株式会社ミップ

株式会社ミップは、大阪市を拠点に、WEBソリューション事業を展開する会社だ。設立は2000年12月。現在はシステムエンジニア、デザイナー、コーダー、ディレクター等、多様なスキルを持ったスタッフ約30名で事業を展開している。

同社が向き合う対象は、WEBを用いて解決できる企業の課題全般だ。領域は主に二つ。一つはWEBサイト制作を中心とするWEBマーケティング支援、もう一つはWEBを活用した業務系システムの開発だ。それぞれを単独で請け負うだけではなく、顧客の課題に応じ、全ての課題を串刺しし、ワンストップで対応できることが同社の強みだ。

エンジニアとして創業時から同社に勤務し、2022年から現職に就任した代表取締役・成瀬厚司氏は語る。

「例えば、物流会社のDX化。棚単位で倉庫スペースを貸し出すサービスを提供していたお客様から、WEBサイト制作のご依頼を頂いた際には、新規サービスを立ち上げるに当たり、棚単位ではなく、箱単位で管理するためのシステムや、入出庫依頼をWEB上で受け付けるシステム等をご相談いただき、受注しました。その結果、130%の事業成長に貢献しました。このようにWEBサイトの制作をきっかけに、DXや新規事業の立ち上げのご相談に繋がることは少なくありません」（成瀬氏）。

設立以来、目の前のお客様と向き合い、業務理解を深めながら細かい提案活動を通じて貢献する方針の下、人との繋がりによって取引先を横に広げ、持続的な成長を遂げてきた。特に結び付きが強いのは製薬会社や医療機器メーカーといったヘルスケア業界だ。設立間もない頃にある製薬会社からWEBサイト制作を受託したことをきっかけに、お客様の顧客のエンゲージメントUPを目的とした会員サイトや、マーケティングやプロモーションのためにCRMやSFAと連動させたWEBサイト等、医師や看護師、薬剤師等の医療関係者に向けたWEBシステムの開発で実績を築いてきた。現在、同社の売上の約7割が、製薬会社や医療機器メーカーとの取引によるものだ。

「製薬会社や医療機器メーカーがやるべきことは二つです。一つはマーケティング活動。もう一つが医薬や医療機器の適正な使い方を促す適正医療情報の提供です。また、医療関係者といっても幅広く、それぞれ求められることが異なります。製薬協が定めるプロモーションコードに照らし合わせつつ、目的やターゲットに合わせ、どのようにWEBサイトで表現するかをお客様と一緒に考えながら、プロジェクトを進めています」（成瀬氏）。

同社は、1997年10月に神戸市で設立した会社だ。阪神・淡路大震災の復興支援事業をきっかけにWeb制作事業で力を付け、その後、大阪に移転し法人化した。エンジニアが中心となり設立された会社だったため、当時からデータベースと連携したWEB制作を得意としており、それが現在の強みを形成する要因となってきた。この間、製薬業界の再編や新型コロナウイルス感染症拡大等もあったが、いずれも同社にとってはプラスに作用し、安定した成長を遂げる要因となってきた。

その同社が現在、大きな転換点を迎えている。2024年4月、株式会社フィットワークスとグループ関係を締結。それを機に、事業体制や事業戦略を見直し、さらなる躍進を目指しているところだ。

今後に向けてさらに拡大を進めているのがデジタルマーケティングの領域である。クライアントワークのプロジェクトで、プランニングやディレクションを担ってきた人材が集まり、蓄えてきたノウハウを顧客のデジタルマーケティング支援に生かす取り組みを始めている。

「元々プロジェクト単位では、SEOに取り組む等、お客様の要望や課題に応じて、マーケティングに関連した支援は行ってきました。しかし会社全体の共通認識として、デジタルマーケティングに取り組んできたわけではありません。そこで改めて“デジタルマーケティングのプロフェッショナルになる”というスローガンを言語化して意識の浸透を図るとともに、研修を組んでスタッフの育成にも取り組んでいます」（成瀬氏）。

WEB制作やシステム開発を行う企業が成長し続けるには、顧客接点をいかに見つけるかが重要なカギを握る。従来通り担当者同士の繋がりをベースに取引を深め、顧客を広げるだけではなく、今後さらなる飛躍を遂げるため、よりアグレッシブに市場を開拓する手段として、デジタルマーケティングに注力する考えだ。

「当社は“顧客と共に進化する”という先代社長の理念の下で成長してきた会社です。今後も、その視点は大事にしたいと考えています。一方では、特定業界だけで顧客を広げ続けるには限界があります。製薬会社や医療機器メーカー以外の業界、業種にまで範囲を広げて、新しいお客様との出会いを求めていきたいと考えています」（成瀬氏）。

同社の社内改革は始まったばかり。その基盤づくりの一環として、マーケティングや営業を担当するカスタマーサクセス、エンジニア等を広く採用する計画だ。

設立から25年、同社はオープンでフラットな企業文化を築いてきた。フレックスタイムや時短、年間平均休日は122日等のライフワークバランスが取りやすい制度に加え、目標管理制度、オープンな人事給与制度等、社員の成長を後押しする制度も整っている。男性と女性の比率は半々で、役職者の数も同等。性別、年齢に関係なく機会が与えられ、等しく評価される環境だ。育児休業後の復職率100%、社内でランチを取る社員7割といったデータや、全社飲み会や親睦会等のイベントが活発に開催されていることからも社内の雰囲気の良さは伝わってくる。

ただ、今後、事業をさらに成長させるためには、仕事の進め方を含め、組織自体を進化させる必要がある。そのため同社は、これまでに培った良い雰囲気や文化は継承しながらも、次世代を見据えた組織づくりに着手し始めたところだ。

「現在、従業員と一緒に企業理念や行動指針等の構築を進めているところです。これまではWEB制作会社として、一人ひとりの技術を高めることに重きを置いてきましたが、今後はそれに加えてお客様を理解する気持ちや力も大切にしていこうと話しています。単なるWEB制作会社から、次のステージに上がっていくために、それぞれの社員が必要なスキルを身に付けられる会社にしたいと考えています」（成瀬氏）。

現在求めているのは、顧客のビジネス成果に執着できる人材だ。ディレクションやプランニング、カスタマーサクセス等、顧客との接点を持つ職種だけではなく、エンジニア、デザイナー等の技術職等、どのポジションにいても顧客を常に意識できる人材を増やしていく方針だ。

「このタイミングで採用するのは、会社を成長させるための原動力になっていただく方々です。一緒にチャレンジするマインドを持って、仕事に臨んでいただける方をお待ちしています」（成瀬氏）。

これまでは社内に蓄積されたスキルやノウハウのみで勝負してきた同社だが、今後は顧客のニーズや課題に応じて、社外のリソースも積極的に活用していく意向だ。外部パートナーや商材を開拓する力やコーディネート力、業界内外での人脈等、制作や開発に止まらない、多種多彩な武器を持った人材に活躍の場は広がる。四半世紀にわたる事業実績に加え、上場企業のグループ会社であることを背景とした経営基盤の安定性も魅力だ。