株式会社シンメトリクス

システムエンジニアリング（SES）事業で大手企業のシステム開発にあたり、また自社ソリューションの開発も手掛ける株式会社シンメトリクス。同社では代表取締役の葛明氏を筆頭に、「メンバー一人ひとりがいきいきと活躍できるチーム」を目指して組織改革を進めている。

葛氏は1992年に中国から来日し、筑波大学の学士課程や富山大学の修士課程へ。その後は国内大手企業の関連会社でエンジニアとしてキャリアを積む。そして2007年、エンジニア仲間と共に同社を立ち上げた。

葛氏が長きにわたって目指してきたのは、仕事を通じた「社会貢献」だ。その「社会貢献」におけるベクトルは、社外だけでなく“社内”にも強く向けられている。

現在に至るまで同社では、国内の大手企業や上場企業とのプロジェクトが多く、継続取引や紹介から始まるプロジェクトがほとんどだ。ERPなどの業務システムやアプリケーションの開発を得意としつつ、分野を広げ、開発言語も多様に対応。また元々得意としていた金融以外にも、クライアントとする業界を拡大。産業・通信・データサイエンス等と多岐にわたって手掛ける。

このようなフィールドの拡大は、単純に「時代や顧客のニーズに応じ、ビジネスチャンスを獲得するため」だけではない。その真の理由を、ソフトウェア開発本部・営業グループの渡辺文也氏に尋ねた。

「当社がビジネスチャンスの獲得よりも重視したのは、“エンジニアの成長チャンスを増やす事”でした。営業部隊は、“エンジニアがどれだけ学び、挑戦できるプロジェクトか”という視点も持って案件を開拓しています」（渡辺氏）。

近年は特にローコード開発のほか、AIやビッグデータを駆使した開発等、技術革新の目まぐるしいIT業界をリードするようなプロジェクトも、積極的に請け負っている。


「SES業界は本来、“人”で勝負する世界です。技術力はもちろん、プロジェクトやチームを動かすための人間力も欠かせません。そのような高い志と優秀さを持つ人財が、“長く働きたい”と思える組織をつくりたいと考えました」（葛氏）。

近年は毎年のように就業規則を見直すなど、制度の再構築も実施。エンジニアはもちろん、営業やコーポレート部門も含め、一人ひとりが納得して活躍できる組織改革を進めている。

ここからは、同社の強みについて深掘りしたい。


先述のとおり同社では、エンジニアの成長の機会を設け、IT市場の価値を高めている。まさにこの点が、クライアントから厚く支持されるゆえんだ。

まず営業面では、各プロジェクトに必要なリソースに沿った人財や体制をスピーディーに提案できるため、既存クライアントから新たな相談が寄せられる事も多い。そしてプロジェクト始動後も、同社への評価は上昇。そこではエンジニアの「技術力と人間力」が大いに発揮されている。


その「技術力と人間力」を象徴するプロジェクトとして、渡辺氏はこのようなエピソードを語った。

「大手キャリア系企業をエンドユーザーに持つお客様との出来事は、強く印象に残っています。まだ取引を始めて間もない頃、とあるエンジニアAがプロジェクトに参画しました。初めはAを一人だけアサインしたんですが、Aの配下へ徐々にメンバーが入っていき、最終的に当社から15名が参画する事になったんです」

無事にそのプロジェクトが成功した後、同社とクライアントの取引は一気に拡大。評価されたポイントはどこなのだろうか。

「やはり最初にアサインしたAの存在は大きいですね。まずAは技術の習得が早く、本人も楽しんでキャッチアップするエンジニアです。またアサイン先では二人三脚の姿勢を怠りません。ただ技術を提供するだけでなく、お客様と共にプロジェクトの課題に立ち向かい、共に試行錯誤し、一緒にゴールまで到達する。こういった行いが報われ、お客様先の部長クラスからも厚い信頼を集めました」（渡辺氏）。

