法律家から経営者へ転身され、さらにIT会社を設立するに至った経緯をお話しください。
私は2011年12月に弁護士登録をして、名古屋市内の法律事務所に入所し、勤務弁護士として働き始めました。入所後は私の仕事が評価され、どんどん重要な案件も任せてもらえるようになりました。同期と比べると体感的に4倍ほどの仕事量をこなしていたと思います。ただ、そんな生活が続くわけもなく、体調を崩して4年後に退職することになりました。 退職後の数カ月間は仕事をせずに、心身のケアに努めながら人生を見つめ直しました。早くから結婚をして子供もいましたので、ひとまずは生計を立て直すために法律事務所を立ち上げることからスタートしました。ただし、勤務弁護士時代の経験から体調を崩すような働き方はしたくないと思うと同時に、万が一の時のために他の弁護士も雇い、いざとなれば引き継げる状況をつくりました。 その一方で、安定性を確保するために、弁護士とは全く違う事業を確保したいと考えていた時に出会ったのが、K2の共同創業者です。彼は私がこれまで出会った人物の中で最も信頼できるビジネスパートナーです。彼は元々不動産業を営んでいましたが、単一業種だけでは景気の波にも左右されやすいですし、従業員を雇用し続けるという責任も果たせません。地域、業種、様々な観点からリスクヘッジをするために、不動産業、建築業と複合的に事業を立ち上げました。システム開発を担うTerminal systemを設立したのもその取り組みの一環です。
エンジニアファーストの理念の下、“「個」の成長と安定就業を両立する理想の働き方を実現する”という事業ビジョンを掲げておられます。その思いをお話しください。
それは会社の利益のためです。私は、会社の存在意義は利益を追求すること以外にあり得ないと考えています。利益を上げていかなければ会社は存続できず、雇用も確保できません。 会社の利益を追求する上で、法人はただの箱です。その中で働いてくれる人がいなければ、利益は生み出せません。私はそこで働きたいと思ってくれる人がいなければ、会社の価値はないと思っています。そう考えた時に、会社が利益を出す手段として、優秀な人材がそこで働きたいと思える箱、組織、ルールを作る必要があるのです。 極端に言えば、従業員をないがしろにする組織と、従業員を優先的に考えてくれる組織があった時、人が残りやすく、採用もしやすいのは、従業員を優先してくれる組織です。そこで働いている従業員に対して雇用を確保し、給料を払い続けられる環境を用意し、他社よりも良い給料を払うことで、良い会社で働いていると感じてもらうことが、継続的に利益を生み出せる要因となります。 それが、エンジニアファーストの考えに立ち、エンジニアが自身の特性を生かして幸せになれる環境づくりに注力する理由です。
エンジニアを案件にアサインする際の基本的な考え方をお話しください。
私は社員には、「自分がやりたいこと」よりも「できること」をやってもらった方が良いと思っています。その人の適正やできることを、我々が的確に見出して適正配置をすることが、会社にとっても、社員にとっても、最も良いアサインの仕方だと思っています。 逆に言えば、顧客が「Javaの経験者が欲しい」とおっしゃったとしても、必ずしもJavaの経験者が適正配置だとは限りません。顧客の話を聞いて本質的な課題を掘り起こした結果、Javaではない他のスキルを持ったエンジニアが適正であると判断すれば、そのエンジニアを提案します。 その際には当然、私達がそう考えた根拠を包み隠さず顧客に説明します。Javaの経験がない技術者を、経験があると偽って提案することはしません。「Javaの経験はなくても、このスキルが生かせると思う」と正直に話せば、エンジニア側にも負担はありません。顧客、従業員、双方にとっての適正配置ができることが私達の価値でもあると考えています。
Terminal system社の長期的なビジョンをお話しください。
当社が現在SES事業に注力しているのは、現状で最も利益を追求しやすい事業だからです。ただし、元々はSES事業だけではなく、受託開発事業や自社プロダクト等、複数の柱を立てていこうという構想を立てていました。そのうちどの柱が大きくなるかは、プロダクトの内容やタイミング次第ですが、いずれにしても複数の柱があればリスクヘッジになります。 私が普段、社員達と話していることは「永続できる会社をつくろう」ということです。従業員が当社で働いてくれるのは、当社で働いていることにプライドや誇りが持てたり、労働条件が良かったり、当社で働くことで安心できたり、いろいろな要素があります。少なくとも生活やメンタルが不安定になるような状況にはならないよう気を付けたいです。 その上で今後は、規模の拡大を追求したいと考えています。何事も一番になった方が安定性は高くなりますので、行けるところまで行きたいですね。
求める人物像をお話しください。
素直というのは、ただ言うことを聞くことではありません。物事を自分なりに考えて、自分なりに行動に落とし込めることが大切です。それは反対意見を持ってはいけないということではありませんが、否定することが目的になってしまっていてはいけません。素直に受け入れた上で反対意見があるならば、申し出てくれれば良いと思います。 一方、誠実さは素直さとも似ていますが、私の中では意味が違います。よく社内でも話をしていますが、基本的に従業員は自分の利益を追求してもらって良いと思っています。それは正当な権利です。ただできれば自分の利益と同じぐらい、会社の利益も追求してほしいと思っています。 経営者の仕事は、従業員の利益追求と会社の利益追求が同じ方向を向くように、組織をつくることです。会社の利益が上がれば従業員としての給料や利益が上がる、労働条件が良くなるという組織構造をつくっていきたいと考えています。 私は、自分だけの利益をどんな状況でも守ろうとする人は、誠実ではないと思っています。今の段階でご入社いただく方は、自分が頑張って生きていくために働こうと思ってくれる人がいいですね。ただ、自分だけが良ければ良いという感覚では、会社に残ることはできず、本人にとっても良い結果にはなりません。組織構造を俯瞰して、自分の利益を追求するために会社の利益を上げる。普段からそのような行動が取れる人と一緒に仕事をしたいです。