「物流の未来を、動かす。」
これまであまり結びつくことのなかった中小事業主や個人事業主と物流会社とをつなぎ、新しい物流インフラの形を築きつつある企業がある。それが、株式会社オープンロジだ。
同社が提供するのは、中小規模のEC事業者など、直接物流会社と取引するのはコスト的に難しい事業主と倉庫会社や物流会社をプラットフォーム「オープンロジ」を介して結ぶ、ロジスティクスのクラウドサービスである。
「中小事業主は、商品の発送を迫られるたび、一つひとつ梱包して宛先の住所を書き込み、配送の手続きをしていました。その手間暇をなくすため、物流会社に頼もうにも、依頼から信用調査、見積もりなど、手続きが煩雑でサービスを受けられるまで1カ月ほどかかってしまいます。また、月額料金や保管料は1坪いくらで設定されることが多いため、商品数が少量では割高で利用しにくいところがありました」(代表取締役CEO・伊藤 秀嗣氏)
そこで、同社が複数の倉庫会社や物流会社と契約、オープンロジを介して多くの事業者から受注を集めることでスケールメリットを出し、シンプルで安価な価格設定を実現した。提供しているサービスも、保管、検品、配送といった基本的な業務はもちろん、ギフトラッピングやチラシの同梱、異なる商品とのセット組、代金引換など幅広い。EC事業者にとって嬉しいサービスとして、各種モールとのAPIを通じたデータ連携にも対応している。発送先は国内だけでなく、世界120カ国へ送ることも可能だ。これらの各種手続きが、商品を入庫しておけば、あとは管理画面上の簡単な操作で行えるようになっている。
一方、「当社のサービスは、倉庫会社や物流会社にもメリットがある」と伊藤氏は続ける。
「倉庫会社の取引先は、大口のお客様が中心ですが、長年依存するあまり下請けのような役回りとなり、利益率が低いという現実があります。とはいえ、小口客では手間がかかる上、利益は少なく安定した収益も見込みにくいので、手を出しづらい。そもそも、小口のお客様を効率良く集める手立てがありません。でも、オープンロジを活用すれば、自ら営業することなく新しいお客様が見つかるし、倉庫の空き状況によって受け入れる量を調整しやすいので、稼働状況の効率化も図れます。また、中小事業主との取引で懸念材料の一つとなっている信用リスクも、当社が間に入ることで低減できるのです」(伊藤氏)
2019年3月にはYahoo!ショッピングの物流パートナー賞も受賞しました!
口コミだけで、利用者が急増中!売上も前年同月比10倍に。
株式会社オープンロジが、この事業を立ち上げる際、周りには「無理だ」という声が多かった。しかし、2014年10月21日のサービスイン以来、大きな宣伝をすることなく、口コミで利用者数は着実に増加し続け、売上も前年同月比10倍という伸びを見せている。
その理由は、潜在的なニーズにリーチしたというだけでなく、わかりやすい価格設定やシンプルな取引形態、管理画面などシステム面のUXの高さ、クレジットカード決済に対応している点など、新しい物流の形を提案できているからにほかならない。利用者の中には、サイト上の手続きだけで商品を発送できるため、アメリカにいながら日本でビジネスを展開している人もいるそうだ。
このように、物流というレガシーな世界で新たな需要を掘り起こし成長を続ける同社の新規性は、各所で評価されている。たとえば、サービスイン後、2週間で日経新聞やTechCrunchなど16以上のメディアで取り上げられたこと、TechCrunch2014スタートアップバトルで審査員特別賞を受賞し、Infinity Ventures Summit 2014 Fall KyotoのLaunch Padに登壇し第6位に評価されたことなどからもうかがい知ることができる。
しかし、同社が目指すところは、「次世代の物流インフラをつくる」ことであり、現状はそこへ至る通過点に過ぎないと伊藤氏は語る。
「海外にある倉庫会社との提携を進め、海外物流ネットワークの拡充を進めているところですが、今のところ、ホームロジの利用者は中小事業者と中規模の倉庫会社が中心です。しかし、システムをはじめとした物流の仕組みそのものの完成度を高めていくことで、大手企業の利用も広がるはずです。
また、物流をアウトソースする必要のない企業に対してもアプリケーションという形で提供することでカバーできます。物流という分野を幅広く面で抑え、データやノウハウを収集することによって、より効率的な物流の仕組みを提案できるはずで、その結果としてサプライチェーンマネジメントを改革し、これまでにない新しい概念の物流インフラをつくれればと考えています」(伊藤氏)
課題解決意識の高い人と、一緒に物流業界に変革を起こしたい!
インターネットやECの広がりによって個人も含む小口の売買取引が増加しているが、その売買を裏で支える物流業界は、人が介在する場面が多い分、古いものが根強く残る業界でもある。だからこそ、「入る余地の多い業界」だと伊藤氏は強調する。
「当社は、エンジニア自身が契約している倉庫の人と直接やり取りしたり、物流の現場へ足を運んだりすることで、課題や要望を肌感覚で汲み取りながら、お客様と一緒になって業務の改善に取り組んでいるのですが、『そこはシステムに置き換えて自動化したほうが効率的なのに……』などと思うことが少なくありません。それはつまり、業界の慣習に染まっていないエンジニアが現場を見ることで気づけること、改善できることが、まだまだあるということです。変革のポテンシャルが高く、長い歴史のある業界にもかかわらず、当社が先駆者になれる可能性が高いことでもあります」(伊藤氏)
ただし、変革を起こすには、「課題解決意識の高い人材」であることが欠かせない。顧客の業務を深く理解して、物流のプロすら見落としている課題、気づけない課題を掘り起こし解決していくには、物事を漫然と見ていては不可能だからだ。
「また、高い当事者意識を持ち、自分を成長させていこうという意欲の強さも必要になります。要は、『これは、どうすれば解決できるのか?』を楽しめることが大切です。楽しめれば、課題解決のために学ぶこともできるし、自ら進んでやりきろうとするので自然と責任感もわいてきます。その意識があれば、当社には自己成長できる機会がありますよ」(伊藤氏)
同社は、非常にオープンな社風で、ミーティングも関係するメンバーだけが会議室に集まってするのではなく、オフィスフロアで行い、部署ごとのミーティングも会社全体で共有する。各人が学んだことも勉強会などを通じて知見化していく。これは、日常的に多様な情報に触れる機会を持てるだけでなく、自分とは異なる視点、思考に触れる機会にも恵まれていることであり、何かを吸収したいという意識の高い人ほど、多くのものを得られる環境だといえるだろう。
「私たちはベンチャー企業ですから、自分たち自身ももっと、もっと成長していかなければなりません。しかし、将来的には、次世代の物流インフラを構築して業界に変革を起こすと本気で思っています。だから、ここに共感できる人と一緒にオープンロジをスケールしていきたいのです」(伊藤氏)