A氏は現在、先方での教育も担当。技術にとどまらず、“人”として必要とされ、クライアント先の社員さながらの活躍を見せている。


こうして大手企業や上場企業から支持を受ける同社だが、会社の発展やエンジニアの成長を見据え、2015年頃からは自社ソリューションの開発も手掛ける。

一つは、勤怠管理システム『勤怠管理ARMS』だ。元々は社内で利用するために開発されたものだが、クライアントからの要望に応えて事業化。マニュアルを読まずとも直感的に操作できるUIが高い評価を受けている。

もう一つは、スキー場予約SaaSの『My Ski Bar』だ。チケットやレンタル用品など、スキー場にまつわる予約申込システムを開発中。宿泊施設や美容室といった予約サイトのスキー版として、全国のスキー場が集まるプラットフォームにしていく。事業者にとっては「HPがなくても予約システムを持てる場所」、ユーザーからは「条件からスキー場を選べる場所」として、重宝されるサービスになりそうだ。

変化の激しいIT業界で、活躍し続ける人財へ――。そのようなキャリア支援を目指す葛氏は、AIを例にとって今後の組織作りを語った。

「AIの進歩はすさまじく、面白さと共に危機感を覚えています。しかし、我々は“AIを駆使しつつ、AIにできない事で人が活躍する”という土壌を整えていきます」

例えば、ローコードを取り入れたパッケージ開発。コストや期間を削減しつつ、各クライアントの要望に沿ったカスタマイズ制の高いプロジェクトを実現していく。ゆくゆくはAIエージェント開発にも対応したいという。そうして、IT環境を導入・整備するための“本質的”な提案やプロジェクト進行ができる人財を増やしていく。

AIと共存するIT企業として、より“人”が評価される組織になり、メンバーの活躍の幅も広がりそうだ。

「現在は教育制度もブラッシュアップしています。スキルやキャリアの到達度に応じた“階層別研修”のほか、社内で教育委員会も立ち上げ、メンバー同士が研修や勉強会でも高め合えるような風土を強化していきます」（葛氏）。


このような同社の積極的なキャリア支援の下、自分らしいキャリア形成を叶えるメンバーが多い。

例えばエンジニアのB氏は、同社の資格取得支援制度を生かし、多数のスキルを磨いた。加えてホスピタリティ溢れる姿勢から、クライアントでも高い評価を獲得。入社3年目の時点で、数々のプロジェクトへのアサインだけでなく、クライアント先でのOJT担当としても引っ張りだこだ。

「こうした努力や実績の見えるメンバーには、毎年『優秀社員賞』や『努力賞』を贈り、社内の皆に見えるような形でも評価しています」と葛氏。

また営業を務めるC氏は、元々エンジニアとして同社へジョイン。しかし自身のキャリア志向を見つめ直し、営業としてキャリアチェンジを果たした。

C氏はこう語る。

「“経験を生かすだけでなく新しい事にも挑戦し、点と点を繋いで、自分の予想以上のキャリアを築きたい”――私には、そのような思いがありました。また実は、経営にも興味を持っていたんです。代表がその思いを受け入れてくれたからこそ、今の自分のキャリアがあるんだと思います」

葛氏をはじめとした経営層の組織づくりにかける思いは、メンバーにも届いているようだ。


最後に、渡辺氏が語った「組織づくりの在り方」にも触れたい。

「もちろん、組織を続けるのは簡単ではありません。人それぞれ、目指すキャリアや求める環境は異なりますから、全ての制度や取り組みに全員が満足するという事は難しいでしょう。しかし、その中でも“最大公約数”のマッチングを目指したいんです。社内制度の基礎は整ったと自負していますが、今後も大手企業に負けないくらいの環境をつくろうと意気込んでいます」（渡辺氏）。

メンバー一人ひとりの「頑張れる理由」を模索する、同社。あなたがキャリアを築く上での「頑張れる理由」も、この場所で見つかるかもしれない。