株式会社KECAK

株式会社KECAK（ケチャ）は、オンラインオリパのアプリ及びWebサイト『オリパワン』を運営しているスタートアップである。

“オリパ”とは、“オリジナルパッケージ”の略。トレーディングカード（トレカ）のショップなどが独自にトレカをランダムにパッケージにして販売する形態を指す。その中にレアカードが含まれていて、当たれば入手できるといった射幸心を刺激するゲーム性によって人気を集めている。
オンラインオリパは、アプリやWebサイトでアニメタイトル別など様々に設定されたパッケージの“ガチャ”を引く形で意中のカードを引き当てるドキドキワクワク感が楽しめる。
楽しむためには会員登録し、コインを購入する必要がある。コインを使ってサイト内の様々なガチャを引くことができる。引き当てたカードの実物が欲しければ配送してもらえ、気に入らなければコインと交換し、またガチャを引くことも可能だ。

『オリパワン』は現在、「ポケットモンスター」「ワンピース」「遊戯王」等の人気タイトルのトレカを扱っている。同様のオンラインオリパは数多く存在しているが、『オリパワン』は2024年7月のオープンという後発ながら、1年でユーザー数や売り上げが急成長している（自社調べ）。
その強みは、主に次の3点が挙げられる。

①ガチャの演出力
ガチャを引くと、動画や音楽による演出を楽しめる。これを楽しみにしているユーザーが多く、「当社はこの制作にコストをかけており、演出数でNo.1、質においてもNo.1であると自負している」と代表取締役の原徹也氏は話す。

②トレカの発送体制
『オリパワン』が提供しているトレカは、基本的に「PSA10」という最高品質のもの。PSA（Professional Sports Authenticator）とは、アメリカを本拠地として、トレカの真贋判定と状態評価を行い、10段階の格付けを付与する世界最大手の鑑定サービス会社。判定されたトレカは、保護ケースに封入し、ユニーク番号が付けられて世界で一つしかないものであることを証明している。同社では、数十名のパート社員による専任チームを置いて、仕入れたトレカを磨き、鑑定を受け、このトレカをいち早く届けるよう配送する作業に取り組んでいる。

③ユーザーとの密なコミュニケーション
『オリパワン』では、SNS「X」で『ワンニキ』というアカウントを設け、専任担当者を置いてユーザーとのコミュニケーションを図っている。ユーザーからの質問には全て回答するほか、ガチャなどに対する意見や要望を吸い上げて改善に繋げているのだ。
「人間味あるコミュニケーションを通じて、ユーザーとのコミュニティを形成しています。これにより常にサービス改善できている点が強みです」と原氏は強調する。

同社は、2024年4月に設立された。その経緯について、原氏は次のように説明する。
「以前、私は大手証券会社でグローバルなメンバーとデジタルテクノロジーの活用に関する企画部門に在籍していました。2024年の1月頃、小・中・高校時代を一緒に過ごした親友からオンラインオリパでの起業に誘われたのです。いろいろと調べてみて、オンラインでいつでもどこでも楽しめるエンターテインメントのビジネスに可能性を感じ、合意しました」

以前からグローバルなビジネスシーンで活躍したいと考えていたが、自分で何かサービスを創出することは難しいと感じ、大手証券会社の当該部門で働いていた原氏。実際にオンラインオリパをユーザーとして試し、オンラインオリパ市場に高まる“熱量”を知り、アニメIPというコンテンツは日本が世界で戦える数少ない領域であることを再認識した。
「この“エンタメ×デジタル”の領域は間違いなく伸びるとともに、グローバル展開も果たせると確信したのです。そこで友人とともにKECAKを創業することにしました」（原氏）。

“KECAK”（ケチャ）とは、インドネシアのバリ島に伝わる伝統的な舞踏。人々が火を囲んで情熱的に合唱しながら体を動かす。
「中高時代に学校でケチャを取り入れたイベントがあって、印象に残っていました。“エンタメ×デジタル”に対する高い熱量に相応しいと感じて、社名にしました」（原氏）。

同社が掲げるVISIONは、【日本発、次世代のデジタルエンタメの企業を創る】である。
その成長戦略について、原氏は次のように話す。
「まずは、オンラインオリパで日本一の存在を目指します。先述の強みを磨き上げてNo.1を勝ち取ります。そうなれば、トレカ関連事業などの横展開もやりやすくなるでしょう。その先に、オンラインオリパのグローバル展開を狙います。そのためには、各国の文化とマッチするエンタメの在り方を追求する必要があると考えています」

ガチャは、日本独特のエンタメ文化の産物。各国にはそれぞれのエンタメ文化があり、日本のモノをそのまま持ち込んでも成功するとは限らないからだ。これをクリアして、オンラインオリパのグローバルリーダーを目指し、さらに新たな“エンタメ×デジタル”の可能性にチャレンジしていく構えだ。

2025年9月現在の同社の体制は、トレカの調達など事業の企画運営を手掛けるビジネス部門が約10名、サイトやアプリの開発運用を手掛けるエンジニア部門が約10名。正社員及びフルコミットの業務委託で構成されている。そのほか、トレカの検品・改良や配送を担うアルバイト・パート社員が20～30名在籍している。平均年齢は27～28歳、原氏は33歳という若い集団だ。

その組織風土は、次のVALUEを基軸として運営されている。
①Always User First：まずは自分が心の底から熱狂しよう。その熱量が、ユーザーに届く価値を生む。ユーザーの立場に立ち、本当に求められているものを考え抜く。そして、期待を常に超え続ける。
②Build Together：ひとりじゃできないことでも、チームならできる。多様な価値観を尊重し合い、同じゴールを本気で目指す。
③Facts First：感情や思い込みでなく、事実を基に語ろう。議論のスタートも、意思決定のゴールも、すべてはファクトから。

「①の熱量は、採用の段階で入社条件にしています。未経験者でも熱量があればOKです。そして、ユーザーの感想や意見は常に可視化し全体に共有できる仕組みをつくり、ユーザーに向き合える環境をつくっています。
②は、メンバーのバックボーンや意見を共有し、密にコミュニケーションできる環境づくりを心がけています。
③においては、売上など経営状況をBIで可視化し、主要なKPIは毎日チャットツールで共有しています」と原氏は具体策を説明する。そのほか、人事考課の定性指標にも3項目を取り入れて浸透・促進を図っている。

会社運営において、社内にモメンタムを生み出すことが最重要と捉え、社員の頑張りがどれだけ結果に結びついているかを可視化・共有することに力を入れているのだ。

働き方においてユニークなのは、AIの徹底活用だ。特にエンジニア部門では各自が自由にAIを利用できるだけでなく、利用状況を可視化して利用頻度の少ないメンバーには指導が入るという徹底ぶりだ。
「自動化できるところはできるだけ自動化し、その時間を有効活用してほしいからです。なお、投資対効果は予想以上に上がっています」（原氏）。

ちなみに、ビジネス部門のメンバーはほぼ全員が、エンジニア部門は半数ほどが自主的に毎日オフィスに出勤している。ユーザーの意見をサービスに反映する上で、リアルコミュニケーションのほうが圧倒的にスピーディーに行えるからだ。

社内の親睦を深めるイベントとしては、ケチャが火を囲むことにあやかり、BBQパーティーを年2～3回行って盛り上がっている。

そんな同社が求める人材像としては、“エンタメ×デジタル”に本気で取り組める高い熱量を持っていることと、当事者意識の持ち主。
「未経験者でも構いません。ぜひ、高い熱量をぶつけに来てください」と原氏は呼びかける。