品質に対する要求レベルが高いクライアントや代理店と長く取引
Web制作会社の株式会社ユーティックス。クライアントは大手企業を中心に、数多くの有名ブランドのサイト制作を手がけている。そのスタートは1995年、日本におけるインターネットの黎明期の老舗でもある。
同社の始まりは、ある企業が新規事業として設立したマルチメディア部門。ネットという新しい市場でいち早く成長を目指すため、1997年に独自の資本で独立した。2016年で20周年を迎えるという歴史を誇る。
技術力や品質を評価され創業早期から大手企業のサイト制作を請け負う。以来、今日まで一貫して取引が継続している。また、多くの引き合いをいただいている広告代理店の顔ぶれも、日本を代表する会社が揃う。
こうしたクライアントや代理店は、常に新しい表現や方法論を求めている。品質に対する要求レベルが非常に高く、目も肥えている。こうしたニーズに応え、20年近く継続的に取り引きが続いているというところに、同社の実力が表れているといえよう。
児玉英之氏
“バランス”重視の経営で、基盤の安定化と着実な業務運営。3年間離職者ゼロ!
そんな同社の強みを一言でいえば、 クリエイターやエンジニアがやりたいと思う面白い仕事を重視するとともに、こうした社員たちが安心して力を発揮できる環境づくりに力を入れていることにある。前述のとおり、同社のクライアントはクリエイティブへの要求が高い企業がそろっている。常に新しい表現やテクノロジーが求められる仕事ほど、刺激的で面白いことはないだろう。同社は、そういった高度なスキルを必要とする案件こそ積極的に受注することで、業務を通じて現在のスキルレベルを認識し、その向上を図っているのである。
しかし、そんな仕事があるだけではダメなのだ。
Web制作会社の唯一の資源は、人材である。その社員にとって、会社は生活基盤だ。揺らぐようなことがあっては、仕事に力を発揮できない。また、会社全体としては経験のある社員が長く定着したほうが、総合力を発揮しやすくなる。だからこそ、会社を安定させる必要があるといえる。
だからこそ、安定経営に目配りし、リーマン・ショックによる不況期以外、毎年決算賞与を支給するほどの余裕を確保するよう努めている。そのせいか、この5年間に離職した社員は一人もいない。勤続10年前後の社員も多い。この業界では稀有な存在といえるだろう。
また、顧客ニーズを営業やプロデューサーから制作現場におろしてつくるだけでなく、現場から提案する場合も非常に多いという。デザイナーやエンジニアが、それぞれ仕込んだ技術や情報、表現手法をもとに『こうしたほうが面白い』『こうすればもっと使いやすくなる』といった意見をバンバン言える環境がある。さらに案件によっては、例えばデザイナーがソースコードを書いたり、エンジニアが企画案やデザイン案を考えるといったチャレンジも可能だ。だからこそ、デザイナーやエンジニアのチームがそれぞれのスペシャリティにおいて意見を主張し、ほかのチームはその意見をリスペクトして吸収しようとする環境がある。斬新な技術志向のデザインが生まれ、デザイン志向の企画やプログラムが生まれる要因は、こうしたクリエイティブ、エンジニアリング重視の風土にあるのだ。この現場力による双方向というバランスも、同社の強みなのである。
職種別チームと案件別プロジェクトのマトリクス運営。勉強にも熱心!
代表取締役社長の児玉英之氏は、自身のマネジメントスタイルについて次のように言う。
「自分が決めて社内を動かすのではなく、逆に社内の意向を重視し、それを基に会社運営を組み立てています。幸いなことに優秀な社員に恵まれているので、社員の言葉に耳を傾け、それをどう実現させるかという枠組みを考えるのが自分の仕事ですね」
同社の組織運営はマトリクス方式。営業、プロデュース、クリエイティブ、デベロップメント(開発)、システム(バックエンド)という職種別の5チームに分かれる一方、サイト制作の案件ごとにプロジェクトが組まれ、各チームから担当者がアサインされる(プロジェクトリーダーはプロデューサーが務める)。1人の社員が複数のプロジェクトを兼務する形だ。
毎週月曜日の午前中からチームごとのミーティングが行われ、毎回決めるテーマについて意見・情報交換や勉強会などが行われている。一方、プロジェクトごとに状況を共有し問題解決を図るミーティングは非定期的に頻繁に行われる。この縦横のミーティング運営が事業運営の軸だ。
月曜朝の午前中から行うことで、一週間のリズムをつくる狙いもある。この業界には朝遅く夜も遅いという体質があるといわれるが、それは不健全ととらえ、同社は健全であろうとしているのである。
会社全体で行われる親睦イベントは年に2回ほどであるが、チームやプロジェクトごとの飲み会などはよく行われており、社員間のコミュニケーションは活発だ。
そんな同社が求める人材について、児玉氏は次のように言う。
「一言でいえば、社会性のある人です。クリエイターやエンジニアの場合、どれだけ才能や技術が素晴らしくても、チームワークが取れなかったり、スケジュールを守れないようではビジネスとして成立しないからです。才能や技術はとんがっていなくても、社会性が高い人のほうを優先します。そこもバランスを重視しています」
安定した基盤の上でハイレベルな仕事にチャレンジできる同社は、必チェックの会社といえるだろう。