狙うは「世界一」。存在感抜群のベンチャー
株式会社ウフルはクラウドを中心としたITサービスを展開する会社だ。「クラウドサービスのコンシュルジュ」として、選定から導入、運用までを一貫して支援するほか、IoTやマーケティング領域でのクラウドの活用など、企業のあらゆる課題に対してクラウドをベースとしたソリューションを提供している。
特にSalesforceの導入・活用に卓越した知見と実績を持つほか、Amazon Web Service(AWS)、Google Cloud Platform(GCP)、Microsoft Azureなどの主要なサービスから、あまり知られていないプラットフォームまでも含め、ありとあらゆるクラウドサービスに精通、対応していることが特長だ。
創業は2006年。社長の園田崇氏と取締役の小堀貴生氏など3人で立ち上げた。園田氏は電通に勤務した後、MBA取得と投資銀行勤務を経てインターネットビジネスの世界に飛び込んだ人物だ。起業時、「インターネットは可能性に満ちている。インターネット以外の世界の経験のある自分こそが真にインターネットと事業の架け橋になれるのではないか」という熱い思いで可能性を見出したのが、「エンタープライズIT」つまり企業向けITの領域だ。
社名のウフルは、スワヒリ語で自由を意味する。「自由な発想と確かな技術で社会の役に立つサービスを届けていきたい」という思いを込めた。「自由な発想」でこの業界を眺めたとき、目に止まったのがSalesforceとクラウドだった。当時、Salesforceのパートナーは日本で十数社。まだクラウドという概念も今ほど一般的になっていない頃だ。先駆的な会社だったと言えるだろう。
2007年にこの領域に取り組み始め、今までに手がけた案件は2000件を優に超える。その間にメンバーも3人から200人に増えた。園田氏は「他社に先駆けて取り組み、実績を積み重ねてきました。当社はSalesforceの技術、導入支援にあたっては恐らく日本一でしょう」と自負する。その先は「できれば世界一を目指したい」とも。
起業したての頃は、手がける案件も中堅中小規模の会社に向けたものが多かったが、会社の成長とともに次第に大きな案件も増えてきた。ウフルが支援した会社がM&AやIPOによって大きく成長し、結果的にプロジェクトも成長したという事例も少なくない。まさにインターネットの可能性を体現してきた。時代も追いついてきた。常に最先端の技術を追いかけ、ブログやセミナーを通じて世に発信してきたウフルの存在感も増している。「世界一」も決して夢物語ではないだろう。
電通、MBA、投資銀行からインターネット業界という経歴を持つ。
技術をスピーディーに見極め、他社に先駆けて挑戦。緻密な戦略で飛躍を狙う
Amazon Web Service(AWS)、Google Cloud Platform(GCP)、Microsoft Azureといった、Salesforce以外のクラウドプラットフォームの案件も増えている。また、昨今はクラウドが活用される領域も、従来のCRMなどから大きく広がりを見せている。園田氏は言う。「今までは主たるお客様としてIT部門を想定していましたが、IT以外の分野でもクラウドを活用したいというニーズが高まってきました。例えばIoTやマーケティングの領域でソーシャルのデータを顧客データベースと紐づけて、より密度の濃いマーケティング活動を展開するといった事例も少なくありません」。
同社が「マーケティングクラウド」と呼ぶこの領域。マーケティングがマスからOne to Oneへと急速に転換する中で、マーケティングの最適化をしたいというニーズも増えている。この新たな領域で、ウフルは大手自動車メーカーや大手総合電機メーカーといった日本有数の企業の案件も手がけている。いずれもプライムの立場だ。この2社に限らず、すべてプライムベンダーとして案件に携わる。
Salesforceもその他のプラットフォームも急速に活用が広がっている中、専任のR&D担当を置いて常に最新の技術をウォッチし、プロジェクトにいち早く取り込んでいるのもウフルの特長だ。有用な技術をスピーディーに見極め、先進的なサービスを提供できるからこそ、大きな資本の会社に伍して存在感を発揮できるのだろう。
世界を見据えているウフルは、200名とまだまだ大きくはない精鋭の部隊だが、既にメンバーの国籍は8カ国にわたる。「会社としては日本で積んだ実績と知見を、何らかの形でグローバルに届けたいと思っています。ただし無理はせず、まずは外資の企業への案件提供などからスタートすることを考えています」と園田氏。日々、実績を積み重ねていれば、その先に自然と海外展開も見えてくる。着実に地歩を固めながら進めていくつもりだ。
ビジネスを知り尽くした園田氏だからこそ、志は大きく、そのプロセスは緻密な戦略に基づいている。そんな園田氏の手腕に期待し、ウフルには創業直後からベンチャーキャピタルの資金が入っているほか、セールスフォース・ドットコムなど取引先からの出資も得ている。ということは、IPOも当然視野に入ってくる。機を見て攻勢をかけ、より大きくスケールしていく考えだ。
「協創」を理念に未来を切り拓く。一人ひとりを尊重する社風も魅力的
そんなウフルが最も大事にしている理念は「協創」。協力的に創造する「協創」だ。顧客はもちろんパートナー、行政、地域社会、株主、そして従業員とウフルを取り巻くすべての人たちと共に豊かな社会、豊かなサービスを生み出すことを目指す。同じ響きの「競走」のアンチテーゼでもあるのかもしれない。園田氏は言う。
「ある課題やテーマがあるとき、協力的に成し遂げるか対立的に成し遂げるかでアウトプットがまったく違ってきます。より良いものを作るために『協創』というコンセプトを持とうと、メンバーみんなに言っています。お客様と仕事をするときも、我々は決して下請けではなく、パートナーとして『共に創る』という矜持を持っています。このビジョンを軸に未来を切り拓いていきたいですね」。
「協創」の理念には、メンバーの一人ひとりを尊重することも含まれる。自主性を重んじ、会社に貢献できるのであれば、働き方もかなりの部分を個人個人の裁量に任せる。もちろん長時間労働は推奨しない。家庭や趣味、自分自身の目標などと仕事を両立させ、豊かな人生を送ってほしい。それが巡り巡って仕事のアウトプットにもいい影響を与えるに違いない―そんな考え方が基本にある会社だ。
やりたいと手を挙げれば、どんどん任される。Salesforceやクラウドに関する高い技術に魅かれて同社の門戸を叩く人も少なくなく、メンバーみんなが実現したいこと、やりたいことに向けて邁進している。逆に言えば、やりたいことを自分で見つけられない「待ち」の姿勢の人には向かない会社かもしれない。
フットサル部、女子会部、カラオケ部など有志の活動も盛んだ。社内は30歳前後のメンバーが多く、和気藹々と楽しむ雰囲気に満ちている。だが決して仲がいい=緩いではない。仲がいいからこそ仕事上の絡みも真剣で密なものとなり、そのオンオフ合わせたコミュニケーションの良さが、仕事のやりやすさにつながっている。
働きやすさ、明確なビジョンと戦略、それを支える確かな技術をあわせ持ち、会社が成長する疾走感や高揚感も味わえる―ウフルはそんな会社だ。