいという気概を持つ人にとっては、大きな可能性のある会社だろう。しかし、決して前のめりになるのではなく、目の前の仕事に丁寧に臨みながら、自由な発想を大事にし、無理のないスタイルで広げていくのがプログレート流だ。急激に社員を増やすこともなく、少数精鋭で質の高い仕事をしながら、事業も会社規模も、自然に少しずつ拡大していく考えだ。

自然体のプログレートに興味をもった方は、まずは一度、訪ねてみるといいだろう。