千代田合成株式会社

プラスチック製品の精密成形加工を手掛けている、千代田合成株式会社。同社では、情報システムの保守運用やDXを手掛ける社内SEを求めている。

現在、同社が生産しているプラスチック製品の95%は自動車部品が占めている。そのほかは、シャワートイレの部品等。主要取引先は、トヨタ自動車をはじめとする全完成車メーカーのTier1部品メーカーで、同社はTier2に該当する。したがって、同社の製品もほぼ全ての完成車メーカーに用いられている。

経営環境の変化等で業績を落とす同業他社が少なくない中、同社の売上高は2020年度から毎年5%程度の成長を続けている。2024年度は、コロナ禍で落ち込む前の2019年度のピークを越えて史上最高の決算となった。その強みについて、代表取締役社長の伊勢村雄吾氏は次のように言う。
「同様の製品の調達先は多数あると思いますが、当社が選ばれ続けているのは、長期安定的に高品質の製品を供給できる体制を磨き続けているからだと自負しています」

同社では、プラスチックの射出成形機等の設備を擁して生産しているが、単に製品をつくるだけでなく、仕様の確認・提案や金型の設計・製作、成形加工、完成品への塗装・印刷までを一貫して社内で行っている。そして、一連のプロセスにおける品質管理を強みとしているのだ。
特筆すべきは、金型の設計・製作および保全までを内製化していることだ。
「当社では、100分の5㎜という精度で品質管理していますが、その精度を維持させるのは金型の保全がカギを握ります。そこで、自社が保全しやすい金型を自ら設計・製作することでノウハウを社内に蓄積し、高精度を維持する体制を築いているのです」（伊勢村氏）。

一方、デジタル化にも力を入れている。製品づくりには温度や圧力、時間のかけ方等、様々な成形条件が作用するが、従来は“職人の勘と経験”が力を発揮していた。これを同社はデータ化し、誰でも一定の成形条件で製品づくりが行える体制づくりを進めている。既にIoTを活用し、設備の故障等の予兆管理や不良品を防ぐ監視の適正化等を始めている。

「いろいろな設備から様々なデータを積極的に取得してはいますが、まだまだ使いこなすことができていません。これらのデータを活用して、高精度安定加工のさらなる追求やロボティクスによる省人化に取り組んでいきたいと思っており、これを推進してくださる社内SEを募集しています」（伊勢村氏）。

同社は、1947（昭和22）年に千代田合成工業所として創業された。創業者の伊勢村富雄氏は、伊勢村氏の曾祖父に当たる。金属メーカーの技術者として働いていた富雄氏は、終戦直後の混乱期に知人からプラスチックの将来性を聞かされたことが直接の契機となり、そのメーカーとなることを決心し独立する。そして、大手プラスチックメーカーの下請けとして圧縮成形を始め、当初は食器等の生産を手掛けた。その後、ラジオ等の家電製品に広げていった。

なお、現在の主要取引先で、完成車メーカーのTier1部品メーカーである株式会社東海理化とは、同社が1948年に設立された時から取引を始めている。そして、同社も自動車部品に領域をシフトし、戦後の高度成長とともに堅実に成長を続けてきた。2012年には、タイに現地法人CHIYODA GOSEI（THAILAND）を設立している。

今後も引き続き自動車領域に取り組んでいくことを考えていますが、プラスチック製品の成形加工においては自動車部品が最も高いコストパフォーマンスを要求される領域であり、この領域でトップレベルを維持していれば自ずとほかの領域にも対応可能と見ているからです。もちろん、新領域への取り組みはポジティブに考えています。素材としてのプラスチックは軽くて強度も備え、金属に代わるものとして需要は伸びる一方と言われていることも追い風です」と伊勢村氏は今後の方針を話す。

その伊勢村氏は、2025年6月2日に4代目の社長に就任したばかり。これを機に、次のステートメントを掲げている。

【プラスチックに、プラスの価値を。～We are TEAM千代田合成！】

この言葉に込めた思いについて、伊勢村氏は次のように説明する。
「長年にわたるプラスチック成形における経験と蓄積、一気通貫した体制の整備によって、製品の強度・精度の確保、コスト面の充実はもとより、肌触りや質感といった感性の領域までも確かな製品開発を実現しています。特に特殊工程管理や安定納入等の生産管理能力には定評を頂いていますが、これを実現させているのは当社の従業員一人ひとり。工場の清掃や製品の運搬、事務等の業務の一つひとつが、当社の付加価値を決めているのだと思っています。この“チーム力”こそが、当社の最大の強みであるということです」

青い楕円の同社ロゴマークも、そんな“輪”“和”を表している。

2025年5月現在、同社の従業員数は112名（うち正社員は72名）。その全体は、次の行動基準を基にマネジメントされている。

・常に夢と若さを保つ
・理論とアイデアと時間を尊重する
・仕事を愛し職場を明るくする
・調和のとれた仕事の流れを作る
・不断の研究と進歩に努める

この5項目は、創業者が会社設立時に“経営理念”として掲げたものであるが、伊勢村氏は“行動基準”と捉え直して大切に承継していく考えだ。
「この精神を大切にしつつも、実際のアクションは各自の解釈があってもいいと思います。例えば私は新社長として困難なことでも笑顔で立ち向かっていきたいと考えていますが、それは『仕事を愛し職場を明るくする』ことに繋がるのではないでしょうか」と伊勢村氏は話す。

そして、この5項目を推進させるためにも、“言いたいことが言える”組織風土づくりに力を入れている。
「自動車業界には“Bad News First”という言葉がありますが、悪いことこそ真っ先に言える風通しの良い風土にしていきます。そのために、例えば朝会では問題事項から聞き、それを笑顔で受け止めることを心掛けています」（伊勢村氏）。
また、77年間にわたって築き上げてきたノウハウは、ルールやマニュアルとして今日まで承継されてきているが、製造業としてそれらを重視しつつも時代に合わせて常に書き換えるということだ。

人材育成の観点では、若手にチャンスを提供し実践経験を積ませるカルチャーがある。
「タイの現法設立の際は、入社3年目の社員を送り込んで手続きを進めさせています。また、生産設備は若手にも展示会等に行かせて探してもらうといった機会づくりをしています」（伊勢村氏）。
社内の親睦を深める機会づくりとしては、毎年行っている社員旅行がある。これまで、国内のテーマパーク等に家族同伴で出かけている。

そんな同社が求める人材像は、新しいことへのチャレンジを、失敗を恐れず前向きに楽しむことができる人。
「先代社長の妻、つまり私の母親は、以前大手ICTベンダーのSEでした。そこで、当社には1988年頃からいち早くコンピュータを導入し、情報化を進めてきた歴史があります。その精神を受け継いで、今後もDXに取り組んでいきたいと思っています。ぜひ、力を貸してください！」と伊勢村氏は呼び掛ける。