株式会社極楽湯

株式会社極楽湯は、日本全国に直営・フランチャイズの日帰り温泉入浴施設を運営している。2012年1月現在、店舗数は47（直営店22、FC店15）。そのネットワークは、北は北海道から南は宮崎にまで広がっている。温浴業界において店舗数業界シェアNo.1を誇るという同社。「日本の伝統的な銭湯文化を紡ぐ者」としての責任を忘れることなく、それぞれの地域文化に合うお風呂作りを目指している。

同社が運営する入浴施設「極楽湯」では、温浴・飲食・リラクゼーションの3つのサービスを提供する。和のテイストの上質な空間を演出するお風呂では、安全に入浴を楽しめるよう、水質管理と設備管理に厳重な基準を設けている。伝統的なスタイルの内湯、露天風呂はもちろんのこと、漢方釜風呂、純米酒風呂、つぼ押し寝湯、宝石風呂、炭酸の湯など、最新式のお風呂が多数楽しめるのが、人気の秘密だ。

食事処おいては、子供からお年寄りまで楽しめるメニューを定期的に開発し、食を通じた団欒の場を提供している。整体などのリラクゼーションコーナーでは、身体だけでなく心の疲れまでもほぐすようなサービスを実践するべく、技術の向上に努めている。

また、同社では、既存の“スーパー銭湯”の範疇にとどまらない新たな取り組みも次々に展開している。一部の店舗で、介護が必要なお年寄り向けの訪問入浴サービスを実施しているほか、プライベートブランド商品（ミネラルウォーター）を開発したり、クレジット機能をつけた会員カードの導入などを行なって、顧客の利便性を高めたりしている。このほか、東日本大震災の際には、店内で義援金を募るなど、CSR活動も積極的に行なっており、地域に貢献する会社であることを印象付けている。

全国にはスーパー銭湯が数多く出店しており、競争の波にさらされ苦戦を強いられているところも多い中、同社の売上高は右肩上がりで成長している。その強さの元は何なのだろうか。

一つはマーケティング力。投資額が大きい施設だからこそ、失敗は許されない。同社では、綿密で精度の高い市場調査を行い、多くの入浴者数を獲得する立地を厳選して出店している。1998年から2000年にかけて、温浴事業を行ないたいという相談を受けた全国1,163の物件に関して市場調査を行ない、1日の平均入浴者予測数が1,201人以上の物件だけに出店を許可した同社。この時、多くの物件が計画の撤回を余儀なくされた。しかしその結果、出店した店舗では、平均1,467人／日という予測を上回る人数を獲得。実に全国平均の約2倍の数字をたたき出したという。このように同社は、徹底したマーケティングとローコストオペレーションを実践することで、着実に成長してきたのである。

もう一つの強みは、施設のデザインと、店舗スタッフによる“おもてなし”だ。日本古来の良さを味わうことができる非日常空間で、“極楽気分”に浸ることができる時空間を提供するために、店舗の設計・デザインは本社の設計室が統括。そのコンセプトを忠実に再現すべく、設計・建設業者を直接指導している。また、徹底して店舗運営スタッフを教育することで、サービスが高いレベルで均一化され、どの店舗でも気持ちの良いおもてなしが受けられるようにしている。

今後同社では、競争に勝ち抜き続けるためにも、いっそう投資効率を高め、早期の60店舗体制実現を目指してまい進していく。また、業界No.1として海外に銭湯文化を発信するべく、アジアへの進出を計画しているという。

同社は、店長も新人も平等に意見を出し合える風通しのよい社風を誇っている。新しいタイプのお風呂や飲食メニューなど、新人の提案が採用され、全店舗で実施されることもある。店舗の運営は店長に最大限の裁量が与えられており、独自の取り組みもスピーディーに行なえるようになっている。また最年少の課長が31歳という例からもわかるように、年齢に関係なく大きな権限を与えられることも、やりがいを感じながら仕事に取り組める理由の一つとなっているようだ。将来は経営者になりたいという希望を持って入社する者もあり、そういった意欲のある社員には早い段階から経営に関するノウハウを身につける環境が与えられる。

たとえば、店長職。店舗への1日の平均来店者数は1,467名だが、これに対応する100名規模の従業員をまとめ、年間7～9億円の売上をあげていくということは、中小企業の社長に匹敵するようなスケールの仕事だ。販促のための決裁額も大きく、店長次第で店が変わっていくという。

だからこそ同社では、やる気に満ちた人材の参画を待っている。今後の同社の海外進出という大きな夢を、一緒に追いかけてくれる人は大歓迎だ。