株式会社スリーエムジャパン

国家財政の赤字が続く中、財政立て直しのための支出削減は国家レベルの急務であり、財政支出の大きな項目である医療費はもはや聖域ではなく、様々な方法で抑制の対象になってきている。医療機関は経営改善の必要に迫られており、特にコスト削減は必須の状況だ。コスト削減のためのアイテムの1つに医療用機器の保守費用の管理があるが、基本的に納入メーカーによる保守管理が行われるため競争が発生しにくく、医療機関側も選任の担当者を置く余裕がないため、これまで徹底した管理が行われてこなかった。
こういった市場のニーズを察知し、設立されたのが株式会社スリーエムジャパン。エキスパートによる医療用機器の保守管理に関するコンサルティングを通じて、医療機関のコスト改善に貢献することが同社のミッションだ。

特に同社が対象としているのは画像診断機器やX線の治療装置など放射線科といわれる部門が使用する装置。ターゲット選定の理由は、放射線科にまつわる機器が、大型かつ高度なため費用も高く管理コストも高い機器であるということ。医療機関における保守管理費の約7割を占めるといわれるほどだ。
同社のサービス内容は、社員が契約先の医療機関に常駐し、職員に代わってメーカーの作業プロセスの管理、コスト交渉を行うというもの。同様のサービスを行う企業も少数ながら存在するが、そういった競合との大きな違いは、常駐社員が医療機器メーカーでフィールドエンジニアとして活躍したプロフェッショナルであるという点だ。

同社が今まさに開拓しようとしているマーケットの可能性について、技術管理部 取締役部長の奈良氏はこう答えてくれた。
「医療業界を取り巻く環境の厳しさは構造的なもの。国の動きも医療費抑制へと向かっています。そんな中で医療機関はますます経営のことをシビアに考えるようになると思いますし、これまではあまり一般的でなかった外部からのコンサルテーションも増えていくと思います。また医療機器についても、第1に高度化が進んでいること、第2に薬事法の関係で危機管理がより徹底されるようになってきたことを受けて、保守管理の重要性はますます高まっていくと思います。ただし、前述のように医療機関としてはコストを削減したいわけですから、医療機関自身で専任スタッフを新たに雇うという選択肢は取りにくい。また技術的にも高度なものを求められるポジションですから、採用も難しい。そうなるとやはり、外部に委託をしたいというのが医療機関の本音でしょう。これらを総合的に考えると、マーケットとしての可能性はかなり大きいと判断できると思います」

製品に詳しい高スキルな技術者を多数抱えているという点では、医療機器メーカーも競合となるのでは？そんな質問にも奈良氏はこう答えてくれた。「医療機器メーカーはどうしても自社の製品を優遇してしまいます。その点、当社のように医療機器メーカーと全く関係のない第3者であれば、医療機関に出入りする様々なメーカーと公平な立場で交渉を行うことが可能になる。この点は、かなりの強みになると思います」

さらに、医療機器メーカーとも共存していくことが可能だと同社では考えている。「メーカー側に対しても、人員配置や業務の効率化という点で協力し合える可能性はたくさんあるはず。切り口は様々ですが、メーカーとのコラボレーションも視野に入れて事業を展開していきたいと思います」（代表取締役　綾戸氏）

現在は大規模医療機関を中心にコンサルティング及び常駐社員の派遣を行っている同社。関東・関西エリアはもちろんのこと、北海道や九州エリアでのプロジェクトも進行中で、さらなる顧客数・エリアの拡大が当面の目標だ。

その後の展開については、サービスのパッケージ化を予定していると綾戸氏は語った。「顧客数を増やし、ナレッジをある程度蓄積した後は、サービスをパッケージ化して、社員を常駐させなくても月に数回訪問するだけでプロセスの管理や価格交渉を行えるようなビジネスにしていきたいと思っています。大規模医療機関に関しては常駐という形態を今後も続ける必要があるかとは思いますが、中小規模の医療機関であれば常駐するほどの業務ボリュームが無い場合も多い。そこに対してはパッケージができたタイミングで、開拓をスタートしたいと考えています」

マーケットを牽引する企業となるべく、日々進化を続ける同社からしばらく目を離せそうにない。

2009年6月現在の社員数は8名。年齢層は42歳～62歳で、平均年齢は52歳というベテラン揃いのメンバーだ。社内の雰囲気について尋ねたところ、綾戸氏はこんな風に答えてくれた。「エキスパートの集まりなので、皆、非常に自立した印象です。しかも、経験豊富なベテランであるにもかかわらず『会社をもっと良くしていきたい』『どうすればもっと良くできるか』といった前向きで成長意欲の高い方が多いのが特徴ですね。今後も社員同士のコミュニケーションやディスカッションをさらに活発にすることで勢いのある社風を創り上げていきたいですね。」

社員の多くは客先常駐勤務となるが、2か月に1度はミーティングのために社員全員が集まるという。このミーティングでは、各担当医院での業務進捗などお互いの状況や顧客の情報を共有し合うほか、会社の現状や今後の方向性の報告なども行われている。「まだまだ小さな会社ですので、経営についても社員全員で一緒に考えていくというスタンスです。現場で得た知識やアイデアをフィードバックしてもらいながら、会社の方向性や新しいサービスについて話し合いを行っています」（綾戸氏）
その他にも月に1度は常駐社員と直接コンタクトを取ってヒアリングを行うなど安心して働けるようフォロー体制を整えている。

採用の際には、経験や資格はもちろんのこと、クライアントやメーカー担当者との接点が多いためコミュニケーション能力も重視しているという。また「新しくてユニークな分野にチャレンジしていこうという会社ですので、チャレンジや変革ということに対し前向きな方」（綾戸氏）であるということも重要なポイントだ。

医療機器メーカーなどでフィールドエンジニアとして働いている人にとって、負荷になっていることの１つに勤務時間の不規則さが挙げられるだろう。担当病院の機器が故障すればいつでも出動しなければならないというのが彼らの現状だ。これに対し同社では、業務時間外のトラブルについては院内スタッフが対応するという契約を結んでいるため、エンジニアは夜間や休日にまで立ち会う必要はない。同じように機器のケアを行う仕事とはいうものの、大きな違いだ。ワークライフバランスを重視したいという人にとって、かなり魅力的だろう。

最後に綾戸氏から、応募者に対するメッセージを頂いた。
「自己の成長と共に会社も成長する。それを実感したいという方にぜひ来ていただきたいです。社内でも常に話していることですが、個々人の成長が無ければ会社も成長し得ません。特に当社のような規模の会社であればなおさらのことです。大変なことではありますが、やりがいにもつながると思います。」

業務拡大という第2フェーズを迎え、さらなる飛躍を目指す同社。エンジニアが現場で得た知識やアイデアから新規事業が生まれる可能性も大いにあり得る。経験を生かしながらも、全く新しい分野に挑戦することができるというのは大きなやりがいにも繋がるはずだ。日本の医療現場において新たなるマーケットを創造する。そんなチャレンジングな仕事を通じてあなたの可能性を広げてほしい。