国内トップレベルの導入実績を誇るマッピングのパイオニア
株式会社カーネルは、マッピング、あるいはGIS(Geographic Information Systems=地理情報システムの略称。以下、GISと表記)と呼ばれるコンピュータシステムのパイオニアだ。1992年の設立以来、GISアプリケーションおよびGISエンジンの自社パッケージ開発・販売を行う他、顧客のオリジナルGISの受託開発やGIS開発に伴うデータ入力代行なども含めたGISのオールインワン企業として持続的な成長を遂げてきた。京都本社、東京営業所の2拠点で事業を展開中だ。
GISとは、電子地図をデータベースとして、地理的な位置または空間の情報を、地名や人口など様々な属性データと合わせて統合的に処理、分析、表示するシステムである。1960年代から70年代にかけて、欧米において防災や環境保全などのプロジェクトを通して発展してきた。日本ではIT技術が劇的に進化した1990年代から本格的な取り組みがスタートしている。特に1995年に発生した阪神・淡路大震災以降、全国自治体において防災分野での活用が一気に拡大した。現時点では規模の大小を問わず民間企業における導入も進み、マーケットの裾野がどんどん広がっている状況だ。
GISは、電子地図データベースとGISアプリケーションで構成される。現在、日本国内では国土地理院や民間の地図製作会社から様々な電子地図が販売または配布されているがそれ単体では活用することが出来ない。そういった地図データを閲覧するだけではなく、目的に応じて、色分けしたり、プロットしたり、様々な属性データを紐づけたりして活用するためのシステムがGISアプリケーションである。また、GISエンジンは、そのGISアプリケーションを構築するための様々な基本機能を部品化して集約したシステムだ。
カーネル社は、GISアプリケーション『Lmapシリーズ』、GISエンジン『Active Mapシリーズ』といった自社パッケージを開発しベンダーを通して販売している。特に汎用型GISアプリケーションである『Lmapシリーズ』(ベンダーOEM製品を含む)は全国のほとんどの自治体に導入され、主に防災分野で活用される他、金融機関や生命保険会社をはじめとする民間企業でマーケティングや顧客管理、営業実績管理などに活用されている。その導入数はシリーズ累計10,000ユーザーに上る。また『ActiveMapシリーズ』は、タクシー配車システムや新聞販売店向けシステムなどの小規模GISから、自治体における全庁型GISなどの大規模GISまで、業務特化型のGIS開発において多数の採用実績を持っている。
伸び盛りの同社だが、たとえ人数が増えても、自分の役割を実感できる会社であり続けたい。
最新の技術・市場を追求し、常に最大のユーザ満足を意識して製品開発
日本国内で最初にGIS製品を販売し始めたのは米国の企業だが、扱う製品はいずれも地図データそのものを製作することができるほどの高精度=高価なシステムだった。それに対し国内では、1990年代初頭に、カーネル社を含む数社のベンチャー企業が、市販の地図データを活用したGIS製品の開発・販売を開始している。
カーネル社は、あるシステム開発会社の京都支社が母体となって設立された。創業にあたって当時、国内で本格的な取り組みが始まろうとしていたGIS分野の将来性に着目し、国内初のWindows対応パッケージGISアプリケーション『K・MAP』をリリースした。1994年には、国土地理院刊行の「数値地図」対応パッケージGISアプリケーション『MAPメーカー』をリリース。導入費用を当時の相場の約100分の1にまで引き下げることによってGISを一般個人ユーザーにまで浸透させ、幅広いシェアを獲得した。また、1996年には国内初のActiveX対応GISエンジン『ActiveMap Pro』を、さらに2003年には、やはり国内初のMicrosoft社.net Framework対応GISエンジン『ActiveMap for .NET』をリリース。
まさに“マッピングのパイオニア”として革新的な製品を次々に開発し、GIS業界をリードしてきたのである。
「例えばWindow98がリリースされれば業界に先駆けて対応するなど、とにかくどこよりも先に最新技術を取り入れる、ということをずっとやってきました。展示会に出展するたびに「またカーネルが変わったことをしている」と言われるのですが、次の年には競合各社が軒並み同じことをやってくるという状況でした」(柏原氏)。
創業当時は電子化された地図データがなく、紙地図をスキャニングしラスターデータとして加工したものを使用するのが一般的だった。そのため、エリアごとにページが分かれており、今でいうファイリングシステムのようなイメージで地図を表示するシステムが多い中、カーネル社は地図データの軽量化に取り組むなどしてかなり早い時期に全国をスクロールして閲覧することが可能なシステムを生み出している。研究開発に力を入れ、様々な工夫を行いながら先進的な製品を開発してきた。
