フジアルテ株式会社

製造業に特化した人材サービスを展開するフジアルテ株式会社は、創業以来、日本のものづくりを支えるパートナーとして独自の地位を築いてきた。派遣スタッフ数は1万人を超え、そのうち約6割を外国籍スタッフが占めるという。フジアルテが製造業に特化している背景には、長年培ってきた現場との結びつきと、多様な人材が働きやすい環境づくりへの強いこだわりがある。

「当社にはブラジルや東南アジア出身のスタッフが多く、製造業の現場は彼らがスタートを切りやすい環境でした。もともと先代が造船業で請負をしていた関係もあり、製造業とのつながりが深かったのです。そこから自然と、製造業に特化した人材派遣という形が生まれました」。

そう語るのは、採用部技術採用チームのリーダーを務める今泉裕介氏だ。

近年では、製造現場だけでなく、技術系エンジニア派遣にも注力している。設計、開発、生産技術、品質保証等、より専門的な職種へのキャリアチェンジを支援する体制を整え、スタッフのスキルアップと定着率向上を図っているのだ。

「現場で働くスタッフの中には、もっと専門的な仕事に挑戦したいという声も少なくありません。会社としても、キャリアアップの選択肢を広げることが必要だと感じています」（今泉氏）。

教育・定着支援の取り組みもフジアルテの強みだ。外国籍スタッフが多い職場では、日本語と母語の両方で作業マニュアルを整備し、通訳リーダーを配置。入社直後にはホテル研修施設での専門教育を実施する等、現場とのミスマッチを最小化する仕組みを整えている。さらに、担当営業による定期面談を通じて現場課題を企業側にフィードバックし、働く環境の改善にも取り組む。

今泉氏は、「派遣スタッフが安心して働ける環境を作ることが、結果的にお客様の生産性向上にもつながります。現場の声を吸い上げ、チームで改善活動を行う文化が根づいていることが当社の特徴です」と解説する。安全意識向上ミーティングや自主的な改善会議等、スタッフ同士が主体的に動く風土が定着しているという。

加えて、スタッフの心身のケアにも踏み込んでいる。新たに導入された体調・メンタルチェックアプリでは、日々のコンディションをスコアで申告でき、異変があれば早期に会社がフォローする仕組みだ。産業医やホットラインも整備され、スタッフ一人ひとりが安心して働ける体制を実現している。

今後は「製造派遣のグローバル化」と「エンジニア派遣の拡大」を軸に事業を成長させる方針だ。日本人労働力の減少が進む中、ブラジルを中心とした海外ネットワークを活かしつつ、日本人スタッフのキャリアアップ支援を強化していく。製造業に特化した専門性と、働く人の人生に寄り添う人間力こそがフジアルテの事業を支える原動力となっているのだ。

フジアルテの最大の強みは、「製造派遣」と「エンジニア派遣」を一体で運営している点にある。一般的に、製造と技術の派遣を別事業として扱う企業が多い中で、フジアルテは双方を連携させる独自の仕組みを持つ。これにより、製造現場で培った技能を技術職へと発展させるキャリアパスを提供できるのが特徴だ。今泉氏は次のように語る。

「製造派遣で働く人たちが、技術系の仕事にステップアップできる仕組みを整えています。1万人規模の製造スタッフと多様な取引先を抱える当社だからこそ、働く場や成長の選択肢を広く用意できるのです」。

また、全国34拠点と海外現地法人を結ぶ広域ネットワークも競合他社との差別化要因だ。国内外からの採用を同一体制で行い、グローバルな人材プールを形成。特に海外採用においては、文化・宗教・生活習慣の違いを理解する専任チームが対応しており、外国籍スタッフが安心して働ける環境づくりを徹底している。

「国ごとの文化や特性を理解したうえで採用活動を行っています。例えば、宗教上の配慮や食事面の要望等、きめ細かな対応ができるのが当社の強みです。こうした安心感が口コミとして広がり、新たな採用につながっています」（今泉氏）。

