株式会社パーク

1999年に設立された株式会社パークは、その名の通り「公園」を意味する社名だ。ユーザービリティの高いソフトウェア開発会社を目指している同社は、ナショナルクライアントはもちろんのこと、国策としてのアプリケーション開発協力を行うなど、創業14年目という社歴ながらも高い社会的信用を誇る企業である。

設立当初から主格事業の両輪の一つである技術者の受託派遣では、キヤノンをはじめ、大手製造メーカー、ナショナルクライアントとの直接開発案件が中心。システムの主要設計からコンサルティングを兼ねて関わることが多く、開発案件をダイレクトにコントロールしていける醍醐味がある。

開発内容は、WebやPC及びスマートフォンのアプリケーションや制御系のミドルウェアの開発と幅広い。

具体的な開発内容としては、インターネットを使ったホワイトボードシステムである「visual Meeting」、画像・映像を組み合わせたデジタルPOPシステム「POPプレゼンター」、医療従事者向けの情報を自動取得してデータベース化していく「薬剤情報支援システム」など、各業界の稼働効率に大きな影響を与えるものが多い。

そのような受託案件で成長を続ける一方、設立当初から着手し、近年になって主格事業として目覚ましい発展を遂げているのが、自社開発案件。その技術力が国内で次第に認知されつつあり、今後は同社の事業を大きく飛躍させるだけでなく、社会的にも影響力の強い開発をもたらすものであると期待されている。

例えば、指静脈認証サービス「Sormesta」（ソルメスタ）は同社が開発した指静脈データによるPCログインアプリケーションだ。個人情報の管理レベルの向上が叫ばれている昨今にあって、指静脈認証を用いて正確な個人識別を可能にした。また、新規事業として開始したソフトイオン化質量分析・解析アプリでは、経済産業省からの支援を受けながらペットボトルなどの有機物質から成分を解析していくソフトウェアを創り上げた。

受託派遣とソフトウェア開発。これらの実績がかみ合うことによって好循環のスパイラルが生まれているわけだが、それを同社の代表取締役・中妻卓史氏は、次のように語る。
「パークの持ち味は、エンジニアたちが集い、技術交流を深めあいながら、より高い次元でのソフトウェア開発を志していくという理念にあります。受託派遣では、開発初期から関わることで常に自身の発想を現場に投影できる環境であること、また開発では、自社の可能性を最大限引き出すために定期的な企画提案を常に求めています。このことは自社エンジニアのレベルアップをはかることはもちろん、主体的にものづくりに関わっていく喜びを得られるため、高いモチベーションにつながっているのです。」

パーク最大の強みは、強力な技術力と提案力で、ユーザーないしクライアントの潜在的な要望をキャッチしていくことにある。その実現を可能にしているのが、設計・保守・運営を行うSEサイドと、通信技術・印刷装置制御などの分野で高い規格を常に提案し続けている開発サイドが、ともに相互効果を出している点にあると言える。つまり、世界的にもハイスペックな開発が後押しすることにより、SE部隊の現場での価値や貴重性が高まり、その逆もしかりというわけだ。

現場の技術知識は常に高水準のものが積み重ねられており、新規のキーワードが出てきても余すところなくキャッチアップができる。その知識体系が社内で出来上がっているからこそ、新規顧客に対しても、斬新な提案ができ、引き合いも多い。

知識をつけるためには、ひとえに勉強会などの定期的な推奨活動もあるが、それだけでは高い知識は獲得できても、それを提案力に直結することは非常に難しい。そこで、同社では提案力の源になっている、独特の社内制度を充実させている。

具体的には、全社員が企画提案に参加するという社内制度が設けられている。まず、2週間に一度、ブレインストーミングを行い発想力の強化を目指す。ブレインストーミングとは、小さなグループ単位でひとつのテーマに対して自由な発想で自由に意見を出し合うミーティングだ。この段階でひとつのアイデアから集団での発想にまとめていくという技術も培われ、柔軟な思考を可能にしていく。

次に、社員個々が2ヶ月に一度、新製品のアイデアを企画書にして提案。製品としてのスペックなどはもちろんのこと、市場動向などもふまえた本格的な製品企画を出していくのだ。技術に重きを置いた企画提案になりすぎればユーザビリティが欠けてしまい、市場を意識しすぎれば画期性が失われるが、同社の場合は受託派遣でエンドユーザーやクライアントの要望を常に実現してきた現実性が全社的に備わっているので、発想と具現性のバランスが取れたハイレベルな企画が飛び交っている。

その企画がそのまま製品化になることも中には存在し、管理職を中心とした評価委員会が、さらに2ヶ月たっぷりと時間をかけて、そのアイデアを評価し、製品化に向けての課題を出していく。

高いレベルで出てきた企画をさらに高い次元に押し上げていく指導のこだわり。頭一つとびぬけていなければ、実際の開発に落とし込まれることはないのだが、こうした業界最前線を見据えた企画提案をでき、自らの提案が実現へと近づいていくことが、社員の技術者としてのモチベーションも高めているのである。制度自体は、昨年から開始して、既に3本程度の開発案件が、実際に稼働しているという。

パークという会社を技術者メリットの観点から一言で言うと、「技術者が、そのアイデンティティを確立しやすい場所」と言えるだろう。それを支える待遇面でも大きな評価ができる企業だ。

人事制度でいえば、最大のポイントは上司と部下の相互評価が成立しているところだ。コンピテンシー評価（親密さ、理解力、雰囲気づくり、計数処理能力、論理的思考力など行動特性で評価する）と個々の目標管理をシートにまとめ、それを全社で閲覧できる仕組みがある。

年に2度の面談の他に、部下が上司を評価していくという試みにも、社内風土の明るさ、健全さが伺える。こうしたやりとりを経て、社員たちは管理者への道ないしスペシャリストへの道のいずれかを自由に選択できるようになっているので、自身のキャリアプランに見合った会社生活を送れるのだ。

そして、人事面で最も評価されているポイントは、月間の平均残業時間が25時間を切っていること。そもそも年俸の中に月間40時間の残業代が含まれている。40時間を超えると、超過分の残業代は支払われる仕組みはのはもちろんだが、過去の繁忙期を探してみても、超過したケースは指折り数えるほど。社内エンジニアは19時にはほぼ退社し、常駐先の場合でも大手企業が多いため、週2回のノー残業デーが確保されている。またフレックス制を導入しているため、家庭や子育てとの両立もうまく行える。

こうした制度が会社の風通しをよくしているため、社長以下社内全員を上下わけへだてなく肩書ではなく「さん」づけで呼びあう明るさがあり、離職率も年間数パーセントに満たないほどだ。

会社に居心地のいい場所がある。だからこそ、長く会社にとどまり、知識や経験をここが蓄積し、会社がそれを集約して大きなパワーに変換することができる。パークの最大の強みは、こうした人間ベースのスパイラルにあると言っても過言ではない。

代表取締役社長の中妻氏は、今後の展望について次のように語る。
「技術力を磨いて、アウトプットのパーセンテージを上げていく」
それはつまり、自社製品、自社サービスの開発に力を入れていくということであり、その高い技術を求めるべく、彼らの集う“公園”に多くの技術者が集まってくることを示唆している。

XML技術、コンテンツマネジメント、ECM、ASIC、FPGA、マイクロコントローラーなど様々な技術を提供してきた同社のコンテンツは、さらなる技術の進歩とともに増加を見せ、それにともなう開発案件が市場で注目されている日も決して遠くはない。