さらに同社の特色として挙げられるのは、特定の地図データに特化した開発を行ってきたことだ。全国くまなくカバーし、ほぼ毎年情報を更新する住宅地図製作最大手企業が製作・販売する電子地図に対する知識を掘り下げて仕様を徹底的に合わせるとともに、ベンダーに対する丁寧な営業支援(同行営業や提案資料の作成など)を行うことで、安定的かつ持続的な成長を実現してきたのである。
これまではWindows端末で動くシステムを開発・販売してきた同社だが、2013年末からAndroid OSを搭載したタブレット向け製品の開発に着手。2015年4月には販売を開始した。市場の反応は好調で、現在では、iPad向け製品もリリースしている。また、タブレット向け製品の販売をきっかけに、大手有名企業・官公庁からの引き合いが大幅に増加。大規模ユーザへの導入・運用に向け、現在は全社をあげてWebアプリケーション版の製品開発に着手している。
「独立企業として、少人数ながらも大きな仕事を手掛けられることが喜び」
技術や市場の変化をビジネスチャンスとして確実に捉え、次のステップにつなげて行きたい考えのカーネル社は、その動きを加速させるため、プログラマーやSE、営業といった幅広い職種で積極的な採用活動を行っている。
同社で働く魅力の一つは、自社パッケージ製品を作っていることだ。特に同社はGISという未開拓な市場で事業をスタートし、他社にはない発想で独自のポジションを確立、現在も革新的な製品開発にチャレンジし続けている。物作りに関わっている手ごたえは、他では味わえないほど強く感じられるはずだ。
その独創的な製品作りの背景にあるのは、同社の事業理念とそれに基づく組織作りだ。これまで同社は規模の拡大にはこだわらず、社員一人ひとりが自分の会社であることを意識して仕事に携われることを大事にしてきた。営業、エンジニアといった職種間の壁を取り払い1つのチームとしてそれぞれの立場で意見をぶつけ合う。そしてその中で各自が会社の中でのポジション・役割を確立し、会社の中で自分が必要とされる存在であることを実感しながら働く。それが仕事に対するやりがいやモチベーション、さらに顧客や社会に対する貢献意識を生み、自社製品やサービスの向上を実現してきたのだ。今後もそのような環境は維持していく考えだ。
「長期的なビジョンとしては、GIS以外の事業にも着手する可能性はあります。しかし、例えば上場を目指すなどの拡大路線を取ることは考えていません。目指すのは、少人数規模の企業でも大きな仕事を手掛けられることに喜びを感じられる環境であり、その集団であることです。それに対する結果として成果が得られ、社員の人生を支えられる。それが一番大事であって、何をするかはそれに向かって考えればよいと思っています。」(柏原氏)。
これから入社するメンバーに同社が求めるのは、GISの専門知識やスキルではない。カーネル社が目指すゴールに向かって、チームを意識しながら自分の役割を果たそうとする姿勢、あるいはそのためのコミュニケーション力といった資質こそが重要視される。GISという分野はシステム開発会社の中でも特殊に捉えられがちで、実際にGISエンジンの開発においては、専門性も求められる。だが、同社で開発に携わる全員がGIS未経験からの入社であり、入社後の業務経験を通じてそれぞれにスキルを積み上げているのだ。もちろん業務の中で覚えると言っても容易くはない。しかしその困難が苦にならなければ、他社では感じられない大きなやりがいや充実感を得ながら、技術も掘り下げていくことが出来る。
極端な例では、IT業界そのものが未経験で入社し、2年目でAndroid版の開発にアサインされ独学で開発を完遂させたメンバーもいる。やる気さえあれば何でも出来るわけではないが、その姿勢があればチャンスを与え、会社としてバックアップする環境だ。同社の社員は「うちの仕事は楽ではない」と口を揃えるものの、入社後3年未満でやめるメンバーがほとんどいないということが、得る物の大きさや居心地の良さを物語っている。
会社の雰囲気はとにかく良い。定例会などの形式的な会合はないが、自然発生的にバーベキューや飲み会などが開かれ、多くの社員が家族ぐるみで参加する。かといって上司からの誘いが断りにくいような雰囲気もない。
「小規模な組織ながら、競合他社に劣らない実績があることは我々のモチベーションになっています。また、出社時間や休憩時間、服装なども含め、一般的な形式に捉われることのない独自のルールで運営しているので、自分がやるべきことに集中できることもカーネルの魅力。これまで本当の意味での仕事のやりがいを得た経験がない人にとっては、人生観や仕事観が変わる可能性のある会社なので、それを求める人はぜひ話を聞きに来て下さい」(柏原氏)。