加えて、フジアルテでは「チーム派遣」という形態を柔軟に活用している。10～20名規模のチームで現場に入り、顧客企業の状況に合わせて派遣・請負の中間的な体制を構築する。これにより、指揮命令が複雑な現場やトライアル的な導入にも対応可能となっており、顧客の信頼を高めているのだ。

社員定着率の高さも特徴のひとつだ。各拠点に営業所を構えることで、就業中のスタッフとのつながりを維持し、職場変更やキャリアチェンジにも柔軟に対応できる。合わない職場があっても、社内で別の仕事に移ることができ、設計等技術職へ挑戦する道も開いているのだ。

さらに、フジアルテではQCサークル活動等の品質改善にも注力しており、顧客企業のコスト削減や生産性向上に寄与している。各拠点の成功事例を全国規模で共有し、改善ノウハウを全社的に展開している点も評価が高い。

「一つの成功事例を全国に横展開し、他の拠点でも再現できるよう取り組んでいます。これが顧客満足度とリピート率の向上につながっています」。（今泉氏）

製造・技術・グローバルの三領域を横断し、人材の可能性を拡張するフジアルテの仕組みは、単なる派遣業を超えた「人づくり企業」としての存在感を放っている。

フジアルテでは、エンジニア派遣領域の拡大に伴い、新たな人材採用を進めている。設計、品質保証、生産技術、機械、オペレーターといった幅広い職種を対象とし、特に「長期的にスキルを高めながら働ける人材」の採用を重視している点が特徴だ。

「派遣先で長く活躍できる方を採用の前提にしています。エンジニア職は短期的な成果よりも、5年、10年と継続して力を発揮していくことで成長が見えてくる職種だと考えているからです」（今泉氏）。

フジアルテが技術派遣事業をスタートしたのは約2年前。製造分野で培ったマネジメント基盤をもとに、技術者派遣領域へと事業の幅を広げてきた。エンジニア派遣の拡大は、国内の製造業が直面する人材不足への対応と、求職者に対して安定したキャリア形成の場を提供する両面の狙いを持つ。

一方で、採用市場では経験者争奪が激化しており、条件や仕事内容で他社との比較されやすいという難しさもある。この課題に対し、フジアルテは教育・オンボーディング体制の充実を図っている。定期面談や三者面談を通じて、派遣先企業と本人、そして自社が目指す方向性を明確にし、成長の軌道修正をサポートする仕組みだ。今泉氏は次のように強調する。

「お客様が求めることと、本人の目標を言語化して共有することで、やるべきことが明確になり、成果につながりやすくなります」。

また、組織文化としては、個々の派遣社員が単独で現場に入るケースも多いが、5人〜10人規模のチーム派遣体制を整える等、現場ごとの対応力を高めている。リーダーを立て、クライアントとのコミュニケーションを円滑にすることで、チームとしての一体感と成果の最大化を図っている。

現在活躍している社員の多くは、サービス業や営業職、製造職等異業種からの転職者だ。

「前職のノルマや長時間労働に疲弊し、安定した環境で働きたいという方が多いですね。コンプライアンスを徹底し、無理なく働ける環境を整えている点が当社の強みです」（今泉氏）。

さらに、全国に拠点を持つ強みを生かし、半導体、車体、電子部品といった業界に応じたマッチングも可能だ。北陸・東北・九州の半導体分野や、愛知県の自動車関連等、希望に応じた配属を実現している。社員同士のつながりを育むために、エリアごとでのイベントや交流の場も設けており、グローバル人材も多く活躍している。

今後は、エンジニア派遣領域のさらなる拡大とともに、現場を牽引できるリーダー層の育成にも注力していく方針だ。現場経験を積み、後輩育成やチーム運営に関わることで、より高い価値を発揮できる人材を輩出していく。今泉氏は次のように期待する。

「現状に満足せず、技術を磨きながらリーダーやマネージャーを目指してほしい。自ら発信し、周囲を動かせる人材に成長してもらえたらと思います」。